「祭り」開催!ー驚きの来訪者ありー
「賑やかだな。いいなぁこういうのは。」
沢山の人々を眺めながら俺はつくづくと思う。
あの魔人の攻撃は、沢山の街や村を破壊した。
住処を失った人達が我が「エルドの街」にどっと押し寄せた。
広くして正解だったよ。
あの山の中の家もだいぶ人口が増えた。
農家や商人はもちろん、ルルドさんの指導で酪農家も充実し出した。
嬉しい悲鳴だとか、俺が言ったらハロルドに怒られた。
何でだ?って聞いたら色々な場所から集まったので揉め事が絶えないとか。
パトロール隊がいくら増員しても追いつかないって怒られた。
で、今この状態です。
要するに「祭り」を俺は提案した訳。
いやぁ、故郷の味「芋煮会」だよ。
大鍋料理を作ってあちこちで料理を配っている。
大盛況で近隣の街や村からも人が来てるらしい。
どこも食糧不足は深刻だ。
防犯面のリーダーのエドが珍しく反対しなかった。
エド曰く。。
「今や王宮も神殿も手が足りていない。
ま、安心とまではいかないが大丈夫だろう。
しばらくは、奴らも大人しくしてるよ。
だが、これだけの人間が押し寄せたんだ。
もう、出入り自由でもいいか。
まぁ今更だしな。」
と、言うわけで開催に漕ぎ付けた。
ここで俺の発明した「万能肥料」が大活躍。
これが中々良い働きをして、絶賛中だよ。
なにせ、時間短縮で収穫倍増。
いやぁ、僅かな時間で大量生産が可能になるって事。
この祭りの為には、勿論大量の食材の用意の必要で、全て用意するにはこれがなきゃ開催は無理だったと思う。
今や、どこも畑や田んぼも魔人の攻撃の為に被害が大きい。
だからこそ、この「芋煮会」をやりたかった。
この「万能肥料」はなぜか、仲間内にはため息ばかりで受け入れられた。
なんでだ?
「な、お前転生組だよな。なんでこんな事するんだ?
チートがあるからか?」
突然後ろから声を掛けられた。
振り向くとザィラードが処さなげに立っていた。
最近、ギルドの部屋に篭って塞ぎ込んでるって聞いたから顔色もあまり良くない。
「うーん。どうだろうな。転生組とか今はもうあまり関係ないかな。で、それがどうした?」と俺。
何となく言いたい事は予想出来る。
「これ、山形の芋煮会の真似だろう?
アイツらに親切にしたって、失敗すればすぐ見捨てるし。良い事ないよ。
懸命に努力したって、チートなきゃ相手にもしない奴らだ。それなのになんでだ?」
やっぱりか。
彼にしてみれば、そう思わざる得ないかもな。
魔人との対決をするのは、大変ない事だからな。
「確か元は、17才の高羽雷士君だったよな。
なあ、雷士君。
Sランクはこの世界では、滅多にない力だ。
チートと言えるよ。だから期待される。
だけどチートと考えるのは、前世を知ってるからだよな。
俺たちは、新しく命を得た。
命の大切さに気づいてる訳だ。
だとすれば、それを強みに変えなきゃ。
そう俺は、思ったんだよ。
なあ、ザィラード。
その名前で新しくやってみる気にならないか?」
彼は俯いたまま静かに聞いてくれた。
俺だって偉そうに言う人間じゃない。
ないけど元日本人の仲間としては。ね。。
彼にとっての新しい世界が広がるといいが。
考え事をしてると急に大声で呼ばれた。
?ベルンか?
「おーい。ラル!客人がきた。
急いで大門までついて来い!」
珍しい。ベルンが慌ててるなんて。
何かあったな?
大門へ行くと仲間達が勢揃いしてる。
こりゃ、一大事か?
おーー!!こりゃ…
ドアを開けてまた、びっくり。
「初めまして。
私は砂漠の向こうの国『デジブル』の者です。
折り入ってご相談したい事があり、遥々砂漠を越えてきました。
あなたが、魔人ドルタを倒した者ですね?」
丁寧な挨拶をされたがすぐには答えられなかった。
何故なら、彼女?は獣人だったからだ。
猫耳にヒョウの尻尾が揺れる。
ア然としながら俺は立ち尽くした。
そう。
この世界に獣人は存在しない。
そう言われている。
子供でも知ってる事実だ。
なのに。。
砂漠の向こうの獣人の国から来たと。
あ、あり得ない。
砂漠の向こうは 「無」と言われるんだ。
そこから、獣人が来た。
ましてや、魔人の相談なんて。。
もしかして、ここはゲームの世界とは異なるか?
いや、何かが変わり始めたのかも。。