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魔法書…?

俺は、ひたすら魔法の練習を続けていた。


最初に覚えようとしたのは、初級魔法の《斬風》。

風の斬撃を飛ばすシンプルな魔法だが、熟練度を上げることで威力が上がり、ベテランの魔法使いにも愛用するほどの魔法だ。練習しといて損はない魔法だ。


練習場所は、町の近くに立っている大きな木。

俺はその木に向かって、手のひらを向けて叫んだ。


「斬風!」


すると、手のひらからわずかに風が吹き出した。

それが最初の成功だった。


そこから毎日、練習を重ねた。

一か月もすれば段々と慣れてきて、風の斬撃もしっかりと放てるようになった。


木はもう、斬撃でボロボロだ。

だけど……まだまだ完璧にはほど遠いだろう。


練習してるうちにわかったことがあった。俺には魔力があるとみた。

普通なら魔法を使うと疲れるはずなのに、俺は一日中《斬風》を練習していても平気だった。


まぁ、母は魔法使い、父は魔法の研究者。

俺に魔力があるのも、当然かもしれない。


ーーー 5年後 ーーー


風が吹き抜け、太陽に照らされた草原。

その中を、一人の少年が駆けていた。


少年の目の前には、一体のスライム。


少年は手を前に突き出し、呟く。


「斬風」


風の斬撃が飛び、スライムは真っ二つに切り裂かれた。


「ふぅ……なかなか上達してきたな」


そう呟いた少年――俺は、今日で10歳になった。


魔法もかなり上達し、今では初級魔法ならだいたい使えるようになっている。

今日は朝から草原でスライム狩りをして修行をしていた。


ーーー そのとき、空から何かが落ちてくるーーー


ふと空を見上げると、まるで隕石のような何かが森の方へと落ちていくのが見えた。


「……なんだ?」


気になった俺は、すぐさま森の中へと駆け出した。


すると次の瞬間――

ドンッ!!という衝撃音と共に、森全体が揺れた。


俺の体も吹き飛ばされそうになったが、なんとか踏ん張って、落下地点へと向かう。


そこには――

地面に突き刺さった、奇妙な女性の石像があった。


その石像は、一方の背中に天使の羽、もう一方に悪魔の羽を持つ、異形の姿だった。

そして、その腕の中には――鎖で巻かれた古びた一冊の魔法書が。


俺は恐る恐る、魔法書に手を伸ばした。

その瞬間、鎖はパリン……と砕け散った。


慎重にページを開くと、中はほとんど白紙だった。

だが、最初の見開きだけは文字が記されていた。


ーーー 天魔の書 ーーー


これは“天魔の書”である。

この書は、すべての生物を従え召喚するこ*ができる。

召喚を行うには、対象と契約を結ぶ必要がある。

契約した生物は、以後、瞬時に召喚できるようになる。


こんなことが書かれていた。文字が消えてわからない文もあるがなんとなく理解できた。


……通常、何かを召喚には魔法陣が必要なはずだ。

だが、この書が本物なら、魔法陣をわざわざ書かないで召喚できるということになる。


「す、すごい……!」


俺は興奮しながら天魔の書を抱きしめ、家へと走り出した。


「ドンッ!」


走る勢いのまま、通りすがりの男にぶつかってしまった。


「おい、前見て走れよ!」


がっしりとした体格の男が、俺を睨んでくる。


「いってて……」


俺は地面に転がりながら、すぐに立ち上がる。

すると、手にあったはずの天魔の書が、男の足元に落ちていた。


「おい、何か落としたぞ」


男は天魔の書を拾おうと手を伸ばした。


その瞬間――


バチィィィン!!


天魔の書から黒い稲妻のようなものが走り、男の体が軽々と吹き飛んだ。


「な、なんなんだよ、その本……!」


男は地面に倒れながら、驚愕の表情で俺を見て言った。


俺は慌てて天魔の書を拾い上げ、再び家へと走り出した。


家の扉を開けると、


「誕生日おめでとー!」


母・ニクスが勢いよく飛びついてきた。


そうだった。

今日は……俺の誕生日だった。


さっきまでの出来事で、すっかり忘れていた。


食卓には豪華な料理が並び、部屋中が温かい空気に包まれていた。


天魔の書は自分の部屋に置き、俺は食卓へ向かった。


ニクスが作った料理はいつも美味しいけど、今日は特別に美味しく感じた。


食事を終えると、ニクスと父・ジーニアがそれぞれ何かを手に持って戻ってきた。


「はい、誕生日プレゼント!」


ニクスは袋を被せた細長いものを差し出す。

袋を取ると、中から現れたのは――


美しい水晶が先端に埋め込まれた、立派な魔法の杖だった。


嬉しすぎて、思わず涙が出そうになる。


続けてジーニアが渡してくれたのは、白いフード付きのマント。

これもすごく嬉しい。


こうして、俺の10歳の誕生日は幕を閉じた――

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