1話
「そこの変な服の女、ここで何をしているっ!」
新しい登場人物は声のうるさいおっさん……お兄さんでした。
「黙ってないで答えたらどうだ?」
男が来てから周囲の野次馬はどこか安心したように去って行く人も増えたことから彼に人望はあったのかと内心驚いている。着ている服は何かの制服っぽいので警察官...いや衛兵なのかもしれない。
「そこの女、名を名乗れ!」
まあそんな私の思考を知るよしもない彼は無視されたと思って苛立っているようだが、名を名乗れと言われても私が教えて欲しいぐらいなのだが、
「おい、どこに行こうとしているっっ」
そろそろ面倒くさくなってきたし何よりここに来て記憶喪失とわかり30分いや15分も経ってないだろうに面倒事に巻き込まれることにいらいらしてきた。
このプライドの高そうなおっさんは無視して人の少ないところに行きたい。そういう訳で何歳かも分からない自分の体でダッシュして逃げる、特別速くも遅くもない気がする。
全力疾走だったし割と簡単に撒けた。(もしかしたら相手が本気で追いかけてないだけかもしれないが)
ようやく1人になれたので状況整理と今後について考えていこうと思う。まず、今の現状だが人の注目を散々集めた末に全力疾走で逃げ出すというあまりよろしくない状況といえるだろう。
そしてさっき気付いたことだがこの体はかなり若いらしい。全力疾走だったため多少の息切れはしているがすぐに、治ったしそれだけだ。自分の容姿が気になって来たので鏡か水面はないかと探してみる。探してみたが、ない。人のいない場所ということで逃げ込んだ路地裏にそんなものは当然ない。
最後に今後についてだが……前途多難という他ないだろう。
黒髪と言うだけでもかなり珍しい(もしくはいない)だろうに服も相当目立ってしまうらしい。ただこの世界にあった服を買おうにも残念ながら金はない、というか今の私の所持物はゼロだ。
ただ例えば金があったなどで服が手に入る状況だったとしても私は服を変えないだろう。服のせいで目立ってしまうのは辛いが記憶喪失になってから、この世界に来てからの私の人格を構成するものの1つに服があるのは確かだ。もしも記憶が人を型どるのだとしたらそれを失った私は人格がないも同然だ。ただこのように考えている自分がいる以上ほんの少しの時間それこそ20分ぐらいで新しい人格が形成されているのだろう。そんな新しい私を構成しているのはそこそこ長い黒髪と全力疾走したこの体とありきたりな筈の服、後は多少の記憶、そのくらいだ。そんな中の一つを失うのはリスクが高すぎる。
こんなご高説を垂れたところで現実にはお金がない知識もない人望もないだから服なんて買えるはずもないのだが
だからこのままこの生まれてきたばかりの私で楽しい楽しい異世界ライフを満喫しようと思う。
なんか続いてる 何の構成も考えてないからいつ終わるかも不明、続くのかも不明