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一章 波乱の舞踏会 4

読んでみてください。

 ※※※


 そうして、場所が移り変わる。

 此処は、大広間と城の二階部分を繋ぐ渡り廊下。

 この先は王家の居住階層だ。

 私は辺りを見渡しながら、奥を目指して、突き進む。

 廊下を抜けきると、城の中は、やや薄暗く人気もない。僅かに月の光が照らしており、何処に何があるのかは判別ができた。

 やがて突き当たりに差し掛かると、分かれ道が出現する。

 左には上り階段、右には下り階段がある。

 ふと両方の道の先から、複数の足音がしている。

 それらは段々と遠ざかっていくようだった。

 (父様は、別の道の方に向かった?…だとすると‥。)

 と私は考えた後に、左の方の道へと走り出した。

 そのまま城の三階へと侵入する。

 此処も長い廊下が奥まで続き、両側の壁には、部屋の扉が等間隔で並ぶ。

 しかも、何故か灯りが消されており、人気もない。

 普段の様相とは異なる雰囲気だった。

 まるで意図的に人払いをされているようである。


 ふと、目の前の廊下には、奥へと向かって走る人影がいる。誰かを人を抱えているようだった。

 「アルジェン!…」と私は確信した。急いで距離を詰めていく。

 人影も気がつき、一瞬だけ背後を振り返ると、すぐ近くの部屋の中へと逃げ込んだ。

 ゆっくりと扉が閉まっていく。

 だが間一髪で、私は間に合った。壁と扉の隙間に掌を滑り込ませると、力一杯に扉を押して部屋の中に突入した。

 「…っ!!」

 と部屋の奥の壁際にいた人影は、此方に対面する様に振り返ってくる。

 私は目を凝らすと、予想通りの人がいた。

 やはり相手はアルジェンである。口元を苦々しそうにしていた。片手で姫様を抱え、もう片方で何かを探る様に、壁を触っている。さらには、

 「…どうして、…お前が此処に?」

 と問いかけてくる。

 その声は、思いの外に女性の様に高かった。

 対して私は相手の質問には答えない。代わりに鋭い目付きで睨めつけながら、威圧的な態度で喋りかけて説得を試みる。

 「もう逃げられないわ。…大人しく捕まりなさい。」

 「…くそっ。…」

 しかし、アルジェンは対面した状態で微動だにせずに、悪態をつきながら此方を睨み付けてくる。全く降参する気はないようだった。

 「…仕方ないわね。」

 と私も小さく呟きながら、相手から目を離さずに隙を伺う。勢い良く飛び出して組伏れる様に身構えていた。


 コツ、コツ。…

 その時、廊下の方から誰かの足音がしてきた。

 ゆっくりと近づいてきて、部屋の中に入ってきた気配を感じる。

 「な?!」

 と、アルジェンが真っ先に驚いており、尋常ではない様子で大きな声をあげる。

 もはや怪盗にあるまじき行為だ。

 あまりの事に私も思わず背後へと顔を向ける。

 そこには父が剣を携えて立っていた。

 どうも様子が変だった。

 父は異様な表情をしていた。まず虚ろな両目をして此方を見ており、「邪魔、邪魔。…」と戯言の様に呟きながら、手にした刀を振り上げている。まるで先程のナンリー姫と同じ様な状態である。

 私は訳が解らずに、父を凝視したまま動けなくなる。思考も上手く回らない。

 その直後に、父は刀を振り下ろしてきた。

 「とうさま、…っ!?」

 と私は悲鳴をあげて身構える。

 だが目の前にアルジェンが現れる。父との間に割って入り、剣の刀身をまともに身体に受けてしまった。

 まるで此方の身代わりになったようである。

 そのまま彼は床に仰向け倒れて動かなくなる。さらに身体には大きな傷が開き、大量出血してしまう。

 瞬く間に床一面に赤く染みが広がっていた。

 「…アンタ!…何で?!」

 と私は側に行って寄り添うと、声をかけながら両手で傷口を抑えつける。急いで止血を試みたが上手くいかない。

 次第に掌にもべっとりとアルジェンの血が付いてしまう。

 「邪魔、邪魔、邪魔、…あたしの邪魔、」

 一方で、父は再び不気味な台詞を口走りながら、部屋の奥へと向かう。ようやくして床で横たわるナンリー姫の側に辿り着くと、また刀を振り上げだした。


 (……もう訳が解らない。ーー)

 と私は思い、力が抜けていく感覚に陥っていた。全身に恐怖と混乱が渦巻いて、身体中を支配していき、自由を奪っていくようだった。

 すると、その時に不思議な事が起きた。

 私とアルジェンの足元から、目映い光が放たれだした。

 やがて光は円形の陣を描き、文字を浮かび上がらせると、より強烈に輝きだした。

 瞬く間に部屋の中は、真っ白に染まる。

 「何?!…」

 私も目が眩んで顔をしかめてしまう。すると頭の中がボーッとしていき、意識が遠退いていく。

 やがて、ぐるりと世界が反転し、ーー

 次に私が気がつくと、世界が巻き戻っていた。

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