和菓子を食べたらお茶が飲みたくなりました。
で?お茶飲んだ後はまた和菓子食べたくなるんだろ。
と言うと父は自分の目の前にあった胡麻ゆべしをひとつくれた。
ありがとーございまーす。慣れた手つきでフィルムを剥がし食品用のオブラートも気持ち千切ると待ちきれなくてひとくちでいった。
私は笑顔で食ってるらしい。父は呆れた顔をしてオブラート千切ってもダイエットにはならないぞと言う。
二服目を継ぐ父の手にだいぶ年寄りじみが増えた。
はぁ〜おとうの淹れた茶はうまいねー。
ふんっ。と鼻を鳴らし自分の湯呑みには何も足さずに父は炬燵から足を出す。
散歩?
ほっとけ!
お前も歩け!
70を超える父と中年娘の二人暮らしはなかなかに快適だった。こんな言い方はよくないが母が先でよかったな〜と洩らす。葬式のあれやこれやを父は何も言わずに進めてくれたし、ひとり娘の私はそもそも何も出来そうになかった。あまあまに育ったのだ。
母が残ったりしたらこんなに呑気にはいかなかっただろう。若い日の2人は熱々で子供の入る余地がなかった。私はここぞとばかりに父に頼りまくって足りなかったものを奪取している。子供の頃から習い事のオンパレードだった。お金をかけてもかけても私には何も熱くなれるものは見つからなかった。人並みだった。そして、両親はらぶらぶで私に甘く何やっても笑ってるばっかりだった。そんな父とやっと言いたいこと言って暮らせるようになったものだからこんな夫婦じみた空気なんだよなぁ‥
珈琲を淹れたら黒糖を舐めたくなりました。
カレーライスをひとくち食べたら出来が良かったので昼からビールを飲みました。
サーモンのカルパッチョが美味し過ぎて白ワインを買いに走りました。
和菓子を買ったのに緑茶どころかほうじ茶すらないだって!?
今日のおやつは上生なのに!?
仕方ないなあ、意外と合うんだぞ。
ドリップしてあげるか。
手のかかる娘に目を仙人みたく細めて。皺皺の手から熱い湯が糸のようにゆっくり降りていく。
マリアージュ‥って知ってる?おとうさん。
母が空に帰って10年。そろそろお互いに心の傷は薄くなった頃じゃないかな。
よいしょっと重い腰をあげてお茶碗を片付ける。
こんなに太ってしまったけど(きっとさみしくて)彼氏一応いますよ、おとうさん。
がらがら!と玄関の音。
父は紙袋を持っている。焼き芋だ。満面の笑みだ。
ごめんね、おとうさん、わたし幸せ太りだわ。
優しい男達に囲まれてきっと温かいマリアージュにしてみせる‥
ありがとうございます。
今日も元気です。皆様も暖かくお過ごしくださいね。