エド視点 魔人の気配?
もう、諦めたつもりだった。
最初から俺の手は汚れていたのだから。
組織から追われた時に、うっかり返り討ちにした。
だが、その時にはもう中身のないただの屍。
そう、あの瞬間までは。
「エドさん。俺達めっちゃ練習したんです。
見てください。」
賑やかな若者達の声が、ここ訓練所に響く。
こんな筈ではなかった。
アホなリーダーを持つと本気を出さざる得なくなるのが計算外だ。
この街に受け入れる基準なんてものはない。
ただ一つだけあるのが、困った人はいつでも受け入れる。
それがラルの決めた方針だ。
そうなれば、様々な人間が増えすぎてイザコザも多くなる。
で、俺がベルンにパトロール隊が必要ではと、言ったら丸投げされた。
笑える。
『蛇の道』で一番の殺し屋だった俺が今では「訓練所の責任者」だ。
「エドさん。どうでした?
魔法の威力は、中々だったでしょう。」
今、一番の成長株のリンクが得意げに火の魔法を
放ってみせた。
「俺だって。太刀の使い方が中々良くなったって。ハロルドさんが。」「それなら、俺もベルンさんに。」
賑やかな事だ。
ここの責任者達は、息抜きが必要だとか言いながらやってきては、あちこちで稽古の名を借りた憂さ晴らしをして帰る。
「た、大変だー。」
ん?何か起きたか?
向こうからジェルドが走って来る。
いつもは「薬草研究所」から中々出てこない奴が。
あんなに息を切らしていったい何が?
「ラルさんが。また無茶をしてます。」
なんだ。いつもの事じゃないか。
「いえ、今度こそ大変なんです。
森の西側の山々を穴だらけにしてます。」
山々を穴だらけ?
西側の険しい山々か?
崖ばかりで唯一の取り柄が貴重な薬草が取れるだけの。あの山々か?
また、いったい何を始めたやら。
「なんでも、『任せておけ。カッパドキアを作るから』とか。
何の事か相変わらず分かりません。
ですが、ずっと大変な魔力を放ち続けます。
だから、皆んなで心配しているのです。」
ジェルドのど真面目さんではな。
遠見の魔法で見てくれって事だな?
ん?確かに穴だらけだが。
穴に家らしき建物を埋め込んでるような?
!!また、突然転移しやがった!
「エド。」
ラル隣に立ってる。
「もう、ラルさん。びっくりさせないで下さい!」
ジェルドが心配をし過ぎてお怒りモードだ。
「悪い、悪い。
いやぁエドの魔法を感じたから何かあったかなって思って。」
はー。相変わらずのあほだ。
「お前の所業のせいだ。はー。
いったい、山で何してるのか分かるように話せ。いいか、分かるようにだ。」
本当は転移には中々慣れない。
はー、驚いた。
「魔人の気配が強くなって。ほら、この間も馬を探しに行ったあの西の草原に出たろ。
それから、あちこちで気配が強まったんだ。
そうなると、色んな人を収容する場所が必要だと思ってさ。
そこで『カッパドキア作戦』よ。
とにかく沢山の家は確保したよ。多分周辺の住民くらいは、楽勝でOKだよ。」
得意げなラルと、呆れ顔のジェルド。
だが、俺には魔人の気配の方が気になる。
魔人が出たとなれば、勇者一行を庇う神殿の立場が悪化する。
更に今の王宮には力不足で何も出来まい。
さて。。
ラルはまた山は転移して行った。
何でも、山の中に道を作るとか言ってた。
俺もその場を離れた。
「来る頃かと思ってたよ。どうする気だ?お前。」と、ベルン。
やっぱりコイツの勘の良さは半端ないな。
俺の本当の正体に気がついてるのはベルンくらいだろう。
「やるしかないだろ。ラルじゃな。
このままじゃ王宮はもちろん、神殿まで敵に回る。
出かけて来るよ。」と。
「まさかな、あの『蛇の道』の『顔のない男』に頼る日が来るとはな。
。。。
おい、隠れていても無駄だ。
エドは初めから御見通しだぞ。」
おや、さすがベルン。気配に気づいてたか。
「まあ、バレてるのは承知ですが、実はお願いが。」
やはりグレタか。
「やめとけ。エドは承知の上だ。
巫女姫様の事も必ず探ってきてくれる。
まぁ、待つしかあるまい。」
こいつ。。
まぁ、そのつもりも多少はあったが。
しかし、人間が擦れてるな、ベルンめ。
ま、人の事は言えないがな。
首都に向かうか。
俺は、義足をポンと叩いてそのまま出かけた。
ー別の場所でー
<ラーンだけでなく、マルゼさえやられた。
そろそろ、首都に向かうぞ>
<では、いよいよ。>
<まずは、人々を恐怖のどん底に落としてからな。>
薄気味悪い笑い声だけが響いていた。




