占いの館 キアラ視点
『占いの館』の看板を今日もフランが文句を言いながら出す。
いつになったら世界の変化を受け入れるのかしら。
でもまぁ、獣人族に出会って何かが変わったみたいだからこれからに期待かな?
「バートン。今日の予約は、何人?」
無口なバートンは、意外にもこの仕事が気に入っているらしい。
バートンの基準は全て安全かどうかだからまぁ分かるけど。
「今日も3人で、満席となります。」
3人が少ないと感じて街の人から異論の出た事もあったわ。だけど「未る目」の使用には限界があるのだから仕方ない。
いつか文句を言った客にフランがどギレてから噂になり文句を言う客は皆無になった。
「では、最初の方をお通しして。」
最初は、今回の抜擢で農村部のリーダーとなったオーランドの部下、確かリアムだったかしら。
「おはようございます。巫女姫様。」
「ふふふ。巫女姫様はダメよ。キアラで良いのよ。」
あれから私は、巫女姫と呼ばれる苦痛から解放されたのだ。キアラ。初めて本当の名を呼ばれた時の嬉しさは忘れられない。
「すみませんキアラ様。実は。」
すでに見えている悩みを、私の口から言っても構わないのだけど喋る事は意外に重要なの。
沈黙が流れる。
「マチエレ村の者なのです。
そんな自分がオーランドと共に責任ある立場を与えられて良いものか。
正直、この街に住める幸運だけでも空恐ろしい程の心持ちなのです。
ですが、ラル殿の申される事は絶対。
どうしたら。」
また、黙ったわ。
でもここまで来て、これだけ喋るのは彼には中々辛い作業のはず。それだけでも半分乗り越えてるんだけど。
「リアムさん。
貴方の手には、牛達の喜びのオーラが見えます。
家畜好きですよね。
好きである。それは既に才能なのです。
責任あるとは、覚悟がある事。もう貴方の胸にその星が見えます。
覚悟の星は充分にある。ですからラル殿のお見立ては正しいと私は思います。」
彼の胸の星はかなりの光を放つもの。
余程の覚悟を決めラル殿に仕えているのだろう。
優しい彼には元来戦いは向かない。オーランドの幼馴染である為に国境警備隊となり彼と共にマチエレ村まで流されたみたいね。
でも、あの星が彼を導くわ。
吹っ切れた顔の彼から度重なるお礼を言われ次の人の番になる。
「ザィラードさん。さあ遠慮せず。」
あら、後ろでフランが睨んでる。
仕方ないけど、だから恐縮してるのね。
「さあ、見て欲しいのは何ですか?」
実は彼は見えにくい特異な人。
過去がブレて見えずらく、先も中々見えない。
これでも元巫女姫よ。私情は挟まない。
「こんな場所にノコノコ来るのんて軽蔑されるべきですよね。ですが何回考えても納得行かなくて。」
かなりの力を注いで、やっと見てたもの。
「不満。パトロール隊を任された事ですね。
エドさんがついていても不満ですか?」
たぶん。
「不満を言える人間ではないのです。でも少しは役に立ちたいと。秘宝特別部隊に入れば少し役に立てるかと希望したのですが落ちました。」
「ザィラードさん。
未た物をお話ししましょう。
ラル殿のこの度の旅路はかなりの長きものになります。
彼はその事を感じていたのかもしれない。
それで彼は大切なこの街に沢山の仕掛けをしたのです。
ラル殿の不在の時、魔人が襲います。
だからこそ、貴方は腕を磨かないと。
ベルン殿が残られたのも同じ意味だと思います。
これは、少し余計なことかもしれないけど過去を振り返るのは終わりにするべきでは?
私も同じです。
貴方も彼の備えの一つだともう一度考えられてはいかがでしょう。」
私の口から未来を語るのは久しぶり。
でも、ザィラードと私は、どこか似てるから。
つい…
「次の方どうぞ。」
予想外の人が来たわね。さて。
「初めまして。私はララの家族でマーナと言います。」
少しずつ女性らしさを感じさせるようになったマーナは、最近ではハロルドと一緒に見かける事が少なくなった。
ララの下で備蓄関係を学んでいると聞いたけど。
ジッと見つめ、驚きながらも彼女の言い出せない気持ちを察する。
「ねぇ。恋心は年とは関係ないのよ。
ハロルドが好きでも構わない。
彼は気付いているわ。だからこそ避けてるの。
貴方を嫌いなわけではないから。」
真っ赤な顔は、俯いてしまった。
未る事をやめ、普通に話す。
「ねえ、私もまだ恋をした事がないから言えないけどね。恋だけは占いでもこの目でも無理なのよ。だから自分を信じて頑張ってとしか言えないのよ。恋心は素敵なのね。
マーナさん、今綺麗だもの。」
その後の会話は占いではなく、友人のものに変化をしてしまった。
私も少し後悔して、だいぶん嬉しい。
神殿では、目隠しをして「未る目」を使ってたのね。
「目で見る事の本当の意味を知ってね。」
初めて話した時にラルさんが言った言葉の意味を今噛み締めながら今日の看板を仕舞いましょう。




