大災害直後のとある美容師さん(標準語ver)
本当に要望が来ましたのでイレギュラーではありますが標準語verを投稿です。
漠然と標準語に手直ししただけではありませんので、読み比べて頂けると幸いです。
僕は、何時も以上に早く店の片付けを済ませ、帰宅前にコンビニでお茶やら軽く摘まめるモノなどを買って帰宅後に炊事、洗濯、遅めの夕飯を済ませて、さっさと食器を洗い風呂はシャワーで軽く済ませ、髪もテキトーに乾かし頭にタオルを乗っけて部屋着をテキトーに羽織りPCを立ち上げて何時でもゲームを出来るように準備をしていた。
普段の店での立ち振る舞いを知ってるスタッフさんや常連さんが観たら幻滅するんだろうけど、そんな事は別に構いはしない、幾ら好きでなった美容師とはいえ、あくまでそれは『仕事』、今は仕事も終わり帰宅して完全にプライベートなんだから、どうしようが僕の勝手である。
約2年振りの拡張パックでレベル上限も100まで上がるって事で総団長達、すごく気合い入ってるみたいだ、<D.D.D>や<ホネスティ>などの大所帯のギルドを差し置いてTOPで新規 大規模戦闘を攻略する気満々だしなぁ、だけど一番槍は僕か総団長のどちらかだろうな…うん!
実装まで多少時間もある事だし、ギルドのメンバーと合流する前に本拠地アキバの中を少しブラブラと徘徊。
僕は何気無しに時計を観て、そろそろギルドのメンバーと合流しようと集合場所に向かう。
「そろそろ、時間だね…。」
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…目の前の光景、いや!それだけじゃない…今、僕が置かれている状況は何と云えばよいのか…一瞬、意識が遠退いて目が覚めたら僕は雑草が被い茂り一面苔むした廃墟の中に立ち尽くしていた。
廃墟から観える景色はどこか見覚えはあるものだけど、それより不思議なのが僕はMMORPGエルダー・テイルの12番目の拡張パック<ノウなんとかの開墾>が実装されるのを自室のPC前で半裸待機していた筈なんですが?ここは何処?僕は何をしてるんだ?
周り…否、下を見下ろしたら、エルダー・テイルのアバターのような格好をした人達が泣いたり喚いたりしている。
「運営は何してんだよ!なんだよこれ?!」
「やだ、私PCの前に座ってたのに此処どこ?」
「何ね!キーボードは!?ヘッドホンは!?モニターは何処行ったとな?!」
「クソ!クソ!なんで顔が猫になってんだよ!」
「何だよ!この鎧に剣?夢か?おい!誰か教えろよ!」
なんだか半狂乱になってみっともないし五月蝿い…。下の人達を観ていたら、少し冷静なれた。(流石にアレを観たら冷静になるよ…。)…でも僕だけが、おかしな事に巻き込まれているわけではないんだなぁ…、どうしたら良いやらと思いながら廃墟の中を見回したら姿見があったので何となく覗いてみる。
「な、なんだよコレ!『エンクルマ』の格好じゃないか?どうなってるんだよ!?」
薄汚れた姿見に映る僕の姿は職業:美容師の六車円では無く長年エルダー・テイルで僕が使っていたアバター<武士>のエンクルマだった…っとはいっても顔の基本ベースは六車円、姿形がエンクルマと云うのが正しいのかな?ドレッドヘアでこの悪趣味な着流しって…ゲームなら良いかもしれないけど、リアルだと…ダサい!いやもう恥ずかしい…、美容師としてセンスを本当に疑う!
しかし、エルダー・テイルを始めたばかりの頃は僕自身ドレッドでそれをトレードマークにしてたしなぁ~『脇毛の左』(※若気の至りの間違い)ってヤツだね。
『阿呆が服を着て歩いてる。』を自他共に認める僕にとって今の状況は [ゲームの世界に迷い込んだ] くらいにしか考えが回らない。多分、誰かがどうにかするだろう難しい事はレザリック辺りかヴィーさんに任せとけば良いさ!
「……ステ……画面……ど……なっ……。」
廃墟の奥から人の声らしきモノが聞こえてくる、多分 お仲間の人が此処にも居るんだろうな。取り敢えず、声の聞こえる方に向かった僕は、あまりにも変なモノを目撃してしまった……。
空気椅子で何もない空間をエアブラインドタッチしてる頭のてっぺんからつま先まで真っ黒なローブ?のような服?を着た仮面の男?うん、声に聞き覚えはある、あの変てこな仮面は間違いない!同じ<黒剣騎士団>の<召喚術師>のヴィーさん!
「ヴィーさん!どうしたんですか?」
「ん?その声はエンクか?俺のPCがオカシイのか、イキナリ拡張パックに不具合があるのか?画面が真っ暗で自分のステータス画面しか表示されねーんだよ?お前はどうよ?ん?なんか音声がクリアっつーか、生々しいな?新しい仕様か?それとお前なんで標準語なんだ?」
…ヴィーさんはこの非常事態を理解していないのか?真っ暗でステータス画面しか見えないって…え?真っ暗?ステータス画面しか見えない?イヤイヤ、ちょっと云ってる事の意味が理解出来ないんですけど?アレかな、あの仮面は『覗き穴』が開いてないのか!?それなら真っ暗の意味は判るけど、ステータス画面ってなんなんだ?ちょっと混乱して小首を傾げ、眉をひそめてビックリ!
◇◇◇◇
エンクルマ
種族:狐尾族
メイン職:武士LV90
サブ職:傾奇者LV90
HP:ーーーー
MP:ーーーー
所属ギルド:黒剣騎士団
◇◇◇◇
あ~!!見覚えのあるステータス画面、装備品だとか色々、そういう事か!は~なるほど、ヴィーさんの方に意識を集中したら、ヴィーさんのステータスも見えるよ、やっぱりゲームに閉じ込められたんだ!あ~なるほどって感心してる場合じゃないだろ!僕は慌ててヴィーさんを思いっきり掴んだ!
「ヴィーさん!認知症を発症するには、まだ5年ばかり早いですよ!その変てこな仮面を外してください!僕らエルダー・テイルの中に閉じ込められてるんです!御自身の目で確認してください!」
「?何んだ?どうなってる?お前が仕事以外で標準語で話すって天変地異の前触れかよぉぁアイエエエエェ~!」
僕は、力一杯ヴィーさんを振り回した……?振り回した!?な!何だよ、この馬鹿力は!?ヴィーさんがボロ布か紙屑みたいに空中を舞ってる!
「お゛お゛お゛~エンク!どうなってんだ!?やっぱり天変地異か?天変地異の前触れなのか~?!」
駄目だ、拙い!取り敢えず、床に下ろさないと話が進まない!兎に角、ヴィーさんにしっかりと状況を説明しないと!
~数分後~
僕は、正座してガタガタ震えいる…そんな僕の前には<死神>が浮いている…ゲーム画面で観る分には怖くもなかったけど…いざ目の前に実物大が現れたらこんなに怖いとは思わなかった…、因みに眼前の<死神>は<召喚術師>の特技の何かで従者と中身が入れ替わる特技を使ったヴィーさん……状況を説明して仮面を外そうとしたら思いっきり怒るですよ?このおじさん…、この機会に仮面の下の顔を見てやろうって下心が無かった訳ではないですけど、そんなに怒らなくても……ちょっ……そんな顎をカタカタいわせて説教されたら怖いですって!それに結局、仮面の下は見てないんですから、許してくださいよ!痛っ痛っ!!鎌の柄で頭小突くの止めてください!痛いですって!
「イマイチ、お前の説明じゃ状況を把握出来んが、改めて視界がハッキリすると云わんとしてる事は理解出来た…取り敢えず、レザと連絡取って、大工達と合流するか…それと言葉を普段に戻せ!」
…何だろう、何でこのおじさん、僕より遥かに年上なのに、こんなに順応性が高いんだろう?既に何か色々と機能使いこなしてませんか?やっぱこのおじさん、変人だよ、うん!間違い無い…。
…後で色々、ステータス画面の扱い方なんかを教えてもらおう…。
「…この異常事態の元凶はお前じゃねーのかよエンク?」
多分、最後まで読まれた方は違和感が拭えないはず・・・(本当に多分)




