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Physical Graffiti  作者: 浮浪
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Monday Morning

カーテンの隙間から差し込む陽光と、すずめのほがらかな鳴き声が爽やかな朝の到来を告げている。


本間はカーテンをぴったりと閉めなおし、すずめを罵倒するとベッドに潜り込んだ。


少しでも寝ておかなければいけない。第一印象で元気なさそうとか、暗そうなんてレッテルを貼られたらたまらない。


本間の心に一抹の不安がもたげた。今僕はどんな顔をしているのだろう。


本間は枕元に常備してある手鏡で自分の顔を恐る恐る覗いた。


ひどい!!顔の造りではない。いや、もちろん顔の造りもかなりひどいのだが、それ以上に目の下を覆ったくま、自己主張するニキビ、ザラザラするそばかす。顔全体が赤く目の下だけが黒い。不健康な病人に見える。

 

昨日はここまでひどくなかったのに。


今までの努力ははなんだったんだ。少しでも見たくれを良くしようと、カップラーメンや焼肉を我慢して、まずいほうれん草やピーマンを食し、ビタミン剤だって毎食後飲んだ。それなのになんだこの顔は。

 

もう休んじゃおうかな。本間の心に弱気の虫が湧いた。

 

いや、駄目だ。ここで休んだら今までと一緒じゃないか。本間は小さく雄たけびをあげ、ベッドから起き上がり顔を思い切り叩いた。

 

今日は、入学式が終わって初めての登校日。学内で行われる出来事の全てが本間にとって初めての経験になる。


初めてクラスメートと対面し、初めておしゃべりをする。そして初めて友達になって、初めての連れション、初めての昼食だ。

 

本間の頭には授業の選択や単位のことなど頭になかった。あるのは友達、あわよくば女友達を作ること。そして、バンド。


バンドを作ってみんなの前で演奏する事。これが本間の大学生活の目標であり、夢であった。


中学、高校と憧れながら、誰もバンドに誘ってくれなかった。楽器をやっている人間が周囲にいなかったのもあるが、そもそも友達が一人もいなかったのだ。

 

学園祭で行われる即興で組んだようなコピーバンドを見る度に、本間は歯ぎしりした。


僕の方がずっとうまい。ずっと、ずっと、こんな奴等よりずっとうまいのにと、歯肉から血が滲み出るほどに本間は口惜しがった。


そして妄想した。僕だったら、ラ〇クやオ〇ンジ〇ンジなんかやらない。やるのは決まってるレッドツェッペリンだ。


僕はジミーページだ。本間はジミーページになりきり悦に入る。といっても身長170に満たないずんぐりむっくり体型である本間は、ジミーページの体に自分の顔だけ置き換えて夢想するのだ。


曲目はアキレス最後の戦い。ジミー本間は長い腕を振り回してギターをかっぴくのだ。


曲の終わりはマスターペーションの終わりに似ていた。虚脱状態に陥り、自分を惨めに感じる。


自分はジミーページではなく、本間史明。トップに君臨するロックスターではなく、教室の底辺に属する劣等生なのだ。 

 

それでも本間はシコシコシコシコ練習してきた。ちんこをシコシコすることもたまにあったが、それの何百倍もの時間をギター相手にチョメチョメしてきた。


その結果、今現在のジミーページでも完全再現するのは難しいと言われるインプロヴィゼーション{即興演奏}を完全コピーするまでになった。

 

大学は高校とは桁が違う。より多くの友人を得る為。そしてよりレベルの高い音楽をする為にわざわざ本間は東京に出てきたのだ。




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ロック ギター バンド レッドツェッペリン スカトロ 
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