バンギャルちゃんのひとりごつ。
この世界に来て、ほぼ一月半。
少しずつだけど私たちの状況は見えてきた。
かなりの人が巻き込まれ、私たちのいるヤマトはほぼ3つに分断されたらしい。
無法地帯になりつつある、北
円卓会議という、生徒会に近いシステムで平定をはかった、東
南を占拠しようとし、且つヤマトを1つのギルドに統一しようと目論む、西
そんな中、今のところ何処にも属して居ない……私たち。
一緒にこの大災害に巻き込まれたお姉ちゃんは、帰る為の画策をこの世界に巻き込まれたその日から考え、私もそれに倣って動いている。
二人で始めたナインテイルからお姉ちゃんの仲間の元までの道中に同志も増え、騒がしくなった。
皆、一癖……なんてモノじゃない位、変わってるけど、私はキライじゃない。
自分の意志がはっきりしている人達で、自主性の薄いクラスメイト達より付き合い易いと思う。
あ、そういえば……私たちは元いた世界では、どうなってるのかな?
昏睡状態で眠り続けてる?
集団神隠しにあった人々?
……それとも……
辞めとこう。これ以上は考えないようにしておかないと、飲み込まれる。
既に闇に飲み込まれてしまった人達も、居ると聞いた。
私が、引きずられず居られるのは義姉が振り回してくれるからだ……お姉ちゃんが居てくれて、良かった。
……絶対本人には言ってやらない。
何時になるかわからないけど、必ず皆で元いた場所に、帰る。
それには他の人の犠牲があるかもしれない。
それでも、帰るんだ。
誰よりも、早く。皆で。
私たちが帰れれば残った人達の帰り方が見つかるかもしれない。
この世界との行き来も……したい人はするかもしれない。
私はもう、イヤかな。
だって、この世界には音楽が無いもの。
首をかしげる人が多いかもしれないけど、私からしたら……
この世界には『音楽』はない。
……無理矢理聞かされる『音』を『音楽』だなんて私は認めない。
エルダーテイルのBGMがキライな訳ではないよ?
でもさ、聞かされる音は……音楽ではないと思う。
聞きたい音を選ぶ。
その権利を聞く側は行使して、当然。
まだこの世界がゲームだった頃から私は、殆どゲームのBGMをオフにして、その時の聞きたい音楽を選んでプレイしていた。
好きなバンドの新譜。別の作品のBGM。懐かしいCMソングにアニメの主題歌……等々。
もちろんエルダーテイルのBGMの気分の日も、あった。
でも、毎日それは……私にはない。
この世界に来て、今一番辛いのは、聞きたい音楽が側にない事。
ほとんどの皆が困ったという食事については、早いうちに鎌吉くんに出会えたのは大きかったと思う。
……おっぱいの事になると人が変わるとこを除けば、頭もいいし、モテそう。
でも、おっぱい第一のところは、正直引くので、私からしたら……ナイや、ごめん。
そんな残念な人だけど、とても感謝してる。
お姉ちゃんの我が儘をちゃんと理解してついてきてるのも凄いし。
私は時々付き合いきれないからなー……もういい歳なんだから、落ち着けばいいのに。
……面白いから止めないけどね。
話を元に戻すと食事の不便がないからこそ、その時に私が聞きたい音楽が選べないのは、苦痛だ。
鎌吉くんのように、欲しいものを作り出す才能があれば、違ったのかな?
残念ながらそちらの才能は私には、ない。
私にあるのは音楽を聞き、楽しむ才能だけ。
……私からしたら、音楽を楽しみ、聞き、その場限りの生の音の為に足を運ぶことは当たり前だから、それが才能であるなんて考えたこと、なかったけど。
それを教えてくれた人はきっと、この世界で新たな音楽を紡いでるかもしれないね。
そういえば、彼女も今、こちらに居るらしい。
エンちゃんさんが、最近になってようやく連絡が取れたとお姉ちゃんにほろっとこぼしてて、念話切れた後にお姉ちゃんの怒りを買ってた……恋愛ごとの怒りを宥めるの大変だから、エンちゃんさんからの彼女のお話は、程々にお願いしたいな……
トントントン。
ベッドの中で寝ぼけながらぼんやり考えながらゴロゴロしてたら、規則正しいノックが3つ。
その音につられるようにして鼻をくすぐってくる、美味しそうな匂い。
「ランエボちゃん、おはようございます。ご飯ですよ?」
鎌吉くんの声が扉の向こうから聞こえる。
ゆっくり起き上がると、外はだいぶ明るいようだ。
「はーい、準備したら降りるから!」
聞こえるように、大きめな声を出す。
「冷めないうちに来てくださいね」
そう残して、遠ざかる足音。
今日のご飯はなんだろう。
先程から鼻をくすぐるこの匂いは……ベーコン?
そう思うと、途端にお腹が空いた。
何時に帰れるかなんて、私にはわからない。
けど、何時か音楽のある世界に帰るため、今を楽しく生きる。
それが、多分……今の私がすべき事だろう。
さっと、服に袖を通してから新たなる一日への扉を開けた。
遅出しジャンケン気味ですが、この小説の作者は私、『佐竹三郎』ではございません。
『ランエボ』さんの産みの親である某御仁が作者で御座います。
なんでまた二次創作短編集に掲載されたのか?
理由と致しましては、ご本人曰く
『自分、ランエボの短編思いついたが掲載する場所が無いから発表の場を貸しておくれ。』
との事でしたのでこの場を提供した次第。
まぁアレです、『癖』が違うので別人が書いたのがバレバレですけどね。(気持ち手を加えてますが本当に多少。)
ワタシモカカナクチャイケナイノデスケドネェ♪
 




