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始業式

 そんな中、時計は午前8時15分を指し、紺色のセーラー服を着た少女たちがぞろぞろと教室の中に入ってくる。セーラー服はワンピースのような構造になっていて、腰の部分に黒色のベルトが巻かれていた。清純な雰囲気を漂わせる白色のセーラータイと純白の襟が特徴的で、スカート丈は綺麗に20センチに統一されている。靴下の色まで白で統一された少女たちは、続々と自分の席に鞄を降ろす。

 この中に小倉明美がいるのではないかと波留は思った。だが、その予想は大きく裏切られる。

 教室の出入り口のドアが開いた瞬間、不安や恐怖を和らげるような、気持ちの良い空気が広がった。そうして、2人の女子高生が教室に姿を見せる。

 1人は釣り目に赤色の眼鏡が特徴的な黒髪ツインテールの少女。もう1人は首筋に小さな黒子がある、肩まで黒い髪を伸ばしたストレートヘアの巨乳な少女。

 教室内で1番胸の大きい彼女が、小倉明美だろうと、男子生徒達は思う。その中で岩田波留は、早朝に思いついた作戦が使えるのではないかという自信を持つ。


 メインヒロインが登場したのに、誰も動かない。硬直状況の中、岩田波留は自分の席から立ち上がり、メインヒロインの元へ歩み寄った。

「小倉さん」


 唐突に彼女に話しかけた波留は、少女の大きな胸を思わず見つめた。それから小倉明美は、呆気に取られたような顔付きとなり、波留と顔を合わせた。その容姿は美少女そのものだと波留は思った。最も彼女の隣にいる三橋悦子も同じレベルの美少女だが、波留は明美が一番好みだと感じる。

「岩田君?」

「今日も三橋さんと一緒に登校ですか?」

 鎌をかける波留に対し、小倉明美は単純に嬉しいような表情を見せる。

「そうだけど……」

「やっぱり2人は仲が良いですね。それでは、今年度もよろしく」


 岩田波留はメインヒロインに頭を下げ、自分の席に戻る。

 自分の椅子に座った波留は、密にガッツポーズを作り、心の中で喜んだ。

 その直後、教室のドアが開き、黒髪のマッシュルームの少女、日置麻衣が姿を入ってくる。そうして2年B組に在籍する30人の生徒が全員集まった。

 担任の教師が姿を現し、朝礼が始まる。そして、当たり前のように彼らは始業式が開催される体育館に向かう。


 その体育館の景色は、予選が行われた体育館と同じだった。床に貼られたカラフルな色のテープ。そして前方のステージの両脇には、大きな黒色のスピーカーが設置されている。 唯一の相違点は、天井にシャンデリアがぶら下がっていないこと。

 男女それぞれ一列に並び、総勢180名程の高校生が体育館に集結する。その後で、体育館の窓際に整列していたジャージ姿の教師の1人がマイクを握った。


「これより始業式を始める」

するとスーツ姿の初老の男が檀上に上がった。

「校長先生の挨拶」

司会を務める教師が檀上に立っている校長先生に対して、頭を下げた。その一連の流れは、現実世界の始業式と同じ。仮想空間であることを忘れるようにリアルだと、2年生の男子生徒は思った。それを象徴させるのは、校長先生の長い話だろう。

 10分後、校長先生は一度深呼吸して、話を締めくくる。


「2年生の皆さん。明日は後輩の1年生の入学式です。先輩になるという自覚を持ち、学校生活を楽しんでください。3年生の皆さん。進学や就職など進路は様々ですが、悔いの残らないように考えてください」


 当たり障りのない話を、岩田波留は聞き逃がさない。ここが仮想空間であることを忘れさせるようなリアル設定。校長先生の話を聞いた瞬間、波留の頭に推測が浮かぶ。

 始業式は無事に終わり、波留達は自分達の教室に戻った。始業式終了から15分後に行われるホームルームまでの休憩時間を利用して、男子生徒はメインヒロインの近くに寄る。

 貴重な時間を利用しないのは、教室内にメインヒロインがいない阿部連と、痩せた体型に水色の淵の眼鏡の少年、松井博人だけ。残りの12人は各ヒロインとの会話を楽しんでいた。

 休憩時間は、あっという間に過ぎホームルームが始まる。その時のB組の男子生徒は知らなかった。何気ないホームルームにもゲームが隠されていることに。


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