二章 アルジェンとの出会い。 5
「あ、アンタねぇ!!」
さすがに私も我慢の限界だった。
怒りに強く拳を握りしめ、。ヴィシューを睨みつける。
ただし今にも手が出そうになるのは、ぐっと堪えていた。
その時だった。
ライルが隣に来て、徐に此方の手を掴んで制止してきた。
「!!?」
あまりの突然の事に、私も驚いてしまう。
彼の方を慌てて振り返り、手を振り払う。
頭で状況を理解してくると、顔が一気に熱くなる。
しかし、その一瞬がいけなかった。
「ふん。…」
とヴィシューは一瞬の隙に、大股で乱暴に歩きだす。
此方の真横を堂々と通り過ぎると、さらに去り際に、振り返りもせずに言い放つ。
「…貴様が何と言おうと、関係ない!」
とても冷たい声である。
「…私にとって何よりも優先されるのは、ナンリーだ。」
やがてヴィシューは、扉の前で立ち止まった。
さらに此方を一度だけ睨みつけてから、命令を言う。
「…それと貴様を呼んだのは小言を聞く為ではない。余計な事をするなと釘を刺す為だ。」
「?!」
「…いいか?……これは時期国王になる俺からの命令だ。」
「なっ!?」
私は文句を言おうとするも、ーー
既にヴィシューは、さっさと部屋から出て、廊下の奥へと早足で歩いていった。
瞬く間に姿を消してしまい、もう追い付けない。
私は呆然と、立ち尽くしてしまう。
隣ではライルが未だに、おどおどしているようだ。
私達は部屋に残される。
再び辺りには、気まずい空気が漂うのだった。
「あ、あの。…すいません。」
やや遅れてライルが動揺しながらも、話しかけてきた。
「余計な事して。…でも、止めなきゃって思って。」
「…あのね。」
と私は呟き、隣に顔を向ける。すぐにでも文句でも言おうとした。
だがライルの姿を見た瞬間に、思わず息をのんだ。
「…貴女を巻き込んでしまって、…本当に、…申し訳、ありません。」
彼は俯きながら、必死に謝罪の言葉を口にする。
表情は判らない。ただ冷静に振る舞おうと取り繕っていた。しかし微かに肩が震えており、怯えきっている。
まるで力ない小動物を連想させるようだった。
もはや私溜め息を吐いていた。
もはや何も言えなくなり、怒りの感情すら霧散してしまうのだった。
「あの、えっと。」
それからライルは、恐る恐る顔をあげる。此方の様子を確認してきた。
同時に彼の顎から、一滴の血が床に落ちていた。
「あ、アンタ!…顔っ、怪我してるじゃない!」
すぐに私は気がつくと、互いの顔が近くなるまで側に寄った。
ライルの顔に両手で支え、じっと注意深く、顔の角度を変えて確認する。
「え?…痛っ!?」
とライルも、痛がり身動ぎする。ようやく自分で気がつき、顔をしかめる。
「…あいつに、蹴られた時かしら?」
すると私も、彼の顎に小さな傷が出来ているのを発見する。さらに、ー
「…あぁ、もう。…付いて来て!」
と言うと、相手の手を引いて、部屋から出ていく。
早々と廊下の奥へと進み続けた。
「え、いや、あの?!」
対してライルは慌てていた。歩きながら途中で何度も手を振りほどこうとする。
だが思う様にならず、次第に諦めていた。最終的には大人しくなって、素直に後を付いて来るのだった。
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