二章 アルジェンとの出会い。 4
ようやくして、部屋の中が落ち着いた空気となる。
その頃合いを見計らった様に、ライルが真剣な表情で話をする。
「まず自己紹介し直すよ。僕の名前はライル、またの名を怪盗アルジェン。…ヴィシュ-様の命令で、ある目的を遂行する為に、怪盗をしているんだ。」
「…ある目的?」
「そして今から言う事は、信じられないかもしれないが全て嘘偽りない話です。」
「…え、えぇ。…」
と私は返事した。
いつの間にか話に聞き入っていく。
「僕は、ある物を盗む為に十日後の舞踏会で参加者に成り済まし、犯行に及びました。…けど実際には不測の事態に巻き込まれて、失敗してしまうんです。」
とライルも静かに続ける。
「…その際に僕の魔法の力が発動して、舞踏会の10日前に戻ってきているのですよ。…そのうえ今回は、近くにいた君をも巻き込んだままなんだ。」
「…ま、魔法?…過去から戻ってきた?」
「…覚えてませんか?…あの時に僕は、スカーレット伯爵から、君を庇って死にました。」
「…!?…じゃあ、やっぱり。あれは本当の事なのね。」
「…そして知っていると思うけど、僕は舞踏会でナンリー姫を拐った。…しかし彼女を、害するのが目的じゃない。
「え?」
「…真の目的は、舞踏会の参加者の中から魔法を使う者を見つけ出す。…そして、そいつから魔法を盗みだすことなんだ。」
「…何、それ?…どういう事なのよ。…訳が分からないわ。」
と、私は聞き返して、問いただす。
「…例えそれが事実だとして、…どうして、あんな事に?」
「…実は、…その舞踏会には、人の思考を乗っ取って操る魔法を使う賊が潜んでいるんだ。」
するとライルは俯くと、小さな声で答える。
「…そいつはナンリー様を操り、ダンスの時に、婚約者のシヤリー様を殺そうとしている。」
「はぁ!?…シヤリーが殺されるですって!!?」
「……それで僕はナンリー様が、シヤリー様を殺さない様に、彼女を舞踏会の参加者から遠ざけたんだ。」
「……。」
それを私は聞いたら、呆然としてしまった。
ライルも話を、一旦区切った。
そして暗い表情で俯いてしまう。
部屋の中には、重苦しい雰囲気となる。
「そうだ!…ナンリーだ!…」
しかし、今度はヴィシュー殿下が声を荒げだした。椅子から立ち上がると、捲し立てる様に喋りだした。
「この世界で一番に可愛い、可愛い。…俺のナンリーが何処の誰かも分からない奴らの陰謀で、汚されるだと!…そんなこと、我慢できるか!」
まるで子供が癇癪を起こして、八つ当たりをしているようだ。
一国の皇太子らしからぬ振る舞いである。
私は、少し呆れていた。
その後もヴィシュー殿下の怒りは、治まらない。
「この!…ドジ、間抜け!!…役立たず!…お前達のせいだ!!」
ずっと大声で罵声が飛んでくる。
「…もし俺のナンリーに何かあったら、お前達なんか死刑にしてやるからな!!嫌なら、命をかけて守れ!!」
「は、はい。」
とライルは怯えながら、弱々しく返事をしている。
「…何があっても、他の奴らが怪我しようがどうなってもいいから、ナンリーだけは守りきれ!!」
それを私は聞いて、思わず聞き返していた。
「…あの、ヴィシュー殿下?…失礼ながら少し発言させて頂きます。」
「あぁ!?…何だ?」
「…他がどうなってもいい、と言っていますけど、まさかシヤリーも含まれていませんよね?…貴方の婚約者ですよ。」
「…はぁ?…知らんな。あんな女が怪我しようとも、死んでも、どうなろうと知った事ではない。」
するとヴィシュー殿下は、途端に冷めた表情となり、淡々と言葉を告げてきた。
とても信じられない言葉である。
「何ですって!?」
「…もともと好きでもなんでもない。…父上と、向こうの家族が勝手に決めた事だけだ。…なのに、あの女は付きまとってきて。…居なくなってくれるなら、清々する。」
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