魔人を制圧。ボロゾアでも大活躍!
やってきました「ボロゾア」へ。
こちらの国は、狼族の国で基本的には犬っぽい皆さんの国かな。
なんてのんびりしてる場合じゃなくて、万能薬の大活躍中。
ジェルドと改良を加えたから、効き目アップしてるしね。
適量飲めば、大抵の傷はその場で完治するから。
うーん。大丈夫そうだね。
「あ、あり得ない。何で完治?
いったいバイロン殿は何を俺に飲ませたんだ?」
お?仲良しそうで良かったよ。
それに起き上がるとガタイの良さが際立つなぁ。
スリムな筋肉タイプかぁ。
モテそうだなぁ。
「ラル殿。ラル殿!
聞いておられるのか?
はー。こんなに凄い薬を開発されるがご本人は、この通りで。
私も、最初は連れられてきた若者と思ったほどだ。だが、本当に凄い人族のリーダーだよ。」
バイロンの問いかけとか、ちっとも聞いてなかった。何?
「万能薬は、まだあるかってさ。」
あ、ありがとう。コソッとエドの耳打ち。
「万能薬はまだ沢山あるし、戻ればもっと在庫もあるよ。それと、改めてラルと言います。初めまして。」
「こ、これはご無礼を。
俺は、この国の代表でドルンと言う者だ。
魔人共に遅れをとって恥じ入る限りだ。」
急に身を正して挨拶された。
因みに、もうベットから出て普通通りだけど、寝巻きのままです。
「父上。遅れをとったなど。
同胞を庇っての事。恥じ入る事など。」
「ドルーよ。庇って尚相手を倒さねば代表の座にはおられんのだよ。
それよりも、各地の戦況はどうだ?」
親子の会話か?
なんとストイックな。これが狼族の特徴なのか?
「はい。思わしくありません。
魔人共に押されて村人たちを逃すのが精一杯の有り様。もちろん、戦士達にも犠牲が多く。」
沈んだ声からかなりの危機を感じた。
「あの。
お話し中ですが、よろしいですか?
まず万能薬をどうぞ。ここに500個程あります。不足分は後で持って来るとして、我々を前線に連れて行って貰いたいのです。
事は人々の命に関わること。急ぎましょう。」
あれ?止まってる?ダメか?
「人族よ。お申し出は有り難い。
万能薬は喜んで頂戴しよう。だが、君らを参戦させる訳には。」
あー。ここもか?
また人族嫌い発生なのか?
「ドルン殿。このラル殿の強さは我が国で確認済み。危険はない。安心されよ。」
何?弱いと思って心配してくれてたのか?
分かりにくいよ。
「父上。ここはバイロン殿のお言葉を信じて人族の皆様のお力添えを頂き前線には、私自身が案内をしたいと思います。
ラル殿。いかがでしょう。」
しっかりした青年だなぁ。
「もちろんお願いたい。とにかく、まずは転移を。」
急がせる俺を横目にドルンは未だに迷ってるな?
「彼は見た目は若者ですが、その実は中々老練な策士です。申し遅れました。私は人族のエドと言う者。私も微力ながらお手伝いします。
さっ。まずは参りましょう。」
さすがのエドの一言で、我々2人とドルー君は前線へと跳んだ。
ルーゼアと言う街だった。
そう、街にはその風景を思わせるものがもう無かったが。
空中に浮かぶ魔人は全部で3人。
火魔法で破壊の限りを尽くしいた。
片隅に陣取り懸命に戦う一角に着いてすぐ、エドが攻撃鳥を大量に放す。
俺は、光魔法の玉を数個魔人に飛ばす。
驚いた顔も束の間、一瞬で魔人の姿が消えた。
騒然とする現場では、ドルーが万能薬を怪我人に与えつつ立て直しを図っていた。
「エド。ジジンゾンを街の出入り口に展開して。
俺は、街を回って生存者を確保してくる。
あ、ドルーさん。これを使って。」
俺の出した「万能栄養剤」を渡す。
「とにかく、これで二、三日は何も食べなくて大丈夫だから。俺行くよ。」
俺は、破壊された街へ駆け出す。
サーチをかけながら、あちこちで道や橋などの交通網の整備をする。
土魔法は、その点便利。生産の『建築』は橋の増強に使用する。
あ、生命反応。
ち、小さい。急がなきゃ大変だ。
壊れかけた家を修復をかけつつ、生命反応の元へと急ぐ。
幼い子供が2人、怪我で蹲っていた。
「飲んで。ドルーさんから預かったよ。」
取り敢えず、信頼のない俺よりとドルーさんの名前を借りた。
めちゃ弱りながらも警戒していた男の子の方が、「ドルーさん」の言葉にホッとした表情を見せた。
「さぁ、早く。その子が危険だよ。」
男の子の横には更に小さな女の子がグッタリしてる。ぐずぐずするのはダメだ。
男の子から奪いとって口移しで飲ませた。
「あっ!」
男の子の抗議らしい叫びはこの際無視。
女の子の顔色に、ようやく人間らしい赤みがさす。
ま、間に合ったー。
「ほら、もう大丈夫だから。それから、君も早く飲んで。」
ケロッと起き上がり笑顔を見せる女の子の姿に驚きながらも飲むと、彼の顔色も良くなった。
「ね、この辺にまだ怪我した人いる?」
「いないの。私達逃げ損なっただけだから。」
元気になった女の子が俺にぴったり寄り添って答えた。
「じゃあ、大人の人のいる場所に跳ぶよ。転移の魔法を使うから、捕まって。」
依然として不信感の拭えない顔の男の子を見てさっそく、本部へと連れて行く。
「ドルーさん。崩れた建物の中にこの子達がいたよ。怪我は治したから大丈夫。
お腹すいてると思うから、何かあげて。」
俺は繋いだ手を離して、ドルーに預けた。
。。いや、預けようとした。
なんで手を離さないの?
女の子がベッタリと張り付いて離れない。
「コイツ、クロエにキスした。薬を飲ませるってキスしたから。」
随分と恨み深そうに男の子が呟く。
「なるほど。人族だから知らないのだな。
我ら狼族は、一度でもキスなどの行為をしたら、結婚の約束が成立するのです。
ラルさんは、たぶんこの子の命の恩人。
ですがこの子にとっては、唯一の相手になりました。うーん。我らの掟も絶対。ラルさんの行為もやむなし。どうするか?」
な、なにー。俺に結婚相手が出来たの?
か、可愛いじゃん。
年がちょっと若くて8才くらいかな?
でも、俺が16歳だから。。いける!
やったね。もしかして獣人と結婚?
「ダメだ。無効にすべきです。
そいつを殺す訳にはいかないけど、今回は無しでいい。」
えー。こ、殺すとか。
「ふふふ。お前は決闘を申し込む気だったんだな。だが、命の恩人だ。さてとクロエと申したか。そなたの考えを聞こう。」
えー。決闘とは激しいね。
それはちょっとなあ。
「私は、命の恩人でもあるこの人族のラルと結婚したいです。」
なんか、懐かれてるなぁ。
でも、獣人と結婚って難しいんじゃないかな?
「そうか。
さて、ラル殿はいかがでしょう。
実は助命の為の行為ならば、無効にする事も出来ます。特例ですが。」
惜しいけど、睨んでる男の子も気になるし。
ここは大人の対応だよな。
「大変光栄ですが、まだ幼い彼女には沢山の選択肢を与えたいと考えます。
クロエさん。もし、貴女が大人になってまた御縁があればその時に考えましょう。」
パチパチパチパチ。。。
おー、兵隊さんから拍手だ。
エドもいつの間にか拍手に加わってるし。
クロエちゃん、悲しそうに見ないでくれ。
胸が痛むし。
「さあ、俺からも報告だ。
街の中には、防犯鳥も設置した。もちろんジジンゾンがあちこちで魔人探しをしてるからほぼ制圧成功かな。
ドルーさん。取り敢えず戻ってこの報告を頼むよ。我々が他の地域も手を貸す用意があると代表に話を通して欲しい。
どうだ?」
ドルーはすぐに実行するべく我々と代表の部屋に転移した。
報告を聞いたドルンの判断は早く的確だった。
半日後には、ほぼ全域で制圧終了となる。
やっと、落ち着いて話し合いが出来そうだ。
残してきた他の仲間もよんで、翌日は話し合いとなった。
思いもかけないこのクロエと男の子との出会いは、後に新しい展開を迎える事になる。
「覆水盆に返らず」
ラルの胸にこの言葉が突き刺さるまでは、まだ少しかかる。