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3日目の作戦会議

 それから20分後、岩田波留は自分の自宅の前に立っていた西山達を招き入れる。

 命を賭けた恋愛シミュレーションデスゲームを勝ち抜くために連日開催される作戦会議。の雰囲気は、今までとは違う。微かに残った希望が暗い色で塗り替えられたように、初心者の3人は、どんよりとしていた。

 その内、中田が愚痴をもらす。

「小倉明美。二重人格だってことは知っていたが、あそこまでヤバイ奴だとは思わなかったよ。あんなことされたら、怖くて近づけない」

 中田の一言によって他の2人も昼休みの惨劇の様子を思い出し、恐怖から体を震わせる。

「そうっすよ。死にたくなかったら彼女には近づかない方がいいかもしれないっす」

 西山の言葉を聞き、達家は右手を挙げ真剣な顔付きになった。

「ですが、それをやってしまえば彼女から情報を聞き出して、ゲームを有利に進めるという当初の作戦が破綻してしまいます」

「だったらお前は犠牲になるのか? 攻略に有利な情報と引き換えに彼女に殺される覚悟はあるのかよ」


 達家の正論に対し中田は彼の顔を睨み付けて、真っ向から対立した。すると、岩田波留は2人を仲裁するため、彼らを宥め始める。

「アニメとかで良くあるでしょう。二重人格キャラは、大人しい人格と過激な人格の表裏一体だって。ただ、これは想定外でした。まさか現実世界での情報を持ち出して、自分の周りの男子を殺すなんてねぇ」

「それっすよ。現実世界と仮想空間は無関係っすよね? だったらどうしてこんなことに」

「確かに妙ですね。そもそもこの世界は、殆ど現実世界だと言っても差し支えないでしょう。まるで現実世界をコピーしたような感じです。もしかしたら、そこにゲームの目的が隠されているのかもしれません」

 西山の疑問に続き、岩田は顎に手を置き推測を始めた。その後で中田は深い溜息を吐く。

「兎に角、作戦は失敗だ。あれ以上小倉明美から情報を聞き出そうとしたら、必ずヤバイ方に目を付けられて、殺される。それだけは避けなければならない」

 初心者が真剣に悩む中で、岩田波留は腹を抱え笑う。その態度に、中田はイラっとして彼を睨み付けた。

「絶対馬鹿にしてやがる」

「そうですよ」

 ハッキリとした波留の答えを聞き、中田は床を強く殴る。それから続けて波留は不敵な笑みを彼らに見せた。

「ハッキリしましたよ。三橋悦子は初心者向けヒロイン? あれはウソです。これは推測に過ぎないけれど、ステータスを確認した方がいいですよ? 多分死亡フラグケージが溜まってるから」

 その一言で我に返った3人は、スマートフォンで自身のステータスを確認する。そして、彼らはタイミングを図ったように、落胆した。

「どういうことっすか? 死亡フラグケージが50%まで上がってるっす」

「俺は30%だ」

「僕も30です」

 彼らの証言を聞き、波留はクスっと笑った。

「確か西山君は昨日までの段階で死亡フラグケージが40%溜まっていて、中田君と達家君は20%でしたね。つまり10%増加しているということです。その理由は至って簡単。小倉明美を避けているから」

「避けているからって言われても、こうするしかないじゃないですか? あんな奴に関わったら、殺されるに決まっています」

 正論を曲げない達家に対し岩田は人差し指を立てる。

「もう一度言います。三橋悦子は初心者向けヒロイン? あれはウソです。思い出してください。小倉明美は三橋悦子の親友です。そんな彼女の視点から、昼休み以降の君達の行動を見れば、小倉明美を避けるという行為の持つ意味は見えてきますよね? 彼女を避け続ければ、君達が明美をいじめていると思われて、全滅します。なぜなら秩序を守るようなマニュアル人間が、いじめを許すわけがないから。日置麻衣を攻略している武藤君達は、別に避けても大丈夫だとは思うけれど、小倉明美が彼女の親友だったことは、最悪でしたね。浮気にならない程度に小倉明美とも関係を持たなければ、全滅です」

 全滅という重たい言葉に初心者達の表情は曇っていく。すると達家は愚痴をこぼした。

「小倉明美と関わったら殺される。小倉明美を避けたら、三橋悦子に嫌われる。どちらにしても死ぬことに変わりないじゃないですか」

 それに対し岩田波留は優しく微笑んだ。

「大丈夫ですよ。攻略法はあります。不確定要素が強いですが、冷酷な人格にも動機があります。昼休みの時のことを思い出せば一目瞭然ですね。あの時彼女は、小倉明美に必要ないと判断した奴を殺しました。多分裏人格は自分に危害を加えようとした奴が許せないんでしょう。裏を返せば小倉明美の味方であると訴えれば、殺されるリスクは半減するということです。それこそが攻略法なんです」

 岩田波留の攻略法に西山達は納得を示し、彼らは明日もメインヒロインとの交流を深める。

 


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