本当の恐怖を聞かせてあげよう
「ねえ、怖い話聞かせて!」
孫のかな子たちがせがむ。お盆の風物詩だ。
ったくやってられねえよな。そうだ。この町の現実でも語るか。
「じゃ、話するよ」
スイッチを消して懐中電灯の灯だけが灯る。
「昔、この国は1億2800万人もの人口がいました
ですが長年……少子化対策を放置して特殊出生率は1.3前後で推移したのです。
おかげで国民平均年齢は50歳、この県に至っては51歳と半分以上が50歳以上になったのです。
R村に至っては村民平均年齢が67歳となりました。
2008年には人口は1億2800万人に達しました。
2025年には人口は1億2300万人を切りました。
2040年には人口は1億人を切りました。
2060年には人口が8000万人を切りました。
2080年には人口が6000万人を切りました。
2100年には人口が4000万人を切りました。
2120年、孫のかな子が98歳になるときには人口が3200万人になります。
日本は実に100年間に1億人もの命をサイレントジェノサイドしたのです。
目先の利益、便利、どうでもいい電子ゲーム、過労死、ブラック企業……
そんなことで命や家庭をはぐくむという当たり前の行動が出来ず人口の約80%が消えました。
この期間の日本人は25%が未婚、35%離婚で約半分が家庭生活をまともに構築できません。人はますます結婚せず子供を作らなくなったので内需が減少しさらに貧乏になったのです。
失われた命は水子塔で供養することになりました。
供養塔では丑三つ時にこう聞こえるのです
――失われた未来を返せ!
子供たちは悲鳴をあげた。
確実に来るであろう自分の未来に対する破滅に恐怖するのだ。
R村の現実なんて、日本の現実なんてこんなもんだ。R村なんて高齢化で2040年頃に消滅するのだ。若者は生まれず残ったのは高齢者だけ。農業では食えず……少ない若い命も東京へ出てしまう。この村にあるまともな職業は公務員か教員か農協ぐらいだ。
「♪ピンポンパンポーン
コチラハ― 防災R村デース
熱中症に気を付けてください 夜間でも熱中症になります
ただいま……救急車出動がフルなので救急車の手配が困難です
このため……隣の人と助け合って病院に行ってください。自助・共助・公助の精神でお願いします
♪ピンポンパンポーン
……ブッ」
「えっ? ってことは」
「そうだよ、この村で今……病気やけがをしたら高確率で助からないぞ~!?」
この小説の執筆時から3年が経過したが一向に「恐怖」を感じて貰えない。とうとう2024年には特殊出生率1.2で出生人口は72万人に落ちた。このうち3万人が実に外国人技能実習生による出産で出産帰国になるので実は日本人だけだととっくに70万人切ってるのだ。なのに一向にこの事実の恐怖を実感してもらえない。実に残念である。このままでは医療崩壊を本気で迎える時が来る。その時ではもう遅いのだが残念だがこのホラーはいつ現実になるかでしかない。なお2025年3月に「2025年には人口は1億2500万人を切りました」の文章を「2025年には人口は1億2300万人を切りました」と文章を変えるほどの『ホラー』である。たった7年ですでにそこまで人口が減ったのだ。実に1年で千葉市1市分の人口減である。もう手遅れであろう。1億2354万人にまで落ちてしまったのである。




