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1,000円のじゃがりこ

作者: 昼月キオリ

1,000のじゃがりこ、それは期間限定で販売されるじゃがりこ。

じゃがいもを愛してやまない開発者達が作ったじゃがりこ。

じゃがいもを愛する人に向けて作ったパッケージが豪華版の商品なのだ。

と言っても中身はほとんど通常のじゃがりこなので、開発した本人達でさえ売れないだろうと思っている。

それなら何で作ったんだ・・・。

誰もが1,000円のじゃがりこなんて買うわけないだろと、作った本人達でさえ思っていたのだが・・・。

期間待たずして全て完売してしまったのだ。


最初に買った人。

"1,000円のじゃがりこ買ってしまった・・・中身がほとんど変わらないことは最初から知っている

でも、今まで新商品を全制覇してきたじゃがりこ好きな私としては買わない訳にはいかなかった・・・"

箱の蓋を開けると・・・そこに入っていたのはじゃがりこ、ではなくじゃがいもが一個。

トウコ「フッ・・・」

トウコは微笑した後、クレームの電話をする為に携帯を手に持った。

「待って待ってー!」

しかしその直後、背後から陽気な声が聞こえた。

"あり得ない、断じて、振り返りたくない切実に、

幽霊?"

「ねーねー」

"いやそんな訳あるかい、こんなポップなテンション高い幽霊聞いたことないわ"

私はその正体を確認すべくバッと勢いよく振り返った。

するとそこには・・・。

じゃがりこの箱の中にあったじゃがいもが今まさに箱の中から出ようとしているところだった。

目、鼻、口に加え手足まで生えている。

トウコ「最近残業で疲れてるんだ、早く寝よう」

「幻覚じゃないってばー!」

じゃがいもは手をバタバタとさせている。

箱から顔だけが半分出ている状態だ。

トウコ「じゃがいもが・・・そんな、あり得ない、こんな事が・・・ブツブツ」

じゃがいもは私の方をじっと見ている。

"悔しい、悔しいけど、なんか、なんかこのコ可愛い!?"

トウコ「あのー」

「なーに?」

トウコ「あなたは一体何者なの?」

"じゃがいもに何聞いてんだ私"

手足の生えたじゃがいもは箱からテーブルにぴょんっと着地する。

じゃがいもの妖精「僕はじゃがいもの妖精だよ!」

じゃがいもの妖精だよ、妖精だよ、だよ(エコー)。

"もうこの際どうにでもなれ!"

トウコ「えーと、それじゃあじゃがいもの妖精さん、どうしてまたそんなところに入っていたの?」

じゃがいもの妖精「んー、僕にもよく分かんない!」

"ダメだこりゃ"

トウコ「はー・・私はただじゃがりこが食べたかっただけなのに・・・」

トウコは顔を両手で覆った。

じゃがいもの妖精「じゃがりこならあるよ!」

じゃがいもの妖精はそう言って一本のじゃがりこを取り出した。

トウコ「え、さっきは入ってなかったのに・・まぁいっか、ありがとう」

私が食べるとまた一本じゃがりこを出してきた。

そうして何本か食べていると・・・。

トウコ「あれ、じゃがいもの妖精さん、さっきより体小さくなってない?」

じゃがいもの妖精「だって僕はじゃがいもだから、じゃがりこを作れるけどその分体はどんどん消えていくんだ」

トウコ「な、何てシビアな・・・じゃあじゃがりこはもういいよ作らなくて」

じゃがいもの妖精「えーでも、食べてくれないと僕腐っちゃうよ?」

トウコ「ですよね!!」

じゃがいもの妖精「でも、せっかく会えたんだから君とお話したいな!

少しの間でいいからさ!」

トウコ「え、うん、それはもちろん構わないけど・・・」

"じゃがいもと何を話せばいいのか"

じゃがいもの妖精「君の好きなものってなーに?」(ニッコニコー)

トウコ「じゃがりこだよ」

じゃがいもの妖精「え、ほんとに?わーい!やったぁ!!」

"あれ、ほんとに可愛いく見えてきたんだけど!?"

トウコ「じゃがりこの妖精さんは?」

じゃがいもの妖精「僕はじゃがいもが大好きな人に食べてもらうのが好き!」

トウコ「健気か・・・何この子めちゃいい子じゃん泣」

もうすでにじゃがいものペースにはまりまくっているトウコ。

じゃがいもの妖精「どーしたの?あ!ひょっとして何か悩み事?」

トウコ「え、悩み事っていうか・・・いや、悩み事はあるんだけど・・」

じゃがいもの妖精「僕で良ければ話聞くよ?僕じゃがいもだから言いふらす心配もないし、気を使う必要もないでしょ?」

トウコ「実は・・・」


・・・。

じゃがいもの妖精「ふんふん、なるほど、仕事でミスしちゃって落ち込んでたんだね」

トウコ「うん」

じゃがいもの妖精「僕はじゃがいもだから仕事のアドバイスはできないけど

ミスしてもちゃんと一日仕事して来たんだよね?」

トウコ「え?うん、そりゃまぁ・・・」

じゃがいもの妖精「それって凄いことだよ!僕なら泣いて帰っちゃうもん!」

トウコ「いや、うん、まぁ分かるけど・・・仕事してる以上そういう訳にはいかないよ」

じゃがいもの妖精「君は自分に厳しいね」

トウコ「厳しいというか人間の世界ではこれが当たり前だよ」

じゃがいもの妖精「そうかな?当たり前なことなんてこの世界に一つもないと思うけどなぁ

じゃがいもだって形が悪かったり成長が途中で止まった子達は廃棄されちゃうんだよ

じゃがいも=商品になれる訳じゃないんだ

だから人間も人間=できるっていうのは違うんじゃないかなぁ」

トウコ「た、確かにそう言われると・・・」

じゃがいもの妖精「君は今のままでも充分素敵だと僕は思うな!

毎朝ご飯食べて歯磨きして会社に行って帰って来て

お風呂に入って・・・僕にはそんな慌ただしい生活できないよ」

"え、じゃがいもの妖精めちゃ優しいんですけど・・・"

トウコ「う、う・・・ありがとうじゃがいもの妖精」

じゃがいもの妖精「大丈夫大丈夫!」


その後、ギリギリまでお喋りした後、泣きながらじゃがりこを食べたトウコ。

期間限定が無くなった後、私は通常のじゃがりこを買った。

"もうあのじゃがいもの妖精には会えないんだろうなぁ・・・しみじみ"


帰宅後、じゃがりこの蓋を開ける。

じゃがいもの妖精「やっほー!」

"めちゃくちゃ感動した・・・(泣)"

こうしてトウコとじゃがいもの妖精の不思議な共同生活が始まったのである。


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