3章 ライルの謎 2
(あぁ、だから、さっきの廊下での視線は、…)
やがて私は廊下での様子を思い出す。ようやくメイド達の視線の意味が腑に落ちた。
再びライルの方へ、顔を向ける。
「…あ、はは。……」
すると彼は愛想笑いで誤魔化している。ただ少し影のある表情をしていた。
「貴方、ライルちゃんって言うのね?…あたし、マカ。この城で医者をしているわ。…何か怪我や病気で困っているなら、あたしに言って?」
さらにマカ先生が再び話しかける。
「…カレンナとは何処で会ったの?」
「…あのね、マカ先生!」
と、すぐに私は声を掛けて、制止させようとした。
「…実は先程、私が不注意で怪我をしてしまったんですが。…そこへ偶然にも、カレンナさんが近くにいて、親切に此処まで連れてきてくれたんですよ。」
しかし、ライルは饒舌に喋りだした。
堂々とした態度で嘘を言い、爽やかな笑顔を振り撒いて誤魔化す。
そんな彼の様子は、例えるなら光を浴びて輝く青草のようだ。
私も視線が釘付けになった。あまりの艶やかさと煌めきに、魅入ってしまう。
「そうなのね。…なら、今度は私も頼っていいからね。」
「助かります。…こんなに親切にしていただけて。」
「もう、いいのよ。…これが私の仕事なんだから。」
マア先生も嬉しそうにしており、舞い上がっていた。
両頬を手で押さえ、しなを作って身体をくねらせる。
もはや簡単に嘘を信じてしまっているようだ。
だが私は首を傾げる。なんとなくライルの行動に違和感を感じるのだった。
やがて彼の治療が終わった。
因みに、マカ先生にも検査して貰った。
彼の頭や身体の何処も大事には至ってないらしい。ただの掠り傷程度で収まっていたようだ。
とりあえず私は、安堵の息を吐いた。
「ねぇ、ライルちゃん。…さっきの話の続き聞いてもいいかしら?」
しかし、その後にもマカ先生は喋りだし、質問をし続けようとする。
「ほら、ライル。…大丈夫なら、ヴィシュー殿下が探してたでしょ。」
すぐさま私も大きな声で言い、再びライルの手を掴んだ。さっさと扉を潜り抜けて、部屋を出ていく。
「もう、…カレンナってば。…もう少し喋らせてよ!!」
去り際に、マカ先生の声が聞こえてきた。
そのまま私達は無視して、廊下を進み、早足で逃げていく。
「あ、あの。…治療していただき、…あ、ありがとうございました。」
その途中で、ライルが小さな声で礼を言う。
「別に良いわよ。…」
と私は返事しつつ、ふと気になった疑問をぶつけてみた。
「…それよりも、ライル?…さっき一瞬だけ自然な感じに喋ってなかった?…なんかキラキラした様な、流暢な立ち振舞いしてたよね?」
「あぁ。…それは、…えっと、…。」
ライルは、一瞬だけ言葉を詰まらせるも、つっかえながら答える。
「…陛下の命令で、やっているんです。…私が怪盗としての技術を身につける為に、…変装中に人前での振る舞いを、真似してるんです。」
「ふ~ん、因みに誰の真似よ?」
「…人前にいる時の、ヴィシュー様です。」
「あぁ、納得。…あいつ、外面だけなら爽やかな格好いい皇太子だもんね。」
「…そうです、かね。」
「そうでしょうよ。…ちゃんとした皇太子だと思ってたのに、あんな性格だったなんて、幻滅したわ。…」
「は、はぁ。…。」
「…人の親友の事を、なんだと思っているんだか。…後、地下室での事も、思い出しただけでもイライラする。」
「それは。…」
「…おまけに人を使って、魔法(?)を盗ませているって何?…ライルは、酷い仕打ちを受けてまで、何で怪盗をしているのよ?」
「…………。」
やがて話は確信めいた部分に、踏み込んでいく。




