ジャック・デ・スマス
アリス、猫≒ディアナ、死神≒サンタ≒ジャック
アリス「あーあ。つまんない。なんか面白いこととかないかなー」
ディアナ「あれ?アリス?どうしたの、こんな所でつまらなそうにして」
アリス「…ああ、ディアナか。別に大したことはないよ。大したことがないから問題なだけで」
ディアナ「ふーん?よく分からないけど、学校で堂々サボるのはどうかと思うよ?」
アリス「いいでしょ。私の勝手。そういうディアナは何してるの?授業は?」
ディアナ「私はもう終わったから来たの。昼過ぎから授業があるアリスと違って、私は朝から昼までだからね」
アリス「そういえばそうか」
ディアナ「もう、忘れっぽすぎ。大丈夫?」
アリス「うーん…今まで生きてきた記憶が無いかも?」
ディアナ「そんなまさか」
アリス「…なんてね!ていうか帰るんじゃないの?」
ディアナ「まあね。アリスは?」
アリス「まだここにいるかな。ふぁ…なんか眠くなってきた」
ディアナ「はぁ…今度は二度寝?授業には間に合うように行きなよ?私はもう行くからね」
アリス「うーん、はいはい」
ディアナはアリスのセリフ途中には既にはけ動作
アリスは寝転がりながらも起きてはいる
サンタ「あれあれあれ〜?こーんなところに、可愛い子どもが落ちてる〜!」
うろちょろするがアリスは一切見ようとしない
サンタ「あれぇ?死んでるのかなぁ…それとも聞こえてない?おーい!」
アリス「なに…うるさいな…ってうわっ!?誰あんた!?」
サンタ「あっ、生きてたんだ!私…私?私はね…サンタクロースって呼ばれてr」
アリス「サタンころーす!?私殺されるの!?」
サンタ「いやいや!何言ってんの!私はサンタクロース!」
アリス「いやいやいや!何言ってんの。死神みたいな顔して、子どもに夢と希望を届けるおじいさんには見えないんですけど!?」
サンタ「私はれっきとした夢と希望を届けるサンタだよ!」
アリス「じゃあ証拠見せてよ!」
サンタ「……。とにかく、私は人は殺さないし、悪魔でもなければ死神でもないから!」
アリス「ひぃ!百歩譲って信じてあげるから…その顔で近づくなー!」
サンタ「あ、待ってよ!逃げる前に教えて!君の名はー!!」
二人ともはけ、すぐに息を切らしてアリスが出てくる
アリス「はぁ…はぁ。ここまで来ればあの変なサンタクロースを撒いたでしょ。…それにしても、ここはどこ?学校は…」
猫「キミ、どーしたの?何か困ってる?」
アリス「その声は…ディアナ!って…猫?」
猫「そうさ、私は猫。でもただの猫じゃないんだよ?二足歩行が出来るすんごい猫なのさ!」
アリス「…てことは、長靴を履いた…あれ、履いて、ない?」
猫「長靴?私がそんなものを履くわけないじゃないか!まず戦闘に不向きだしね!」
アリス「戦闘って…誰かと戦うつもりなの?」
猫「誰か…誰だろ?誰だっていいのさ!私と戦いたい奴を片っ端から倒していくだけだから!」
アリス「…なにそれ怖。というか、猫さんが履いてるその靴…何?」
猫「え?運動靴だけど」
アリス「ええ…ダサ」
猫「ダサとはなんだ!ダサとは!動きやすいし長靴と比べればコスパもいいだろ!」
アリス「うわ…猫が言っていい言葉じゃないよね」
猫「な、なんだと…!」
アリス「なんか、ケチくさい」
猫「うっ…!くそ…もう怒った!覚悟しろー!」
アリス「えっ!?」
サンタ「もー待ってよー!君の名はー!」
サンタがアリスをはけから走って突き飛ばし、猫からの攻撃を避ける
猫「なにするんだ!誰だあんた!」
サンタ「もー走って逃げるなんて酷いよ!」
アリス「走って激突してくるあんたの方が酷いわ!」
猫「無視するなー!」
サンタ「あれ?猫さんじゃないか!」
猫「…あれ、死神。なんだ、その格好は」
アリス「えっ」
サンタ「な、なーに言ってるのかなー!?私はサンタクロースだよ!決して、決して死神なんて名前で呼ばれてなんてないよ!」
猫「いや、顔からして死神だろ。何やってるんだよお前」
サンタ「……。私はね!」
アリス「うわ…」
サンタ「コホン。私はね、日々の仕事に疲労困憊していたんだよ!子どもたちが好きなのに、目が合う度に泣かれ…楽しいことが好きなのに、人生一度だってお呼ばれしたことがない!」
アリス「わあ、可哀想」
サンタ「そうだろう!?」
アリス「あー…うん」
サンタ「だから、私は決めたんだ!呼ばれないのなら自ら開催しようと!」
アリス「へーそう」
猫「ふーん。面倒くさそうだから私はこれで。じゃあね」
アリス「えっ、ちょっと!置いていかないで…ってきゃ!」
サンタがアリスの腕を掴み自分の方に向かせる。
猫ははけきってしまう
サンタ「その名も!ジャック・デ・スマス!」
アリス「え…」
サンタ「だから、ジャック・デ・スマスだよ!クリスマスとハロウィンをかけ合わせたのさ!」
アリス「ジャック…deathマス…うわ、こわ」
サンタ「ちょっと!デ・スマスを勝手に死ぬ!ます!に変えないで!っていうか怖くないし!」
アリス「えーそう言って子どもの一人や二人を連れ去っては…」
サンタ「だから誰も殺さないってば!!…あ、いけない!私みんなを招待するためのカード作ってない!行かなくちゃ!キミもあとからちゃんと来てよね!」
サンタ話も聞かずにはける
アリス「あっ…ちょっと待っ……行っちゃった。はぁ…なんなの、一体。いきなり襲いかかってくるダサい靴履いてる猫とか、変な口調の死神サンタとか!」
ディアナ登場
ディアナ?「なにしてんの?こんなところで」
アリス「あっ…ディアナ!今度は猫じゃない。…って、ここ…町?さっきの変な場所は…」
ディアナ?「猫?変な場所?何寝ぼけてるの。自分でここまで来たんでしょ?」
アリス「えっ?…そ、そう…だったかも…?」
ディアナ?「もう、寝ぼけすぎ。そのうち私の名前も忘れたりして」
アリス「そ、そんなことあるわけないよ!ディアナのこと忘れるわけないじゃん!」
ディアナ?「えー?でも私は忘れちゃったなぁ…?名前なんだったっけー?」
アリス「えっ、嘘!私の名前はアリスだよ!?」
ディアナ?「分かってるよ。冗談、冗談」
アリス「ひどいっ!」
ディアナ?「あ、そういえばアリス。今度のハロウィンは何の仮装になるの?」
アリス「ハロウィン?」
ディアナ?「うん。え、まさかなんにも考えてないの?」
アリス「あ、あー…はいはい。考えてる!考えてるよ!」
ディアナ?「ほんとにー?…まあいいけど」
アリス「そういうディアナは何になるの?」
ディアナ?「私?私はね……」
暗転(ディアナははけ、サンタが出る)
アリス「……きゃあ!」
サンタ「ちょっと、大丈夫?」
全照(サンタがアリスの肩に手を置く)
アリス「…あ、あれ?ここは…」
サンタ「どうしたの?ぼーっとして。ほら、キミも準備手伝ってよ!」
アリス「何、これ…」
サンタ「ジャック・デ・スマスのお茶会でしょ!早く机並べて!」
アリス「あ…は、はい!」
二人で準備を始める
サンタ「もう、どうしたの?さっきまでは普通だったのに!」
アリス「え…?」
サンタ「え?って…立ったまま夢でも見てたんじゃないの?」
アリス「夢…私はさっきまで何をしていたの?」
サンタ「ついに記憶喪失に!?…キミは、私が招待状を送り終えたあとにやっと追いついてきて、これからパーティの準備をしようってことになってたの。それなのに急にぼーっとし始めて今に至る、ってわけ」
アリス「どうしよ…まったく記憶にない。ていうか、流れに身を任せて準備してたけど、私がこれを準備する義理なんてないじゃん!」
サンタ「あるよ!キミもこれに参加するんだから!」
アリス「…は!?嫌だよ!」
サンタ「強制参加だからダメですー!」
アリス「私はこんな変なお茶会なんか参加しないんだからー!」
アリスはける
サンタ「…あーあ。行っちゃった」
猫登場
猫「逃げられちゃったんだ、アリスに?」
サンタ「アリス?アリスって何?」
猫「あの子の名前さ。あの子が自分で私に教えてくれたんだ」
サンタ「へえ!あの子アリスっていうんだ!いいなー!なんで猫さんは名前を知ってるのー?」
猫「それは、私がアリスの親友だからさ!」
サンタ「親友?」
猫「そうさ!あの子の世界では私は親友で、学校ってところでよく話す仲なのさ!」
サンタ「私は?私は、どんな関係?」
猫「ないよ」
サンタ「え?」
猫「だから、ないんだってば。サンタはあの子の世界に出ないの。死神でもね」
サンタ「……そんな」
猫「死神は子どもに嫌われる存在だよ?あの子と仲良くなろうなんて無理に決まってるじゃないか!」
サンタ「確かに…そうだけど」
猫「いい加減諦めなよ。どう足掻いたってキミはアリスに愛されない。死神はどうせ何を着たって死神なんだから」
サンタ「……」
猫「ま、そんなに気を落とすなって!私があんたの代わりにアリスと楽しくお茶会してあげるよ!」
サンタ「嫌だ…」
猫「え?」
サンタ「嫌だ…!」
サンタはけ
猫「…あーあ、行っちゃった。なんで死神は無意味なことができるんだろう。私には理解できないよ。…そうだ、あの時だってそうだった。死神はいつも私の邪魔ばかり。私たちの世界で唯一の敵。本当は誰よりも優しいくせに、それが認められることなんて絶対にないんだ。こんな馬鹿げた茶会に、私まで呼び出すなんて…アイツらしいといえば、アイツらしいけど。死神としてはどうなの?って感じ。ねえ、アリス。君もそう思うでしょ?」
ここの猫のセリフはできるだけ間をあけて。最後のセリフはアリスがはけた方を向きながら。中央だけ照明。ジャック登場
ジャック「…猫さん。私、どうしても君にお願いしたいことがあったんだ」
猫「なんだい?」
ジャック「あの子を救いたいんだ。無理を承知でなのはわかってる。けど、助けて欲しい」
猫「本当に。無理に決まってるよ。私はあの子を守ると称しておきながら、剣を振るうことしか役割がないのだから」
ジャック「それでいい。私に妙案があるんだ」
猫「ふーん。わかったよ」
暗転
アリスうろうろしながら登場
アリス「…どこに行っても、何を曲がってもここに戻ってきちゃう。一体どういうこと…?」
猫「やあ、アリス!どうしたの?何か困ってるの?」
アリス「あ…猫さん」
猫「そんな目で見ないでよ。さっきは少し興奮しちゃっただけ」
アリス「……なんだか私、道に迷ったみたいで」
猫「道を?迷うわけないじゃないか。ここは一本道しかないのに」
アリス「そんなわけない!だって、現にこの先には道が二つに分かれてるし!」
猫「そうなの?私には一本道しかなかった記憶があるよ。一本道が右と左にあるだけ。ほら、迷わないじゃないか!」
アリス「それって二本道があるってことでしょ」
猫「方向が全然違うのものが二本あるわけじゃないんだから、一本道でしょ?」
アリス「もう、話が通じてない!…そうだ。そもそも、ここはどこ?どうして私はここにいるの?」
猫「何言ってるのさ。元々キミのいた場所じゃないか」
アリス「え?そんなことあるわけない!だって私は…」
猫「学校のある世界が本当にキミの世界だって信じてるの?」
アリス「何言って…」
猫「こうは考えない?君が元々いたっていう学校は、実はキミが作っていた幻だって。」
アリス「嘘!だって私、こんな変な世界知らないし!」
猫「思い出せないだけでしょ?」
アリス「知らないよ!」
猫「ふーん。思い出せないなら、私が思い出してあげるよ。今度は興奮して…じゃないから、頭に気をつけてね?」
アリス逃げるようにはけ、猫追いかける
F暗転。サンタ(死神の姿)と猫登場すぐ明転
猫「やあ、私は剣が得意な猫。君を守るために生まれたのさ」
サンタ「私は死神。誰もが恐怖し敬うべき存在。お前の命を奪うために来た」
猫「彼女はは私が守る。そんなことはさせない!」
サンタ「ふん、舐めた口を。お前を倒した後に彼女の命を奪ってやる!」
猫「絶対に奪わせない!覚悟しろ!」
殺陣をして、あるタイミングで二人が腕を当てあった時に暗転。すぐにアリスと入れ違いになり明転
アリス「今のは…何?見たことがないはずなのに、なんだか懐かしい気がする。でも…何かが違う」
猫「(アリスに背を向け)何が違うの?死神は命を奪う存在。君を守るために私は戦ったんだよ?」
アリス「でも…!」
アリスは走ってはける。死神登場
サンタ「どういうこと、猫さん」
猫「なにがだい?」
サンタ「あの子に名前がなくなったなんて…きっと何かの間違いだよね?助けに行こうよ!」
猫「助けてどうなるっていうの?あの子を助けようとすれば、自分の存在意義まで見失いかねない。私はごめんだね。助けたいなら、君一人で助けてみなよ」
サンタ「…わかった」
入れ違い暗転(サンタは必ずはけきってジャックになる)
アリス「私の名前が…なくなった?」
猫「そうだよ。君は一度この世界から消えることになった。それを助けたのも、そのあとの君を守り続けたのもあの馬鹿みたいな格好をした死神さ」
アリス「そんな…だって、死神は悪い存在でしょ!?」
猫「…ほら、だから言ったのに」
アリス「…え?」
猫「やっばり、助けるだけ無駄なんだよ。助けられた記憶もなくしてのうのうと別の世界で退屈だなんだって文句たれて。私はこましゃくれたガキは嫌いなのさ。特にアリス…君はね」
アリス「……」
猫「本当は私が君を殺すはずだったのさ。だから助けるなんて気持ちにもならなかったし、そんな選択肢なんて考えもしなかった。この世界で唯一、死神だけが君を助けようとしたのに。可哀想な奴」
アリス「サンタさん…」
猫「まあ、今からでも遅くないよね?」
アリス「えっ…」
猫「せっかく死神が助けたアリスだけど、私からすれば少し期間が伸びただけ。今から消してもきっと遅くない」
アリス「…やめて!猫さん!」
猫「やめてほしかったら、もう一度アイツに助けてもらいなよ」
ジャック「ダメ!」
ジャック登場。二人の間に入り込む
ジャック「お願いだから、アリスを傷つけようとしないで猫さん。猫さんだって本当は助けたいって思ってるんでしょ?」
猫「そんなことない」
ジャック「嘘だよ。だって、この世界から逃げようとしたアリスをこの世界が消した時、私のことも含めて庇ってくれたのは猫さんじゃん!」
アリス「私が…逃げようとした?どういうこと?というか、あなたは誰?」
ジャック「私はジャック。サンタの格好はしてないけど、本当は死神なんだ。こっちが本当の私」
アリス「あなたが…私を助けてくれた人?」
ジャック「そんな大層なことはできてないよ。全部猫さんのおかげなんだ。猫さんがキミを守り続けてくれたんだよ」
アリス「え…全く意味がわからないんだけど」
猫「馬鹿なこと言わないで。私がアリスを助ける?そんなことするわけないじゃん。アリスはこの世界を捨てて退屈で平穏な世界に逃げたんだよ?それなのに、死神のことも忘れていつまでも退屈だ暇だって文句ばかり言って…」
アリス「……」
ジャック「それでも、猫さんはアリスがすきでしょ?」
猫「……」
ジャック「そうだ!お茶会をしよう!なんだかんだいってできてないもんね!」
猫「茶会って…まず食器がないけど」
ジャック「そんなの空気だよ!」
アリス「何をするの?」
ジャック「楽しいことさ!」
猫「……ぷっ。仕方ないから、馬鹿なサンタに付き合ってあげるよ」
ジャック「ほんと!?じゃあ今すぐ着替えてくる!」
ジャックはけ
アリス「あの…」
猫「なに?あんたの親友が実は猫だって知って嫌だった?」
アリス「いや…なんか、納得したかも。私、小さい頃の思い出とかがなくて。毎日同じ時間、同じ時に同じことしかしてなかった気がする。だから、あっちが夢だったのかも」
猫「どうだろね。私からすればどっちも現実だけど」
アリス「どっちにも楽に行き来できたらいいのに」
猫「そんなのは無理さ。アリスが選んだ場所が現実になるんだから」
アリス「じゃあ、今はここだけが現実だね」
猫「ふむ…そうなるね」
アリス「……。ていうか、ジャック…サンタさん遅いね」
サンタ「呼ばれて!飛び出る!ジャックサンタだよ!」
無言の拍手
サンタ「ちょっと寂しいよ!?あ、ついでに紅茶も持ってきたから飲んで飲んで!」
紅茶を入れて出す素振りをし、アリスだけが飲んだ振り
アリス「…あ、美味しいかも」
サンタ「でっしょー!もっと飲んでー!」
アリス「う、うん…あれ、なんか温かいの飲んだからかな…眠くなってきちゃった」
猫「まだ時間はあるよ。少し休めばいいんじゃない?」
サンタ「うん。そうしなよ。おやすみ、アリス。またね!」
アリス「……うん…」
そのまま机に突っ伏す形で寝る
猫とサンタは机を持って静かに履ける
BGMチャイムでアリスが目覚める
アリス「……あれ、ここは。なにか変な夢を見ていた気がするんだけど……。まあ、いいか」
ディアナ「アリス!ハロウィンの衣装決まった?」
アリス「あ、うん!あのね…」
F暗転