5章 再びの波乱の舞踏会 1
あれから、また日々が過ぎた。
そして、ついに今日は舞踏会の日となる。
ゴーン、ゴーン。
遠くから時計塔の鐘の音が鳴り響き、時刻を告げる。
今は夕方の5時になったのだった。
此処はロストカ城の大広間。
既に会場には多くの招待客が現れ、ちらほらと集りだしていた。
私と父は並んで、城の廊下を歩きながら、会場の出入口へとやってきた。
すると父は、ポツリと独り言の様に呟く。
「…全く、どういう事だ。…陛下は何を考えているのか。一昨日になって、急に警備の配置を変えろ等とは。」
「そうですね。…父上。」
と私も相づちを打ちながら、話に耳を傾ける。
「城の警備よりも、庭や会場の外の警備を強化しろだと。…これでは何かあった時に、すぐに駆けつけられぬ。…まるで人を遠ざけているみたいだ。」
と父上は不満を隠さず、ぼやき続けている。
私も無言のまま、事前に聞かされた警備体制を思い返してみた。
おそらくヴィシューの差し金だ。
ライルが動きやすい様にしている、と予想がつく。
まだ前回は、父や近衛兵士達は会場の近くにいた。
だが今回は違うようだ。最小限の人数分しかおらず、此処から離れさせていた。
(…敵に利用されない為でしょうね。…だから城内のメイド達にも、人払いの指示をでているのね。…城にも人気がない理由も裏付けれる。)
それなら辻褄が合う、と私は結論づけるも、すぐに頭を振って考えを否定する。
何故なら、父上の意見にも同意していたからだ。
あまりにも杜撰な警備体制だ。何かあれば守りきれないかもしれない。
「…どうしたものか。」
(…どうしたものかしら。)
そのまま親子で悶々としたまま、歩いていると会場にまで辿りついた。
「…とりあえず、会場の様子を見ておくか。」
父上は先に扉を潜り抜けて、会場内を見渡す。
私も後を追いかけ、周りに視線を向けた。
大広間は、やや賑わっている。
招待客達は受付を済ませ、入場していた。
その中に交じって、メイド達は忙しそうに動き回り、準備を進めている。
顔ぶれの中には、王女付きのメイド達もいた。
先日のお茶会の時にいた者達である。
「ふむ、今は異常はないようだな。」
その様子を父上は見て、ぼそりと呟やいた。鋭い目付きで周囲を警戒しているようだ。
「うむ。…そのようだな。」
ほぼ同時に、背後から男の声がしてきた。
すぐに父上は振り返ると、驚いていた。
私も遅れて、振り向く。
そこにはドギアス王が、一人で立っていた。
此方に向かって微笑んでおり、間髪入れずに話しかけだした。
「…スカーレットよ。…警備には滞りはないな。…ちゃんと、配置は済ませたか?」
「陛下。…いらっしゃったのですね。」
真っ先に父上は姿勢を正し、恭しい態度で説明をする。
「…はい。…仰せの通りに。…庭や城の周囲に近衛兵士の半数を配置しております。…また残りの兵士達も会場の周囲を、巡回させております。」
「そうか、それを聞けて安心だ。…」
「…は、はぁ。…なら、良かったです。」
「うむ。…外から賊が入るやも知れないからな、…近衛兵士達も加われば安泰だ。」
それをドギアス王は聞いて、満足気に頷いてから、お褒めの言葉を投げ掛けてきていた。
そのまま王と父上だけで話をしている。
私は黙ったまま、二人の様子を伺う。 さらに妙な違和感を感じていた。
前回ではドギアス王は、会場には来ていない。
最初に姿を現したのは、舞踏会が始まった時に、階段の上で家族で肩を抱き寄せていた筈だ。
「何かな?…お嬢さん。」
すると突然、ドギアス王は此方に顔を向けて、問いかける。
すぐに父上が取り繕いだした。
「…陛下、申し訳ありません。…これは私の娘にございます。…礼儀作法がなっておらず、不躾に御尊顔を。」
「申し訳ありません。…陛下。」
と私も頭を下げて謝罪する。
「構わんよ。…よく来てくれたな。」
しかし、ドギアス王は気にした素振りもなく、
「美味しい料理とかもあるから、是非とも楽しんでくれたまえ。…カレンナさん。…」
とだけ告げると、踵を返して歩きだし、階段の方へと向かって行った。
「では、失礼するよ。」
その様子に、私は首を傾げる。なんとなく違和感を感じていた。
「…仕方ない。…私も警備に行くとするよ。…また後でな、カレンナ。」
それから父上も、会場から外に出て行った。
すぐに私も迷わず、階段の方へと歩きだす。ドギアス王の後を追うためだ。
すると王は、
ドギアス王の後を追いかけだす。すぐに二階にまで駆け上がると、周囲を見渡した。
するとドギアス王は二階の扉を抜けて、渡り廊下の方へと向かうようだ。
私も急いで駆け寄り、扉が閉まる前に滑り込む。
バタン、と扉が閉まる音がする。
「ん?…」
ついでにドギアス王も、此方に気がつき、振り返ってきた。




