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そして少女は花を捧げる

作者: 藤藤ワタル

課題で書いたものを手直しして投稿させていただきます。感想などいただければ今後に活かしたいと思います。

 とある小さな村に、一人の少女がおりました。


「ねえねえシャル、『お花遊び』をしましょう?」

 

少女アリスは言いました。


「本当にアリスはお花遊びが好きなのね」

「ふふ、だってお花が好きなんですもの」


 シャルと呼ばれた少女の名前はシャルロット。アリスの一番の友達です。


「またお花遊びなんかしてんのか? アリスはいつまでたってもおこちゃまだな!」


 アリスをからかうのは、幼馴染のエリック。


「エリック! そんなことばっかり言ってたらアリスに嫌われちゃうわよ?」

「ふ、ふん! なんのことだか! こいつに嫌われたって全然構わないぜ!」


 三人の少年と少女は、いつも一緒です。


「いいのよシャル。エリックも、前みたいに一緒にこの花瓶へお花を入れましょう?」


 アリスは、ひとつの花瓶にみんなで持ちよったお花を飾る『お花遊び』が大好きでした。


「わあ! 綺麗なお花畑」


 アリスの瞳に映るのは、綺麗な赤いお花畑。


「あははっ!」


 アリスは嬉しくなって、走り出します。


「本当、アリスはお花が大好きなのね」

「しょーがねえな。つきあってやるよ!」


 二人も、アリスと一緒に赤いお花畑を走り出しました。


 赤い、紅いお花畑。アリスは一つのお花をちぎっては、花瓶に入れます。


「あははっ、あはははは!ねえシャル、エリック。すごいわ、こんなに沢山お花が咲いてる!」


 紅い紅いお花畑には幸せそうなアリスの笑い声だけが響いていました。



 ――とある小さな村に、一人の少女と二人の幼なじみがおりました。


「待ってよアリス! あんまり走ると危ないわよ」


 三人の少年と少女は、いつも一緒でした。


「ったく、本当にアリスはいつまでたってもおこちゃまだな!」

 

 けれど三年前、大きな戦争が村を襲いました。

 村の人々は皆、敵国の兵士によって殺されてしまいました。――ただ一人を除いて。


「あははっ! 今日も綺麗なお花がこんなにいっぱい……」


 三年の月日が経ち、戦争は一人の女騎士によって終結へと向かいます。


 その騎士は国の英雄となりました。


 けれど、彼女に近づく者は誰一人、いませんでした。


「ねえ、シャル、エリック?」


 戦場で、独り呟く女騎士。


「そうね、"アリス"」


 独り答える女騎士の鎧には、少年と少女の人形がいつもそばに寄り添っています。


 その女騎士は、『お花遊び』が大好きです。


「これと、これと、このお花を花瓶に入れましょうかしら」


 女騎士は呟くと、兵士の首を削ぎ、剣にを刺して掲げます。


「今日も、綺麗な花束の出来上がり」


 そして女騎士は、掲げた剣の柄を兵士の躯に突き立てるのです。


「あははっ、アハハハ、アハハハハハハハハハハハハァ!」


 今日も女騎士アリスの瞳には、紅い紅い花畑と、幸せな幼馴染たちが映っているのでした。



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