ニセモノ現れる!
やっと、首都の大門の前に到着した。
グレタと一緒になってからの2、3日は、本当に大変だった。
だが、右手が王宮。左手に本神殿だからここでグレタとお別れだ。
やっとだよ。
「グレタさん。
左手に本神殿があるようだよ。
俺たちは、右手に用事があるからここで別れよう。気をつけてね。」
ん?
どうしたんだ?全く動かないとは。
居座る理由を今さら探しているのか?
何だ?
グレタの視線の先を見ると、なにやら張り紙を見ていた。
ー国民の皆様に告げるー
我らの女神様 セレーネス様の御導きによって新しい異名持ちが本神殿に現れました。
名は【ランドルフ様 】 異名は【備蓄の守護者】
勇者様一行に続き、新たな転生者を得ました。
大変目出度い事です。
来たる蒴の月 4日に、お披露目します。
本神殿前にまで。
ーーーーー
マジか?
しかし、俺の名前も異名もバレてる割にニセモノはOKとは。巫女姫様の眼力はどっちなんだ?
いけるのか?ダメか?
まぁ、俺的にはラッキーだよ。
NICEニセモノ。お陰で色々とやり易くなったよ。
「あり得ないわ。 何の連絡もないなんて。
それより巫女姫様の神眼は回復されたのかしら。」
グレタが呟いた。
あちゃー、ショックだったんだな。これまであんなに上手くやってたのに。
「グレタ。全部口からもれてるぞ。
急いで巫女姫様のもとへ帰った方がいいぞ。」
グレタを送り込んだ先も分かったしグレタも戻るだろうし、あー一気に解決したよ。
「グレタさん。貴方は神殿の暗部の者なの?」
珍しく真面目な話し方のプリモナだ。
「いいえ。私はただ神殿に仕えるだけで、そんな大層な者ではありません。」
お、グレタもたち直ったみたいだな。
「巫女姫様のお近くにいたなんて。それは、親衛隊しかあり得ないでしょ。だけど、親衛隊が暗部のマネなんて更にあり得ない。ちゃんと話して。」
真面目な様子で詰め寄るプリモナ。迫力が凄いぞ。
こちらも何か有りか?
おっと。。こりゃ、複雑な事になってきたがそれどころじゃないな。人目が。。ここでは不味い。
「プリモナ。とにかく場所移動だ。
ここらの事、知っているんだろう?
いい場所へ案内してくれ。」
ハッとした表情になったプリモナは、更に顔を引き締めて頷く。
「こちらです。」
おー。プリモナ、めっちゃ早歩きだな。
息切れの音だけが聞こえるけど、皆んな付いて来られるかな?
小さな川沿いの小屋の中に入ると、プリモナが即座に詰め寄った。
「巫女姫様の神眼は、何かあるの?」
プリモナ。一体なぜ?
「プリモナさんこそ、なぜそんなに神殿に詳しいのですか?貴方は一体。」
このプリモナに限って、スパイとかは絶対ない。
ないが、事情はありそうだと思ってたんだ。
なにせ、眼鏡持ちだからな。
「私。私は神殿を追い出された者よ。
でも、20才までいたのだもの。情もまだ、あるから。」
何やったんだ?
間違いなく不味い事やらかしたな。多分。
だが、神殿なら博識は頷けるなぁ。
「ここまで知られては。。。
すべて正直にお話しします。
私は、巫女姫様に仕える親衛隊の者です。
巫女姫様直々の命により、世の中の異変を調べておりました。
『また、魔人が現れるかもしれない。』
本当の巫女姫様のお告げです。
でも、神殿は勇者一行を疑う巫女姫様に不信感を募らせています。お立場は悪化する一方です。
巫女姫様の神眼に浮かぶものに間違いはありません。そんな巫女姫様に代わって、我ら親衛隊が調査する事としました。
親衛隊の中でも、闇魔法の得意な自分が調査の名乗りを上げました。」
「まあ、そうだったの。魔人なら出た」「プリモナーー!」
な、なんですぐバラすんだ。
ヤバイ、ヤバイ。
グレタさんの目がマジだ。
「ラルさん。本当ですか?
ちゃんと答えてくれなかったら、付き纏ってギルド作るの邪魔しますよ。」
おー。脅しとか。
プリモナめ。
「分かったよ。睨むな。
出ましたよ。俺の畑にね。
だけど退治したから、だから神殿に戻っていいんだよ。」あれ?グレタの顔がおっかないがなぜ?
「嘘は良くないわ。魔人を退治したなんて。貴方は良い方だと思っていたのに。」
「いやぁ、たまたま盾の勇者がいてさ。彼が倒してくれたんだよ。」
「まぁ、ラルさん。本当の嘘つきになるわよ。
だって、倒したのはラルさんじゃないの。
盾の勇者のベルンさんは、ラルさんが化け物並みだよ。って言ったから。ラルさん。ちゃんと言わなきゃね。
シャイなんだから。」
なぜか得意げなプリモナのセリフ。
それは、庇ったように見せかけたトドメだよ。
ほら、確実にグレタが興味を示したじゃないか。
最悪。。
翌日、とにかく神殿の事はほっておいて、ギルド本部に行き申請を行う事にする。
申請書を貰った時に、やけにプリモナを皆んなが見たけど、何故?
「プリモナさんは、冒険者レベルAAなんで有名なんです。」と、受付のお姉さん。
はー。プリモナのびっくり箱は一体いくつ仕掛けてあるやら。
「ラルさん。
申請書は、受理されました。
ですが、ギルドマスターになる人はランクA以上の魔獣狩りをして、その核を見せて頂かないと実力の証明になりません。その場合他の方でギルドマスターを申請しても大丈夫です。」
う、疑われてるのか?俺。
よーし。
Aランクかぁ。ブゼルダがAAランクだから大丈夫だな。
「これでいいか?」とブゼルダの核を見せた。
おや?差し出した核を見て、それまで賑やかだったギルド本部全体がピタリと静まり返った。
また、やり過ぎ?
もう、ブゼルダくらいで大袈裟な。
「貴方は、まさかSランクでは。」
うーん。SSランクなんだけど、言わない方が良さそうだな。
「はい。そうですが。」
しばし、沈黙の後、
「奥の部屋へ、どうぞ。」だって。
はー。切り抜けられるかな。俺。