二章 アルジェンとの出会い。1
「なあぁぁ!?」
と私は意識を取り戻すと、叫び声をあげた。さらに思わず上半身を起こしたら、勢い余って落下した。
その直後には、「痛っ?!」と私は床に頭に打ち、のたうち回る。ようやく頭の痛みが治まると、辺りを見回していた。すると目の前の光景を見て、両目を見開く程に驚いてしまう。
此処は、私の自室だ。真四角な部屋。白い天井と壁。窓際には、少し古びた机と椅子に、愛用のベッドがある。
床で大の字になって、自分は横たわっていると、思わず呟く。
「あれ?…何で?」
次第に頭がハッキリしてくると、舞踏会での出来事を鮮明に思い出していた。
「確か、私は。…舞踏会で、アルジェンを追いかけて、姫様を。…後、父様が。」
ふと扉がノックされた音がする。
続けて此方の返事を待たずに、出入口の扉が開かれた。
「何事だ?…大丈夫か、カレンナ。」
と父が言いながら、扉を潜り抜けて部屋に入ってきたのだった。
「父様!!…大丈夫ですか?」
私は急いで立ち上がる。近くまで寄っていき、問いただした。
対して父は呆れた表情で、おざなりに返事をしてくる。
「なんだ、急に?」
「だって、父様!…シヤリーの舞踏会で、…アルジェンが現れ、…姫様が!」
「寝ぼけているのか?…舞踏会は、まだ10日も先だろう。」
「はぁ!?…」
と私は驚き、聞き返す。父の言葉が信じられなかった。
「いいから、さっさと起きて支度しなさい。…今日は騎士団の朝稽古の後にも、城に出向いたりと、予定が詰まっているのだからな。」
しかし父は一蹴し、すぐさま踵を返すと部屋から出て行った。もはや真面に取り合ってないようである。
バタンと、再び扉が閉まる。
「何で?…どういう事なの?」
残された私は頭が混乱して、ただ固まった様に動かなくなった。
※※※
暫くして、場所は移り変わる。
此処はロストカ城。城下町の中心地に聳え建ち、深い掘と高い城壁に囲まれている。
城の出入口から、南側の正門を繋ぐ舗装された道は、真っ直ぐに伸びている。
周囲には広大な庭がある。
その南西側の端には、近衛騎士団の寄宿舎が建てられ、広場では兵士達が訓練していた。
その広場に私は軍服の姿で来ていた。
毎日の日課としており、武器の使い方や軍隊の規則を学ぶ。
父の言い付けで、武器の鍛練には強制的に参加をしていた。
「遅い!」
「ぐはっ?!」
と一人の兵士が刀で攻撃をするも、すぐに鋳なされ、反撃を喰う。
「次、!!」
彼等の対戦相手は、私の父である。剣を構え直し、威圧的な気配を漂わせだした。
また他の兵士が薙ぎ倒され、膝をつく。
さらに父は次の相手を呼びつける。
対して次の兵士は向かい合うも、既に気圧されて躊躇する。最終的には破れかぶれで突っ込んでいく。
そのまま同じ様な光景が何度も繰り返され続けた。
やがて順番が巡りめぐっていく。
「よし、次。…カレンナ!」
「はい!」
今度は私が呼ばれた。すぐに父と対面して、剣を戦う。
互いに激しい攻防を繰り広げていた。
私が先に上段から斬りかかる。
父は難なく回避し、隙を突いて大振りの反撃を繰り出す。
親子で一歩も退かずに、つばぜり合いとなる。
しかし、私の方が押され気味だ。幼少の頃より、父から剣術の指南を受けていたが未だに敵わない。
暫くの間、膠着状態が続いた。
「…止め。…今日はここまでだ。」
唐突に父は宣言し、訓練を終了した。
ようやく私も剣を鞘に収め、息を整えると一礼をする。
同時に他の兵士達も、緊張を解いていた。
ただし、すぐに父は怒鳴りつけだした。
「お前ら、弛んでいるぞ!…そんな事では、式典で、何かあった時に対処が出来るのか!」
次の瞬間には、へばった兵士達は慌てて動きだし、訓練の後片付けをしだした。
私も、内心ではドキリとした。表情は変えずに、平静を保つ。ただし心臓は早鐘の様に鼓動していた。
未だに朝に起きた時の出来事が気になっている。
しかし父は此方の様子を気にも止めずに、「…行くぞ、カレンナ。…」と呼び掛け、踵を返して歩きだす。
すぐに私も走り出し、後を追いかけていき、広場を後にした。




