夜空に種を撒きましょう
「朝陽ちゃん、あのお客様とくっついた方がいいよ。もったいないよ~仲良くなった方いいよ」
(店長、正気ですか?)
「いや〜、彼女さんいますよ~多分」
「朝陽ちゃんは…あぁいう人はタイプじゃないのか、残念だな…」
(いや、何が?)
深夜のコンビニのレジ内の不毛な会話…。
クソ疲れるわ…。
店長様へ。私は人間の男には興味はありません。私が好きなのは、正義と仲間と愛と夢のために戦って姫を守れる男だよ。
「残念だな…、金持っていそうなのにな…」
(店の売り上げに貢献させる気だな…)
店長は、国家権力か?
なんだかんだと、店長とアホな会話をしている内にバイトの時間も終わり、裏から愛車のママチャリと一緒にコンビニ前に出て、…気付いた。
コンビニと隣のビルの壁の間に座ってお菓子を食べている永遠に。
咄嗟に出た言葉が、
「お疲れ様です。お先に失礼します」
そのまま行き過ぎようとした。
「朝陽ちゃん。ちょっと、待って」
(怖〜)
「なんなんですか?そんな所でお菓子食べて、ゴミ落とさないで下さいよ」
永遠はゴソゴソと壁間から出て来ると、後ろを振り返りゴミがないか確認してから、私の横に立った。
「朝陽ちゃん、飲み会断わったって本当なの?」
(情報…早いな…)
「はい」
「どうしてなの?」
(面倒臭…、行きたくないからだよ)
「…母が…、泊まりに来るんです」
「本当に?本当に?」
真剣な表情で畳み掛けるように見つめてくる瞳が、推しのロイド様に似ている。じゃあ、私は姫君かしら?
真剣に見つめてくる永遠には悪いけど、コンビニ袋の中のお菓子が気になる。
お菓子しか見えない。
真面目に働いてきてお腹が空いているから、永遠が何を言っていても、私はオアズケ中のワンコの気分になっている。もしも、ワンコを飼うことがあれば、私は絶対にオアズケをしない飼い主になる。
「聞いているの?朝陽ちゃん…」
「…はい?」
「朝陽ちゃん…それ、お菓子だから。話しかけているのは俺だから…。お菓子、食べる?」
すぐに食いつくのは、どうかと思った。
だけど、今は永遠が優しい救世主に見えて、精いっぱいに可愛く、俯きながら「うん」と。
永遠の頬がほんのりと紅く染って…。
こら!やめろ。それを見た私が動揺してしまったじゃないか…。




