問題は山積みで、みんな迷子。
オヒョウ様作:私家版 エルダー・テイルの歩き方 -ウェストランデ編- 第弐歩・大災害+33Days 其の陸 と若干リンクさせていただきました。
オヒョウ様、不快でしたらご一報のほどを・・・。
注:ある意味、連作の方の後々のネタバレなのでその辺を御留意の上、お読みください。
アキバ郊外の廃ビルの屋上、ド派手な着流しにドレットヘアー、槍というには余りにも異形な穂先の武器を携えた狐尾族の<武士>と何故かその横にはモンスターであるところの死神が佇んでいる。
『ま、その内にな。ほな、お休み!』
『たのんますけんね!』
ゴスッ!!
ドレットヘアーの<武士>、<黒剣騎士団>のエンクルマは旧知の西武蔵坊レオ丸との念話を終えると同時に死神に大鎌の柄の部分でド突かれる。
「ヴィーやん痛かろうもん!なんばっすっとや!!!」
「誰が世間話をしろと云った?エンク?俺は西はどうなってるか聞けって云ったんだぞ?」
「しょんなかろうもん!レオ丸兄やんは今、ミナミに居らんみたいやし・・・。」
「今、居なくても大災害直後からのミナミがどうだったかくらいは聞けるだろう!アンポンタン!!」
「大災害から向こう<幻獣憑依>でずっと死神になっちょるヴィーやんにアンポンタンとか云うわれとうなか!!」
・・・端から見ると余りにもシュールなシュチエーションである。エンクルマがド突き漫才をしている相手は同じく<黒剣騎士団>の<召喚術師>ヴィシャスである(正しくは<幻獣憑依>で入れ替わった死神)ヴィシャスはエンクルマの頭上を彷徨うように浮揚しブツブツと1人ごちる。
「まったく・・・復帰した伊庭の嬢ちゃんは義妹ちゃんとナカスで大災害初日からやらかしてるみてーだし、4馬鹿娘はEXPポットの件で大工と大喧嘩してギルド飛び出した挙句PK狩りと<ハーメルン>潰しの画策中・・・。他にも大工のやり方が気にいらねぇ連中は<西風の旅団>に移籍したりウッドストックの処に泣き付いたり・・・。俺の大好きな<黒剣騎士団>もアキバの街もどうなることやら・・・。」
頭上で1人ごちるヴィシャスを眺めながらその場に胡坐をかき、一旦アキバの街を見据えるエンクルマ・・・<黒剣騎士団>随一のお馬鹿さんを自認する彼でも今置かれている現状をあれこれ考えない訳ではない。真意は測りかねるが仲間思いの総団長“黒剣”のアイザックが<ハーメルン>からEXPポットを購入しているのはそれなりに考えがあっての事だろうし、“黒剣最後の常識人”レザリックがこの件に関して異を唱えないのも思うところがあっての事だろう・・・EXPポットの件でアイザックと大喧嘩をした義盛たちの気持ちも判らない訳ではない、現に一部のメンバーは未だ頑なにEXPポットを使う事を拒否している・・・。他にも狩場の占有からなにやらと色々在り過ぎでエンクルマのお脳はパンク寸前である。
「・・・なんやろうね・・・。<エルダー・テイル>に閉じ込められてなんかよう判らん内に色んなもんが歪んできちょるごたる・・・。大将も、ヨシ達も、ほいで儂も・・・。」
「まぁ・・・在りがちな異世界転移物なら悪の大魔王を倒せば元の世界に戻れるとか、最初からヒントが落ちてたりするんだろうがなぁ・・・なにせこいつはMMORPG<エルダー・テイル>様だ!端っからゴールが無いと来てやがる!どうしたもんだろうな・・・。」
「・・・そういえば、姐やんは異世界転移よりもタイムスリップの方がよかったとか云うて念話で愚痴りよったばい・・・。あん人はどんな状況でも変わりゃあせんね・・・肝が据わっちょるというか・・・。」
「いんやぁ~、大災害当日にナカスでやらかしたみてぇだし、伊庭のお嬢もテンパってるだろうさ。」
ふらふらと空を彷徨うヴィシャス・・・目の前に聳える山積みの問題をどう解決すべきか、そもそも解決の糸口はあるのか・・・人間、思考を止めたらそこで終わりだと自分に言い聞かせる日々。
今は皆、色んな意味で迷子なのである・・・。
色々とツッコミはあると思われますがご容赦のほどを・・・。