一章 波乱の舞踏会 2
良ければ、読んでください。
「…カレンナ!」
私は声のした方に、振り返る。
するとシヤリー侯爵令嬢がいた。大きく手を振りながら階段下りて、此方の側へと歩いてくると途端に話し掛けてきた。
「来てくれたのね!」
「当たり前でしょ。子供の頃からの親友なんだから。」
と、私も返事をしながら笑顔を向ける。
「…ふふ、そうね。ずっと一緒だもんね。」
とシヤリーも微笑みを浮かべている。
「今日のドレス、素敵ね。…」
「ありがとう。私のお母様の物だったけど、17歳になったし、結婚のお祝いに譲ってくれたの。」
「よく似合ってるわ。」
「うふふ。…」
「……やっぱり、もうすぐ結婚するんだね。…」
「えぇ。式の方にも必ず、参加してくれるでしょ?来てくれなかったら、寂しいわ。…今日だって、…私の父様は、仕事で来られないんだもの。」
「わかったわよ。…私は、必ず行くから。」
「…カレンナも、同い年だし。これから結婚する時は私を呼んでね、必ずよ。」
「私が結婚、……ね。…」
だんだんと私は言い淀んでいた。頭を悩ませて言葉を探していると、ー
「シヤリー。」
その途中で今度はシヤリーを呼ぶ声がする。
彼女は振り返ると、驚いて声をあげだす。
「ヴィシュー様?!」
「私と一曲、踊りませんか?」
と、ヴィシュー殿下は、シヤリー目の前で恭しく一礼しながら手を差し出してきた。
すぐにシヤリーは微笑みを浮かべながら頷き、相手の手を取っていた。なんとなく頬も赤くなっている。
そのまま二人は、社交ダンスの舞台の方へと歩いていく。
シヤリーは去り際に、此方に振り向きながら、
「カレンナ。…私、今、とっても幸せよ。」
と言い、とびっきりの笑顔を見せてきたのだった。
ゆっくりと二人は踊りの輪の中へと加わっていった。
さらに大広間の生演奏が次の曲に変わりだす。
その直後に、大広間の中央の舞台に、招待客の子息達や令嬢達が集まりだす。
そのまま彼らは社交ダンスに興じだした。若い男女が入り乱れて、音楽に合わせて動き回っている。
私は黙ったまま見送った。やや目を反らしてしまうと、自らの容姿を再確認しだした。
まず親譲りの赤い髪と中性的な男顔で、背丈は高くて少し肩幅が広い。
多分、ドレス姿でなければ、殆ど女扱いをされた事はない。
「…私が結婚なんて、出来るのだろうか。」
そのまま私は独り言を呟き、物思いに耽っていく。自分も子供の頃は、シヤリーと同じ考えだったのに、気がつけば恋愛や結婚の考えに至る事もなくなっていた。
やがて演奏が終盤に差し掛かる。
とりあえず私も考えるのを止めて、踊りの舞台へと視線を向ける。
ちょうどヴィシュー皇太子とシヤリーは、踊りながら、舞台の中央にまで移動してきていた。
ヴィシューは、爽やかな微笑みを浮かべる。
対してシヤリーは、見つめ返しながら、より身体を密着させていく。
ふと二人の方へと誰かが近づいていく姿があった。
ナンリー姫殿下である。だが先程までとは異なり、様子が変だった。顔は俯かせて表情までは解らず、足取りがふらつきながらで辿々しい。
真っ先にシヤリーが気がつき、踊るのを止めて、顔を振り向かせた。
「ナンリー!!?」
すると同時にヴィシュー皇太子が動き出す。ナンリー姫殿下の目の前に立ちはだかる様に、間に割って入って行った。
「ふん!」
「!?…ぐぁっ!!」
しかし次の瞬間には、ナンリー姫殿下が素早く逆手の状態で右腕を振り上げる。手には果物ナイフを持っており、目の前の相手を切りつけていた。
すぐにヴィシュー皇太子は、辛うじて腕で防御していた。だが前腕部分を怪我をしてしまい、血を流して苦悶の表情を浮かべていた。スーツにも亀裂が入り、大きな血の染みが滲みながら浮かび上がっていた。
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