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第1章:始まり(start)は夢(dream)とともに


「...っ......!!」


すべてが静寂に包まれた頃、高校三年生になったばかりの細之ささの 隼人はやとは、異様な息苦しさに目を覚ました。

ドク、ドクと心臓が早鐘をうち、体には大量の汗で濡れた大きめのシャツが張り付いている。

この異様な息苦しさは、夢によるものだったが、夢の内容なんか起きた瞬間忘れてしまった。なのに、隼人の体は得体の知れない恐怖に震えていた。


「はぁっ...はあっ...!」


肩で大きく息を吸い込み、何とか落ち着こうとするが、なかなかうまくはいかない。


数分後、何とか自分を落ち着かせた隼人は、先程まで自分が寝ていたベッドに崩れるように倒れこんだ。つい数分前の恐怖はいつの間にか消えていた。

ふと隼人は、少し離れた棚に置いてある時計に目をやった。


時計が表している時刻は午前3時17分。


隼人は、まだ自分が起きるには早過ぎると、再び眠りにつくためベッドに潜った。

やがて隼人を睡魔が襲う。睡魔による眠気で意識が朦朧とするなか、隼人は心の隅で思い願った。


またあの夢を見ませんようにと......。



次の日の朝。

隼人は坂道をのぼっていた。


隼人の通う高校は、鈴之瀬すずのせ高等学校といい、隼人の家から徒歩20分たらずのところにある。

この鈴之瀬高等学校、通称鈴高はエリート高校と言われており、そこに通う者はみな将来が約束されている者ばかりで、隼人もまたその一人だった。


隼人は、父は大手株式会社の社長、母は有名コーディネイターという両親の間に生まれた。そして父は、隼人に自分の跡を継がせようとしていた。

しかし、隼人は絶対にそれをよしとはしなかった。父の跡を継げば 、決して自由な生活をおくる事は出来ないだろうと考えていたし、仕事に縛られた人生になるのは嫌だったからだ。

何より隼人は自由が大好きだった。

そのため、普通の両親の間に生まれたかったと思うこともあった。別に、今の両親が嫌いというわけではない。むしろ、仕事ということを、つまり跡を継がせようとしている事を除けば、隼人にとってはいい両親だった。


「自由」


この言葉が隼人の憧れとなったのは、自分とは掛け離れた存在になったのは、いったい何時からだろうか。

ふと空を見上げると、数羽の鳥が気持ち良さそうに、何にかに縛られる事もなく羽ばたいていた。


(俺に...自由はあるのか?)


縛られる事のない、自由な鳥たちを見ていた隼人の脳裏をそんな言葉がよぎった。


(やめよう、こんな事を考えるのは。)


俺にだって自由は見付けられる。

そんな事を思い考えながら、隼人が坂道をのぼり終わった時だった。


「隼っち、おはよー!」


聞き慣れた、男にしては少し高めの声が、隼人の耳に響いた。

めんどくさいと思いつつも、親友でもあり自分の理解者でもある彼を、無視するのはいけないと、隼人は振り向いた。

すると、後からその声の主である同じクラスの城崎さねざき 奏汰かなたが、坂道を走って来る所だった。

隼人は足を止め奏汰が来るのを待った。


元々奏汰は小柄な体躯だが、体力は人一倍あるので、少しもすれば坂道をのぼりきり隼人の隣まできた。(ちなみに隼人の身長は176cm、奏汰は163cmである。それに、二人が並ぶと、身長差や体躯の違いは明らかであった。)

しかし、いくら体力のある奏汰とはいえ、100mもある坂道を全力疾走すれば息は切れるし、多少疲れもする。しばらくの間、奏汰は隼人の隣で息を整えていた。


「おいおい奏汰、大丈夫かよ。」


なるべく明るい声と表情で奏汰に話し掛ける。

実は、奏汰は隼人のちょっとした声のトーンの違いや表情などで、隼人の考えている事がわかってしまうという、なんともいえない特技を持っていた。

本人曰く、長年の付き合いから習得したとか。まぁ、こんな状態の隼人にとっては厄介極まりないだけなのだか。

幸い、気付かれはしなかったようだ。


奏汰は一言大丈夫だよっ!と言うと、待っていてくれた隼人を置いてそそくさと正門をくぐってしまった。


「あっ!こらっ、待っててやったのに置いてくなよ!!」


慌てる隼人。それに対し奏汰は、


「だって遅刻しそうなんだもんっ!」


などといい、下駄箱へと消えていった。

その後を追うように隼人も正門をくぐると、下駄箱へと走った。

その途中、つまり正門から下駄箱までの数十mに、隼人は見知らぬ男性教師とすれ違った。

自分とあまり身長の変わらない、細身な教師と......。


(あれ...?)


微かな違和感を感じた隼人は、その足を止めた。そして振り返る。

しかし、そこにはもう誰もおらず、四月の風に舞う、わずかな桜の淡い紅が舞っているだけだった。

第1章はどうでしたか?楽しんでいただけたのなら幸いです。この第1章はまだ続きますので、次回もよろしくお願いします。ちなみに、本文には出てきませんでしたが、隼人の髪はこげ茶で瞳は黒です。奏汰は髪が茶色で瞳は隼人と同じです。詳しいプロフィールは、多少重要人物が出て来てから載せますが、気になる場合はメッセージにプロフィールが知りたいと書き、お送り下さい。またその時に、どの様な事が知りたいかを書いて下さると、私としては嬉しいです。何人かからその様なメッセージが来ましたら、その時までに出ている人物だけは、登場人物プロフィールとして掲載させていただきます。長々と乱文失礼しました。

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