50 リベンジマッチ
「レイニーレイザーを発見しました!!」
元々はレシュティアが率いていたエルフ族の兵士たちが、続々と情報を持ち帰ってくる。
エルフの聖なる武器管理機関である聖弓院。
そこにもまた勇者の他に、勇者候補としての兵士が何十人と所属しており、モンスターの捜索や追尾をメインとしてサポート行動に活躍している。
「その辺りは、聖剣院と変わりませんね」
「兵士一人一人の実直さは、聖剣院とは比べ物にならないがね」
どんな時でも古巣をこき下ろすことを忘れないエイジだった。
「二人とも、準備はいいですか!?」
セルンが代表してライガー、レシュティアに呼びかける。
「この戦いは、モンスターから人類種を守ると共に、勇者の意地を懸けた戦いです! 我々が今後胸を張って勇者を名乗るためにも、必ず勝ちましょう!!」
事前のエイジの言葉が突き刺さったのか、セルンがいつにも増して燃えて熱い。
「…………!」
「…………ッ!!」
そしてライガーとレシュティアは、こちらはこちらで前の出来事が尾を引いていた。
互いにモジモジして、互いの顔を見られない。
「いや……、今は何よりモンスターに集中すべきだ。オイラもお前も勇者ならよ」
「……」
「これ以上あんな鳥に舐められるわけにはいかねえ。この戦いでキッチリ射殺すぜ。やるのはお前だ。オイラがお前を空まで連れていくから」
「承知しておりますわ」
既に実体化している聖弓をギュッと握りしめてレシュティアは言った。
「私だって『青鈍の勇者』様のようになりたいと思って青の聖弓を手にしたのです。この戦いに見事勝利し、目標に近づいてみせますわ!」
さすがは勇者の座までのし上がった者たちということで、多少の動揺は噛み潰すメンタルを備えている。
* * *
「……いた」
報告のあった場所まで行くと、たしかに大空に浮かぶ鳥の大身。
「相変わらずふてぶてしく空に居座ってやがるな。あれからずっと飛んでやがるのか?」
「話によるとレイニーレイザーは、地上の安全が確信できるまで何日でも空に留まり続けるのだとか。驚異的な体力と憶病さのなせる業ですね」
つまりあの凶鳥は、危険と見なしたエイジその他がいなくなるまで決して地上には降りてこないということだった。
エイジたちが自発的にこの地を去ればそれでよし。さもなくばみずからの翼で刻み殺してやろうと、上空から機会を窺っている。
「上等だ、ならさっさとケリつけてやろうじゃねえか!」
ライガーが、手に唾を吐きかけ滑り止めにする。
いよいよ三勇者による合同モンスター討伐作戦が決行される。
* * *
作戦概要を再び確認。
天空高くに留まって、どんな攻撃も届かない安全圏に居座る凶鳥レイニーレイザーを討つために三人の勇者はそれぞれの長所を繋げ合う。
まず竜人の勇者ライガーが、竜人族特有のジャンプ力で高く跳躍。百発百中のアロースキルを持つレシュティアを上空に連れていき、出来る限り接近してから射る。
その際、予想されるレイニーレイザーからの反撃からレシュティアを守るため、人間の勇者であるセルンも同行する。
以上のことを、もっとも効率的に遂行するために、こんな形になった。
「ぐむむむむむむむむむむむむッ!?」
まずライガーの上にセルンが、肩車の形で登る。
「んなななななななななッ!」
さらにその上に、レシュティアが肩車する。
下からライガー、セルン、レシュティアの三弾肩車。格好は悪いが、これがレイニーレイザーへの必勝の布陣だった。
「おおお、重い重い重い! 二人分だとさすがに思い!!」
「「重くないです!!」」
お馴染みのやり取りを繰り返して、三人の照準が天高き凶鳥を収める。
「頑張って! あとはアナタたちに任せるからね!」
三段重ねを手伝ったギャリコからの声援がかかる。
「レイニーレイザーは、こっちの存在に気づいたらすぐさままた刃の雨を降らせてくるわ! 落ちついてジャンプできるのは多分この一回こっきり! 失敗したら逃げて仕切り直すしかないわよ!」
手間取れば憶病なレイニーレイザーは、他のエサ場を求めて逃げてしまうかもしれない。
何としてもこの場で仕留めておきたいところだった。
「任せとけ! あのクソ鳥を唐揚げにしてやるぜ!!」
女性二人を肩の上に乗せたまま疾走するライガー。
その手には当然、ギャリコが長さ太さ、滑りにくい表面加工まで、最新の気遣いの下に調整した高跳び棒があった。
「すまねえな聖槍……、今回お前に出番はなしだ!」
絶好の加速、レイニーレイザーの位置関係もよい。
「ランススキル『ランス・ポール』ッ!!」
竹竿の先を地面に突き立て、限界までしならせてからその反動で飛ぶ。
竜人特有の竜の尾と足の筋力を使うのも忘れない。
「ひゃああああああああッ!?」
「やっぱり慣れないいいいいいいッッ!?」
上に乗るセルン、レシュティアも悲鳴を上げながら、共に空高く駆け上っていく。
「……この辺が高度の限界点だ。あとは落ちていくだけだぜ」
地表を遥か遠くに見下ろしてライガーが言う。
それでもレイニーレイザーの異形は、まだ遥か遠くの遥か高く。
「オイラの役目がここまでだ。あとは頼んだぜ、人間の勇者にエルフの勇者!」
自分の肩に乗るセルンの足を持ち、上方へ高く押し上げる。
これでまた少し敵との距離は近づいた。
「ありがとうライガー!」
セルンの肩の上で、レシュティアが聖弓をかまえた。箙から取り出す実体矢。
それはギャリコがこの時のためにできる限り作り上げたもの。
レイニーレイザーが飛ばした、刃のごとく鋭い羽をそのまま鏃に転用する。いかに通常の武器を受け付けないモンスターでも、自分自身の一部を凶器にされて無事でいられるとは思えない。
「実体矢を撃ち出すおかげで、聖弓と私のオーラをすべて推進力に回せますわ! これであの忌々しい鳥を、射程範囲内に捉えられる!!」
人類種一の感覚スキルを持つエルフならば、距離感の把握もお手の物。
聖弓の助けを借りて実体矢を撃ち出す変則技も、事前の練習で完璧にコツを掴んだ。
アロースキル値1350を誇る勇者レシュティアであれば、外すことは絶対にない。
しかし……!
『クエエエエエエエーーーーーーーーーーッッ!!』
さすがにここまで派手な接近をすれば相手も気づく。
こっちに来るなと言わんばかりに、お馴染みとなった刃の羽を雨のごとく振らせた。
空中で回避行動もとれない中では、刃の雨をまともに浴びるしかない。
そこで……。
「私の出番です!」
人間の勇者セルンが、オーラをまとった聖剣を振り下ろす。
「ソードスキル『一刀両断』!!」
放たれるオーラ交じりの衝撃波が、刃の雨を蹴散らしていく。
おかげでセルンとレシュティア、二人の面前に道が開けた。
「今です!!」
「ライガーにセルンさん……! 二人が切り拓いてくれた道に、ギャリコさんの作ってくれた矢を放ちますわ!!」
必中を約束された。
「アロースキル『正鵠ノ射』!!」





