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一章 波乱の舞踏会 3

 目の前の惨劇を、他の招待客達も目撃した。

 彼方此方から、大きな悲鳴があがり、誰もが我先にと逃げ惑う。

 一気に会場内は、恐怖と混乱が伝染していた。

 すると今度は会場の出入口の扉が開く。

 そこから、城の数多くの近衛兵達が雪崩れ込みながら駆けつけてきた。

 「何事だ!」

 と先頭の大柄な男が叫び、辺りを確認しながら中央の舞台へと駆け寄っていく。

 彼は赤い髪と真っ赤な軍服を着た人だ。私の父であり、城代及び近衛騎士団団長のスカーレット伯爵である。

 私も我に返ると、すぐに父の後に続いてシヤリーの側へ向かい、呼び掛ける。

 「シヤリー!!」

 「カレンナ?!」

 と彼女も気がつき、顔だけを振り向かせて返事をしてきた。ずっとヴィシュー皇太子殿下に付き添い、ハンカチを彼の腕に押し当てて傷口の止血をしている。

 その隣では、ヴィシュー皇太子が前をじっと見つめていた。

 彼の視線の先では、ドギアス王がナンリー姫殿下を羽交い締めにして、動きを抑えている。

 さらには父も側で、必死に大声で呼び掛けていた。

 「ナンリー様!お気を確かに!」

 「殺す殺す殺す殺す、…。」

 とナンリー姫殿下の様子は変わらない。ずっと呼び掛けに反応せずに、不穏な言葉を戯言の様に呟きながら、虚ろな目を向けている。

 狙いはシヤリーのようだった。


 ようやく私も中央の舞台に辿り着いた。

 だが突然、会場内が暗くなる。

 「な、何だ?!」

 「シャンデリアの灯りが消えたぞ!」

 と、誰かが慌てて言う声がする。

 周囲の人々も、余計に混乱してざわつきだす。

 そうこうする内に、シャンデリアの灯りが再び点されて、一瞬にして急に明るくなった。どういう原理かは、解らなかった。

 私は目をしばたたかせ、明るさに慣れてきたら、周囲を見渡す。

 「なに?!」と、父の驚く声が辺りに響く。

 ほぼ同時に私は振り返って様子を伺う。

 すると不思議な事が起こっていた。

 ナンリー姫殿下の姿が消えていたのだ。

 それだけではない。ーー何故か、ドギアス王も居ない。

 シヤリーや、他の招待客も遅れて気がついた。

 さらには、「おい、階段の上を見ろ!」と誰かの叫び声があがった。

 それを合図に、会場内の全員の視線が一斉に階段の方に振り向く。

 「え?」と再び私も振り返る。

 中央の階段の上には、誰かが立っていた。此方の方を見下ろしているようだ。

 すぐ側にはナンリー姫が階段の段差の上で、横に寝かされている。まるで人質のようだった。

 そいつは怪しい人だ。衣類を着込んで正体を隠している。

 まず灰色の唾広の帽子を目深に被り、ペルソナマスクを着けて素顔が口元しか見えない。

 さらに帽子と同じ色の外套で全身を覆っており、スリットの僅かな隙間の下には、黒いスーツと白い手袋まで身に付けていた。

 徹底的に素肌を晒さない様にしているようだ。

 その足元には、見覚えのある高級そうな服が脱ぎ捨ててある。

 「まさか、…アルジェン……?」

 と私は呟きながら、思わず息を飲んだ。相手の姿と特徴は、聞いた噂話と合致しているのに気がつき、視線が釘付けとなる。

 対して怪しい人物、ーーアルジェンは、

 「この姫は、………連れていく。」

 と言い、姫の身体を抱き抱えると、階段を上がり、二階部分の廊下を走り去っていく。

 瞬く間に二人は、会場から姿を消した。

 足音も遠ざかっていき、全く聞こえなくなった。


 「いったいどうなっている?!」

 「あれは、…アルジェンなの?」

 「知らん!…」

 「それよりも姫様が拐われたぞ!」「お、…追いかけねば、…」

 おまけに、再び招待客も騒ぎだす。

 すぐに近衛兵達が必死に声を掛け続けた。招待客達に落ち着く様に声を掛けて対処するも、手に余る程の状態だ。

 全く治まる気配がない。

 「待たんか!」

 その時、父だけが真っ先に、階段を駆け上がって追いかけて行く。

 私は呆然としてしまった。頭で理解が追い付かない。

 そこへシヤリーが此方に寄って来て、必死に訴えかけてきた。

 「カレンナ、お願い!…ナンリー様を助けて。」

 「シヤリー?…」

 「…危ないのは、わかってる。でも、自分で助けたいのに、私じゃ、助けられない。……」

 「……わかったわ。…此処で、ヴィシュー殿下と待ってて。」

 すぐに私は、意を決して返事をした。

 ヒールを脱ぎ捨て、ドレスの裾を掴む。

 瞬く間に走り出し、階段を駆け上がって後を追いかけた。

 「お願い!」

 と、シヤリーの声が聞こえてきて、遠ざかる。

 逃がすものか、と私も強く思いつつ、何の迷いも無く、ただ愚直に突き進んで行った。

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