表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

結果と原因

作者: リーブス

 私は打ち合わせのため、都内のバーに来ていた。黒いドレスを着た女性は、耽美なピアノの音を奏でていた。クライアントの指定した場所だが、それなりのムードがある。私は酔わない程度にスコッチを舐めていた。手持無沙汰にグラスを傾けて氷をかき鳴らしていると、一人の男性客が来た。彼は小太りだがサングラスに灰色の帽子というやや気取った格好をしていた。顔は良く見えないが、事前に聞いた通り。

「マスター、あの方に何かリキュールを」

「ペルノでよろしいですか」

「ええ」

 マスターは彼にグラスを置き、「あちらの方からです」と私を紹介した。すると彼は私の隣に腰かけた。

「どうも今晩は……代々木さん、ですか」

「ええ。今晩は」

 代々木というのは本名ではない。私が今回使うことにした偽名だ。前回の仕事では四ッ谷、その前の仕事では三鷹、というように名前を使い分けている。

「さて、さっそく仕事の内容を伺いましょうか」

「はい。実は、有川邸にあるティーセットが欲しいのです」

「どう言った特徴がありますか」

「球体を切り取ったような丸いカップと、これまた滑らかな円形のソーサー。どちらも白一色です。それと、純金のマドラーがついている筈です」

「他に決定的な特徴は……」

「どの食器にも、小さく蝶の意匠が施されている筈です。どこにあるかまでは解らないのですが……」

「なるほど。承知しました。大体二ヶ月以内に結果が出ると思って下さい。では前金を頂きます」

「はい、こちらの鞄に」

 私はトイレに行き、中身を確かめた。確かに約束の金額が入っている。

「確認しました」

「ありがとうございます。では、これにて……」

 彼は私の分まで会計を済ませて出て行った。

 ともかく私は、有川邸の調査を始めた。あらゆるコネクションと情報網を駆使し、茶器の場所、防犯装置の特徴、留守の時間などを調べ上げた。

 ある月夜、ついに決行した。まずは裏口の電源装置を特殊な器具でいじくり、有川邸への電気供給をストップさせた。すぐさま細工をしておいた窓から侵入し、茶器のある場所に向かった。はたしてそれは高級そうなウッドボードに鎮座していた。私は鞄から特殊な布を出した。これに包まれたものは、いかなる雑音を発しても外に漏れないのだ。ふわりと被せて包んでしまえば後は楽だ。堂々とおもての門にでる。手に嵌めた絶縁グローブを確認し、扉をそっと開いた。それと共に、急に体が軽くなったような違和感に襲われた。それは浮遊感だった。

 私は奈落の底で、鞄の中身を確かめた。割れていない。

 落ちる瞬間に引っ掛けた紐を引っ張って上に登ろうとすると、突然縄が切れた。いや、その縄は何者かによって切り落とされたのだ。奈落から上を見上げると月を背景にしてこちらを覗きこむ人がいた。カウンターで話した男だと、私は体型で認識した。

「おや、また会いましたね」

「しらじらしい挨拶ですね。いったいこれはどういう事ですか」

「それを今説明しようとしていたところです」

 男は奈落から顔を背け、なにやら周りにいるらしき人々に語りかけた。

「皆さんご覧になりましたか。こちらが、我が社が新たにご提案させていただく、電池一本で動く警備システムです。当然ですが、今回のケースのように電気がストップしても安心です。たった今、運悪くといいますか、運良くと言いますか、一泥棒が我が家に侵入しました……」

 広告の手段と言うのはいったいどこまで進化するのだろう。広告のためなら何をやってもいいのか、と泥棒の私は思考を始めた。しかし、恐らく私を捕まえるために出動したのであろう車のやかましい声が聞こえてきて、私は一切を放棄した。


簡単に諦観しちゃうところがラノベっぽい、と友人に言われました。

ところで、僕の文章は毎度毎度微妙なストーリーのため、ジャンル指定に悩んでいます。もしよければ、感想と共に、ぴったりのジャンルを教えていただけないでしょうか(切実)

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ