第伍歩・大災害+69Days 其の陸~微妙な・あふたー・さいど~
「『第伍歩・大災害+69Days 其の陸』ってサブタイ他所のパクリやん!オヒョウ様ん処のサブタイけっぱったらいかんめーも!」
「おい!エンク言いたい事は判るが“けっぱる”ってのはどっかの方言で“頑張れ”って意味だぞ?お前ぇの地元じゃ別の意味だろうけど…。」
「エンクルマ先輩の地元だと?」
「“けっぱれ”“けっぱる”ち、言うたら【検閲】ち意味たい。」
「パクリとか云ってて先輩もパクリじゃないですか!」
「…ばれた…。」
「バレたじゃねーよ!つーかこの前振りすらパクリじゃねーか!」
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「なお、本編をお読みになる前に本家『私家版 エルダー・テイルの歩き方 -ウェストランデ編-第伍歩・大災害+69Days 壱~陸』を読んで頂けると更におもしろいかと存じます。」
「向こうが面白いからってこっちが面白いとは限らない!期待値は下げて読む!!」
「ヨッシー♪身も蓋もない事ぉ~♪云っちゃ駄目だよ~♪」
<トゥーメイン大回廊>を後に西武蔵坊レオ丸と別れ三々五々アキバへの帰路に就くアキバ組。
大半の者が<帰還呪文>でアキバへ戻ったにも関わらず二頭立て戦車タイプの<首なし騎士>の戦車に同乗する仮面の男と何故か座席の背凭れの縁に直立不動腕組みで同乗する?和装の一見すると男の子に見えなくもない身体に起伏が余り見受けられない少女。
その後を[無限蛇の縄]で両手首を縛られ往年の西部劇を彷彿させるような姿で引き摺られて行くドレッドヘアの<武士>
『おぅ、レザか?エンクのヤツが駄々こねてすぐにはアキバに戻れそうに無ぇ済まねぇが暫く時間をくれ。』
『あっヘルメスさんですか?キッチリ仕事こなして、キッチリ報酬を頂いてきましたよ~♪ええ、レオ丸さん苦虫噛んだ後に青汁飲んだようなスッゴい顔して“ヘルメスの嬢ちゃんによろしゅう言っといてや”って伝言を言付かってますよ。
え?なんでまだアキバに帰らないかって?…エンクルマ先輩が駄々こねてですね…。もう暫く帰れそうにないです。』
仮面の男、<黒剣騎士団>所属の<召喚術師>ヴィシャスと和装の少女、元<黒剣騎士団>所属の<暗殺者>朝右衛門=Yの二人は戦車に引き摺られる<黒剣騎士団>所属の<武士>エンクルマを盛大な溜め息を吐きながら見やる。
残念なモノを観るような視線を浴びる当のエンクルマは不愉快そうに睨み返す。
「儂は納得しちょらんきね!ワンピを兄やんのお供に付けるとか何も聞いちょらんきね!」
レオ丸の手前、一旦は大人しく引き下がったエンクルマだったが別れた後で思い出したように『兄やんのお供をする』と言って引き返そうとし、ヴィシャスや朝右衛門に取り押さえられ現在に至る。
『パチンッ』
ヴィシャスが指を鳴らすとエンクルマの両手を縛り付けた[無限蛇の綱]がスルスルと解けヴィシャスのローブへと消えて行く。
おもむろに仮面の下顎部分を外し煙管を咥え火を燐寸で付ける。
「…ふぅ、じゃあよう円お前さんが納得する理由を話したら大人しくアキバに帰るのかえ?」
「シド先輩?頭に血が昇ったエンクルマ先輩に話して大丈夫なんですか?」
若干戸惑い気味な朝右衛門は口と鼻を塞ぎ紫煙を振り払いながらヴィシャスに訊ねる。
「まぁ、有耶無耶にしたままアキバに強制連行してゴタゴタするよりは話して円の出方見た方がまだマシだろう。」
紫煙を鼻腔から蒸気機関のように噴き出しながら答えるヴィシャス。
「なんね?そん言い方やったら朝ちゃんも最初っから知っちょったとな?儂だけ村八な?」
「そりゃそうでしょ!僕はレオ丸法師と付き合いが長い訳でも特別な思い入れがある訳でもなし。ついに云うとお仕事ですから最低限度の事情は聞いてます!」
元<黒剣騎士団>自称“千変卍華”の朝右衛門が今回助っ人としてこの場に居るのはそれなりに理由がある。
ここでは割愛するが、大災害後<黒剣騎士団>を脱退した朝右衛門や“黒剣残念職三人組”はアキバに円卓会議が結成された後にヘルメスの“金の匂い”を嗅ぎ付ける異能を生かし『何でも屋』紛い?の事を始めており今回も“金の匂い”を嗅ぎ付けたヘルメスが強引に朝右衛門を押し付けたのだ。
その時にヘルメス共々、必要最低限の情報は共有している、そしてエンクルマの人となりを知るが故に朝右衛門も黙っていた。
「村八分って云や確かにな…。一応云っておくが“最強工務店”以来の古参の総意だしなぁ…。」
「なんね!それやったら、ほんなごつ村八やん!」
<最強工務店>…この冗談だかお遊びだか分からないギルド名が大規模戦闘『ラダマンティスの王座』攻略以前の<黒剣騎士団>のギルド名である。
ギルド名の由来は諸説あるが『冷やかし』や『腰掛け』で入団してくるプレイヤーをかわし少数精鋭で気心の知れた仲間のみで構成する為とも、総団長アイザックの本業を茶化して名付けられたとも…。
エンクルマもヴィシャスも改名以前からの在籍だ。(ギルド結成以前からアイザックと付き合いがあるのは幹部連と今は<秋葉切子>のギルドマスターを務める黒駒など、結成後初期から居たのが伊庭八郎や<グランデール>のギルドマスターウッドストック=Wなど)
「まぁ、そういきり立つな。<最強工務店>からのメンバーって事は<黒剣騎士団>の中でも、お前との付き合いが長い連中って事だ。」
「だけん何な!」
朝右衛門の予想通り頭に血が昇ったエンクルマは懐から魔法級の短刀[破落戸の匕首]を抜き放ちヴィシャスの咥えた煙管の雁首に突き立てる。
慌てて[倭寇の苗刀]に手を掛ける朝右衛門を左手を突き出し静止するヴィシャス、目元は仮面に隠れ表情は読み取れないが口元は笑っている。
「昔のお前なら問答無用で大身槍ぶっ刺してたろうな…。」
「ヴィーやん、儂ゃ今も昔も、そげん癇癪玉ンげな事はせんばい…。」
蒸すくれた顔でヴィシャスを睨みつつ朝右衛門に“刀から手を離せ”とジェスチャーを送るエンクルマ。
朝右衛門が刀から手を離すのを確認し自身も匕首を懐に納めその場にドカリと胡座をかき座り込みヴィシャスを見上げる。
「大将達が儂ば村八にして兄やんのお供させんやったんはどげんこつなん?」
「お前、ミナミの<大災害>から今日までの情勢、少しでも耳に入れたか?」
エンクルマの前に80~90年代の不良少年の如くヤンキー座りをしつつ<首なし騎士>を戻すヴィシャス。
彼の問いに視線を反らし頭を掻きつつ
「…いんや、<円卓会議>が出来る前は色々ゴタゴタしちょったし、出来たら出来たで冒険者同士の揉め事の仲裁やらさせられてそげんな暇は無かったし…。」
「え~、そういう割には時間が空いたらシブ…」
「しゃーしか!」
ゴニョゴニョと言い訳がましい説明に茶々を入れる朝右衛門の一言を真っ赤な顔で怒声を上げ言葉を遮る。
実際、円卓会議が成立する前のアキバが混沌としており誰もが『自分』の事や『目の届く範囲』の出来事に対応するだけで手いっぱいだった。
円卓会議成立後、その一翼を担う<黒剣騎士団>のギルメン、特にそれなりに名の売れた者はアキバ内外で起こるギルド間のイザコザや冒険者間のイザコザなどの仲裁などに駆り出された。(大災害直後のように頻繁に起こったPK やギルド間の狩り場争いは激減したが、自治組織円卓会議成立後も多少のトラブルはあった。)
現実世界でもそうだが有名な組織に属し、それなりに顔も名前も実力も知られている人間が争いの仲裁に入れば事無きを得る。
例え荒事になったとしてもその場で対処も出来る。出来て日の浅い寄合自治組織円卓会議、出来たからと言って直ぐに治安が良くなる訳でもなく日々起こる些末な争いを時には丸く、時にはトゲトゲしく、処理して行くのが円卓会議の一翼を担う戦闘系ギルドの役割である。
〈黒剣騎士団〉でもアイザックや幹部を除くと本人の自覚有る無しに関わらずエンクルマもそれなりに名の通った冒険者の1人で今のアキバでは抑止力として十分に力を発揮している。(本人にその自覚が無いのはご愛敬。)
「朝坊、冷やかすのはやめてやれ…、でだ、レオ丸法師との会話でも云ったがエンク、黒剣の二つ名持ちは暇じゃねえってな…。っでこれからが本題だ。
今のミナミの冒険者全て<Plant hwyaden>っていう単一ギルドに所属してるそうな。」
「えぇ~♪面白いのに!」
「面白がらんで!…それは置いちょいて。
?その<プラン何とか>が儂やレオ丸兄やんとなんか関係があるとな?」
エンクルマは眉間に皺を寄せ首を傾げる。
「僕もヘルメスさんから聞きかじった程度ですけど、その<Plant hwyaden>ってギルドの土台作ったのがレオ丸法師だって話ですよ?」
「何て?!」
「まぁ、アレだ。有象無象の与太話的噂話から導き出された答えとして、お前の兄貴分がミナミ統一の影の立役者なんだとよ。」
「は?」
端的ではあるが自分の預かり知らぬ大災害後のレオ丸の行動?を知らされ、情報処理が追い付かず只でさえ少ない語彙を更に減らすエンクルマ。
更にヴィシャスの言葉は続く。
「色々とはしょるが、円卓会議の一部は西武蔵坊レオ丸って冒険者を警戒してる。だが、“噂話”の域を出ねーから迂闊に拘束は出来ねぇし、何の権限も無い円卓会議がイキナリ、ミナミから単身旅してる冒険者を拘束したらどんな噂が立つか分かるだろ?」
「やったら儂が兄やんに引っ付いて行動しゃ…」
「円!お前が兄貴分に腹の中隠して接するなんて芸当が出来ないのが分かってるからその役目から外されたんだよ!それにな、もし与太話的噂話が事実でレオ丸法師が危険分子だった場合、お前は間違い無くレオ丸法師と<黒剣騎士団>の間で板挟みだ。
大工が心配して敢えてお前をお供にしなかったはそこだよ!」
今までののらりくらりくらりした口調から厳しい口調へと変わるヴィシャス。
先程まで声を荒げていたエンクルマはヴィシャスの言葉に何か察したようで反論せず視線を逸らし押し黙る。
暫く沈黙が続いた後エンクルマが今にも消え入りそうな声で言葉を紡ぐ。
「儂の知っちょるレオ丸兄やんは他人ば騙くらかして徒党ば組んで…アレ?昔そげん事しよったような…?否々、その上でふん反り返って悪さする人やなか…。現にミナミ纏めたんやったらなし1人でこげない所ウロチョロしようとな…?おかしかろうもん。」
落ち込むエンクルマを見て難しい顔をする朝右衛門と煙管を仕舞い込み、マスクの下顎部分を改めて装着し完全に表情の読み取れない状態へと戻しエンクルマの頭を軽く小突く。
「痛っ!」
「…、初対面だったが確かにお前の言うように“悪の組織の親玉”って柄では無さそうだ、どっちかと云えばそういう連中をおちょくる事に面白さを見出だす御仁だろうなぁ…多分。
けどようエンクルマ?お前も大災害直後から今日までアキバの周りだけとはいえ色々な奴を見て来たろう…。
分不相応な力を突然手に入れて、気が大きくなった奴。
ゲームだった頃はイケイケドンドンだった奴がこうなってからビビりの芋引きになったり。
元の世界に戻れねーからヤケ起こして他人を傷付ける奴。
エトセトラ、エトセトラ…。」
「あっ!最後の方誤魔化した!」
「ほんなごつ誤魔化しちょんのぅ、ちゅーかもうよか年やし、物忘れが激しなったか?」
「エンクてめえっ!」
思わず襟首を掴み締め上げるが、その2人の間に割って入り仮面の方を指差し遺憾の意を伝える朝右衛門。
「ちょ!エンクルマ先輩!シド先輩って僕の両親とたいして年齢変わらないんですよ!僕の両親が爺婆みたいじゃないですか!謝罪と賠償プリーズ!」
「なんね?それやったらヴィーやんが28位に嫁さん貰って仕込んどったら今頃、朝ちゃん位の娘がおったちゅーことね?!」
「エンクルマ先輩!その表現、品が無い!」
「…朝坊…エンク…いい加減にしやがれよ…。」
若人による老人虐待の図である。
仮面で表情は分からないものの明かに殺気を放つヴィシャスにたじろぐエンクルマと全く他人事の様に見当違いな異議申し立てを続ける朝右衛門。
この辺りが多少空気が読める二十代と|全く空気を読もうとしない十代の違いであるが今現在その辺りは重要な問題ではない。
「ヴィ…ヴィーやん落ち着きない!アレやろ!突然の環境の変化やら人間関係のイザコザやらで俗に言う“闇堕ち”しちょんやないかち疑っちょっちゃろ!?ほいで世界征服とか大それた事を計画しょうとか思われちょんやろ?
それやったら心配無か!兄やんはそげんやわい男やなか!それは間違いなか!」
まくし立てる勢いの抗弁の後、暫く辺りは沈黙に包まれる。
先程まで殺気立っていたヴィシャスもエンクルマに散々異議申し立てしていた朝右衛門お互いに顔を見合せた後、エンクルマの顔を覗き込む。
「…朝坊聞いたか?」
「怪獣モチ○ンです!シド先輩!言質は取りました!」
「…はい?」
唐突な豹変ぶりに目が点になるエンクルマを他所にヴィシャスは言葉を続ける。
「結局、レオ丸法師に“自分のお供は不要”だって認めてるじゃねーか!多分お前の事だ、久し振りに会ったから情が移っちまったんだろ?アイザックや他の連中もお前のその情に流されやすい所を危惧してたんだよ!
だからレオ丸法師の監視役にお前じゃなくワンピが選ばれた。
ワンピ以外、例えば俺が監視役でもいいんだろうが大工はアイツを選んだ。
選考基準?知るか馬鹿たれ!大工は“男は黙して語らず”が格好いいと思ってやがるからアイザックの本心なんざ誰も分かりゃしねー。
だがな、エンク…アイツの野生の勘だか何だか分からねー人選は今までハズレた事が無え、根拠も何も無いもんかも知れねぇがハズレた試しがねぇから俺はアイツを信用してる。」
「本当に…、エンクルマ先輩は分かり易く“情に流されやすい”!アイザックさんの人選が適格かは僕的に疑問ですけど。
レザリックさんにもヘルメスさんにも『暫くアキバに帰れない』って連絡してますし、アキバに緊急事態が発生した訳でもなし、のんびり帰りませんか?シド先輩?エンクルマ先輩?」
「…朝ちゃんにまで、そげなふうに見られちょったんかい…。」
どんな時でも場の空気を読もうとしない厨二病を拗らせた後輩にまで自分の欠点を指摘され若干ナケナシのプライドが傷つけられる。
「腐るなよエンク、あれだ、レザは気にしねぇだろうがヘルメス嬢ちゃんはウルセーだろうから金貨稼ぎがてら帰るか?なぁおい?」
「そうしましょ!ヘルメスさん絶対“延滞金”とかいいますよ?十分で五割とか平気でいいますよ?」
朝右衛門の言葉に大仰に身震いし棒読みで返すヴィシャス。
「おっかねぇなぁ~闇金○者ヨシ○コくんも裸足で逃げ出しそうな利息だなぁ~。」
中の人は同一人物だが作品は別物だ!っというツッコミが何処からも来ない。
ついで言うと十日で五割の利息が所謂“トゴ”なので朝右衛門の云う“トゴ”は無茶苦茶な利息である。
意気揚々と街道を外れ強力でドロップアイテムのレアリティーの高いモンスター出現率の高い森林部に歩を進める魔杖に蓄積された魔法を眼暗滅法に撃つ仮面の<召喚術師>と背中に担ぐ大弓を構えコレマタ眼暗滅法に矢を放つ和装の少女<暗殺者>。
彼らを呆然と見つめていたエンクルマは不意に我に返り自嘲気味に苦笑する。
「ばっさ、回りくどい事ばっかしてから…この人選も大将に所為にするつもりかいねヴィーやんは…。」
愛槍[人外無骨]をメニュー画面から選択し二人を後を追うドレットヘアの<武士>
オヒョウ様御作:私家版 エルダー・テイルの歩き方 -ウェストランデ編-『第伍歩・大災害+69Days 其の陸』後の<黒剣騎士団>残念な人達の不毛なやり取りです。
沢邑ぽん助様御作:秋葉切子奇譚よりキャラのお名前をお借りしております。
或いは未完故の品様の作品でのキャラのやり取りが好きでパ…インスパイアさせて頂いております。
っと言う訳でして関係者各位、不快な場合はご一報下さい。真摯に?対応します。
 




