目覚め。
「この馬鹿者が!」
怒鳴り声でもう一度気を失いそうだよ。
目覚めの一発と言うには濃過ぎる怒声は、ルルドの御大のものだ。
た、助かったんだ。
しみじみする俺の横でまだ怒ってる。
御大。。心配かけたな。
あれは、正直恐ろしかったし今も身体中が超痛い。
これなら大嫌いな歯医者の方がマシ。
なんとかギクシャクと起き上がると、ジェルドが手を貸してくれた。
「よ、良かった。ラルさん。」
俺を助け起こしながら真面目なジェルドの目に浮かぶ涙に申し訳無さが改めて込み上げる。
「心配かけたね。ジェルドの薬のお陰かな?」
と俺は声をかけた。
「いいえ。プリモナさんの治癒魔法のお陰です。」と、ジェルドが声を震わせる。
。。治療魔法?
「馬鹿野郎!お前の怪我は本当にヤバいとこだったんだよ。
もし、プリモナが治療魔法を開発してなかったら。。
いいか、アイツに会ったら必ず謝れよ。
それこそ、命懸けで助けてくれたんだぞ!」
そうか。。凄いなプリモナは。
俺の命の恩人だ。あれ?で、そのプリモナは?
顔色の悪いハロルドが答えた。
「エドさんのところです。
皆さんが秘密にと思われてますが、私の考えは違います。正直に話します。
いいですか?
貴方の迂闊な転移魔法は彼の身体を危うく真っ二つにするところでした。
エドさんの類稀な反射神経で腕や足の怪我で済みました。ですが。。」
俺の転移魔法が。。
やっぱりあの時の危惧は本物だったんだ。
やるべきじゃなかった。今更だけど。
「言ってくれ!エドは?」と俺。
「魔人の放つ魔力はかなりの毒素を含んでいます。
ですから、身体に負担が大きく今だに意識は戻りません。
プリモナ様は、一心に治療を継続していますがなかなか。。」ハロルドが苦々しく答えたところをみると、プリモナの負担はかなりのものなんたな。
あの瞬間が頭に次々と蘇る。
薬を投げたエドの姿に改めて思い知る。
必死なそして腹を括った顔のエドに気づいたはずだった。
だけど、俺は本当は自分自身が精一杯で。
だけどエドは、あの場所にいる事の意味を充分に理解して俺の危機を察したからこそ。
また、間違えたのか。
ただ、自分こそと意気込んでこの様とは。
。。
毒?
そうだ!毒なら。。
「おい、寝てろよ。お前もさっきまでヤバかったんだぞ!」
ザィラードの慌てた声を無視して起き上がと、空間魔法から万能薬の改良型をだして吞み下す。
ま、実験は自分でと。
おー、痛みが消える。よし、何とか歩けそうだな。
「何を飲まれたのです?いつもの万能薬と違うような?」ジェルドの声もこの際無視。
後でな。
黙って手助けをしてくれるララに肩を借りてエドの所へ向かう。
トントン。
扉を開けて入るとプリモナの叫び声が。
「キャー!!ラルさんってお化けなの?
もう起きてくるなんて!!」
「いや、大丈夫だから。それよりもプリモナの顔色の方がお化けっぽいよ。」
「まあ、本当に元気になったのね。そんな憎まれ口をきくなんて。」
やり取りは、中断してエドに近づく。
サーチをかけると魔力も体力も最低ラインだ。
あぁ、毒か。回復させようとするプリモナの治癒魔法を邪魔してるのか。
では、やはりあれだな。
『創造』
空間魔法から取り出したものを更に改良強化する。
それは、我々の世界で言う「抗生剤」。
いや、黴から出来るって聞いて試してたのがあって。
更にさっきの万能薬と一つに纏める。
エド。
頼む。もう一度目を開けてくれ。
頼む。。
口から飲ませる。魔法で無理矢理だけど。
しばらく見ていたが変化なし。
やっぱり思いつきの薬では無理かあ。
肩を落とす俺に「戻ろう」とベルンが声をかけた。
いつの間に。
フラフラとベルンに掴まりながらドアを開けて外に出た。
傷ついたエドの顔が頭から離れない。
絶対、絶対諦めない。
ジェルドや皆んなの力を借りてきっと。
その時!
「ラルさん。エドさんが!!」
プリモナの叫び声に思わず自力で歩いて部屋に飛び込む。
「エド!」
何と、エドはすでに立ち上がっていた。
手や足の惨すぎる傷もまるで無かったかの様に。
「地獄から戻ったよ。
ラル、お前が呼ぶから仕方ないだろ。
あれ。あの薬はヤバいぞ。ルルドの御大辺りがまた騒ぐぞ。」
ベットに改めて腰掛けそれでも手足に後遺症は感じられない。いや、あれマジか?
ヤバい薬みたいだよ。んー。
その後、二人ともプリモナに叱られてベットに戻った。プリモナの涙目に素直に詫びた。
しかしあの賑やかな皆からは、魔人の話が一度も出ない。
あの四天王ゼラがどうなったかを。
刺し違いなんて意気込んだけど、無理だったか。
一人きりになってしみじみと今後を思う。
取り敢えず、今のままでは魔王なんで絶対無理。
どうすれば。。
いや、方法はある。
仲間がいるからな。
それを学んだはずなんだから。




