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小倉明美の困惑

「おかしい」

 5時間目終了後の休憩時間。岩田波留に小倉明美は開口一番で呟いた。その一言に隠された理由を、岩田波留は知っている。

 あの昼休みの惨劇をきっかけに、彼女の周りで変化が起きた。それまでは彼女の周りを囲むように男子生徒が集まっていたのだが、今はそうではない。さらに岩田波留に近づく彼女を見て、他の男子は脅えたような表情を見せる。それに付け加え、彼女が彼に歩み寄る直前まで波留の近くで会話をしていた男子は、避けるように少女から離れていく。

 明らかに何かがおかしい。そう思った明美は不安に襲われ、もう一人の自分が気を許しているらしい岩田波留に助けを求めるのだった。

「昼休みまでは私のことを頼っていた男子が私のことを避けているようだから。それと何人かは私の顔を見て脅えているみたい。絶対にワタシは何かをやったんだと思う。だから教えてほしい。何をやったのかが分からないと謝れないでしょう」

 小倉明美の反応は真面目だと岩田波留は思った。その好印象とは裏腹に、彼は心の中で唸った。何とか彼女の問いに答えなければならないことは分かる。しかし、本当のことを話せば、ゲームオーバー。どうすればいいのかと悩む彼は、少女に伝える。

「小倉さんは良い子ですね。そうやって悪い事をしたら謝ろうとする。それは良いことですよ」

 突然褒められ、小倉明美は喜びを頬に浮かべた。

「誤魔化されているような気もするけど、嬉しい。それで、ワタシは何をやったの?」

 選択を間違えたと岩田波留は後悔する。このままでは堂々巡り。何とか彼女が納得する答えを考えなければならない。そう感じた波留は喉を鳴らす。すると、彼の頭に思いがけないアイデアが浮かんだ。

「別に謝らなくていいですよ。反省しているだけですから。小倉さんはハッキリと言いましたよ。これ以上私を頼らないでほしいって。あの怖い顔は今の小倉さんとは比べ物にならなかったです」

「そんなことを言ったんだ。それと同じタイミングで男子がふざけてガラス片で怪我を負ったと。何となく経緯は理解できた。ありがとう。岩田君」

 小倉明美は岩田波留の答えに納得し、彼に対して微笑みつつ自分の席に戻った。

 その後で西山一輝は岩田に近づき、彼の耳元で囁く。

「怖くないんすか?」

「怖くないですよ。僕は小倉さんの味方ですから」

 少年が小声で返す。それと同じタイミングで、小倉明美は自分の席の前で立ち止まり、後ろを振り向いて岩田波留と顔を合わせた。その少女の顔は笑っているように波留の瞳には映った。


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