間幕:前章「夢の狭間で」
間幕となっていますが、ちゃんとした本編の続きです。結構大事な所を入れてしまったので、読まないと次からの話が分かりずらくなると思います。
普通の人から見たら余りにも広すぎる俺一人の部屋。時刻はAM1:30。眠気は全くといっていいほど無い。ただ自分の息遣いだけが、この広すぎる空間に響いていた。
一人では広いベッドに俯せになっていた俺は、くるりと寝返りをうつ。目の前に広がったのは、高すぎる天井と窓から射し込む月明り、それと少しばかり視界に映る夜の闇だった。あぁ、つまらない......。
父と母は今日も家に居ない。昨日、...あぁ0時を過ぎたから一昨日になるのか、まぁいい。つまり、一昨日二人は会社の都合により海外へと旅立った。行き先はイタリア。珍しいと思った。
別に父さんと母さんが同じ所に行った事が珍しいというわけでは無い。事実、二人が仕事で一緒に海外に行くというのはいつもの事だ。俺が珍しいと思ったのは、そう行き先のイタリア。
いつもはアメリカとかオーストラリアばっか行ってたから、イタリアに行くと聞かされた時はかなり驚いた。多分だけど、俺の知っている限りでは父さんと母さんがイタリアに行くのは初めてだと思う(俺が生まれる前は、さすがに分からないけど)。
そういうわけで、今この広すぎる家に居るのは俺と数人の使用人、それと愛犬のフォッカ(ちなみに犬種はボルゾイで性別はオス)。フォッカは使用人にはおろか、父さんと母さんにさえ余り懐いていない。つまり、俺にばかり懐いているという訳だ。まぁ、悪い気はしない。
いつもなら、俺のベッドの下に有る毛布の上で寝ているんだけど、今日は居ないみたいだ。きっと、一階にある自分の寝床で寝ているんだろう。
言い忘れたが、俺のこの部屋は二階にある。父さんと母さんの部屋は一階。
何故だか知らないけど、俺の部屋だけが二階にある。同じ階に家族の部屋が無いのが寂しいとか思わないけど、静かすぎて退屈といえば退屈だ(何が退屈なのか自分でもわからないが...)。
別に人の声とかが恋しいって訳じゃない。高校生にもなった男子が、家族が居ないとつまらないとか気持ち悪すぎる。
風が窓を揺らした。
そういえば窓の立て付けが悪いんだった。明日にでも使用人の建さん(本名:田中 健之介-たなか けんのすけ-)にいっとかなきゃな。
時刻はAM2:00。ちょっとだけ、眠くなってきた。仰向けになっていた俺は、自分の体温で温くなったシーツから逃れる様に、また寝返りをうった。
目の前に広がったのはシーツと枕の海。あぁ、つまらない。長い間(と言って良いのか分からないけど)、ベッドで俯せになったり仰向けになったりを繰り返していた俺は、いつの間にか寝てしまった。
確かまぶたが閉じる前に見た時刻は、そう
2時48分......
(なんだ...?)
ふわりふわりとか、ぷかぷかとか口に出して表現したらそんな感じであろう浮遊感の中、俺はまぶたを持ち上げた。
(ここは、一体...。)
ぼやける俺の視界が最初に捕らえたのは、ミルク色。と言っても、牛乳みたいに白いって訳じゃないんだ。どう説明したら良いか分からないけど。
まぁとにかく、俺はそんな所に居る訳で...。見えるのはやっぱりミルク色(?)ばかりだった。上も下も右も左も、さらには自分が立っているのか寝ているのかもわからない、そんな世界に俺はいた。
なんとなく、本当になんとなく自分の右手を目の前にかざしてみた。あぁ、ちゃんと見えた。手を降ろす。今わかった。
最初俺はぼやける視界と言ったが、それはあっていて間違っているみたいだ。
なんだか視力の悪い人が世界を見てる、そんな感じ。
ちなみに俺の視力は両眼とも2.0。あぁ、今はそんなことどうでもいいか。
とにかく、上も下も右も左も、ましてや自分がおかれている状況さえ分からないのに動くのはバカのする事だと思って、俺はまたまぶたを閉じた。
今、あのぼやけたミルク色の世界は見えない。
間幕「夢の狭間で」どうでしたか?かなり久しぶりの更新です今回のはまだ前章なので続きます。いらない話ですが、「前章・後章」の2章に分けるか「前章・中章・後章」の3章に分けるか悩んでます。