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聖母のおしおき ~賢者の母と石~  作者: きゅうどう のえ
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■ 旅から旅へ4 トゥモマクア


ゴーシュの街には日がとっぷり暮れて、人通りも少なくなった頃に到着した。


ゴーシュ領はオックチ町とは比べ物にならないほど発展した街並みだった。

街の入口は3メートルほどの大きい門があって、操縦者さんが通用手続きをしてくれた。

同じ高さの壁が街を囲っているって教えてもらったけど、なぜ囲っているのかは聞いても判らないとの返答だった。


入口から街の中心に通ってる長い大通りがあり、凹凸のないタイルが敷き詰められていて車内の揺れも殆どない。

店が並ぶ両端に広めの歩道と真ん中に畜車が余裕で離合できる広い道が設けられていて、この通りを見ただけでも街の良さが判るよ。

ここまで整備するには、それなりの財力が無いと出来ないだろうし、どんな資産があるんだろう。

農業・工業・畜産業・製造業、漁業はあり得ないし、あと観光業ぐらいしか思いつかないけど、街並みは観光で栄えてる風に見えないかな。

整備はされて実用的なだけだよね。


あぁ・・・こういう時、日本の科学が恋しくなる。

検索したら、あらゆる情報が瞬時に見れるなんて魔法に匹敵する力だよ。


横の席を見ると、ご夫婦は到着間近なので下車準備したりと落ち着きがない。


この夫婦は、テオルムさんとキュスミさん、タイジュオ国で温泉宿を経営していてるらしい。

今回はゴーシュに嫁いで出産した娘さんとお孫さんに逢う為タイジュオから10日以上かけて遠路はるばるやってきたのだそうだ。


初孫に逢うのが楽しみなのだと嬉しそうに話してくれた。


・・・質問、出来そうにないなぁ


他の人に色々聞く気にもなれずボーッと窓の外を見ていると、暫くして畜車が止まった。



停留所で客が降りると、二つの人影が近づいてきた。

それを見たご夫婦が驚いたような表情をして、キュスミさんが人影に向かって駆け出した。


「キャラ!もう!もう!来なくていいって言ったのにぃ」


言葉と行動は正反対で、奥さんは荷物を捨てる様に放ると人影に飛びついた。


「ママッ!」


抱き付かれたのは娘さんだ。


停留所で娘夫婦が赤ちゃんを抱えて両親を待っていたなんて、キュスミさん嬉しいだろうなぁ。

車内で早く逢いたいって期待顔で話してくれたもん。


キュスミさんは大喜びで赤ちゃんごと娘さんを抱擁してて、娘さんも嬉しそうで、そんな光景を見てるとこっちまで幸せな気分になる。


私は、親子が再会を喜び合っている姿を傍目に、同乗していた人達に軽く別れの挨拶をした。


・・・が!


「嬢ちゃん。俺らと別れたいのは判らんでもないけど、行き先は皆一緒だよ」


と、ガタイの良い30代くらいのおじさんは私の腕を掴んで離さないとばかりに引き摺る。


「えーっ。皆さんもオススメの宿屋に泊まるんですか!」


「一階が食事処だし、客にお勧めする分いろいろ融通がきくんですよ。人数分部屋は空いてるハズです。すぐそこですよ」


「ハァ・・・ソウデシタカ・・・」


操縦者さんの案内で私達一行は一路、宿泊所へチェックイン。

荷物を受付の人に渡して食堂に向かう。


なんか、集団でゾロゾロ行動するのって団体旅行客な状態じゃない?

色々不慣れだから、これはこれで楽で良いか・・・も?


食事処は、お酒が提供されるためか思った以上に客が居て、席が半分以上埋まってた。


私は、なぜか畜車の操縦者とガタイの良いおじさんと、まだ挨拶しか交わしたことの無いフードを被った大人しいお兄さんと一緒のテーブル


隣のテーブルは、感動の再会を果たしたキュスミさん達親子

そのまま別れるのが惜しかったのか、一緒に食事をしようという話になったみたいで楽しそうに一家団欒してた。


相反して、こちらの席は知らない者同士なので比較的静かだ。


「そういや、皆の呼び方聞いてねーな。因みに俺はレトンだ。流れの傭兵してる」


向かいに座ってるガタイの良いおじさんはレトンと名乗ると、操縦者さんに視線を向けた。


「畜車の操縦一筋のクダです。ご指名頂ければ馳せ参じますよ」


「リュス。あるものを探して旅の途中」


隣の席のフードの大人しいお兄さんは、そう名乗り小さく頭を下げると私を見た。


「キホです。自分探しの旅をしてます」


一応、にっこりと笑顔で会釈した。


「なにそれ、いき遅れの道楽貴族みたいじゃないか」


すかさずレトンさんがツッコんでくる。


「・・・実は何処かの国のお貴族様なんですか?」


タグさんは私の方に身を乗り出すと周囲を確認して声を潜めて聞いてきた。


なんか皆して私に興味持ちすぎじゃない?

なんで探し物して旅するのは良くて自分探しはダメなの?!

訝しげな視線に注目されると、ビビッてしまうよ。


「いや、そ、そうじゃなくて・・・記憶喪失なんです」


「・・・はぁぁ???」


「・・・きおく・・?」


「・・・・・」


思いもよらなかったであろう私の言葉に、3人はそれぞれ驚いていた。


「本当に?!」


「本当にっ!」


再度確認するほど戸惑ってるよ。

・・・余計な詮索するからダヨ

でも、こうやって、じっくりみると私を含め怪しい団体に見えるなぁ。


「しかし記憶を無くすなんて見掛けによらず、よっぽどの事があったんですね。早く記憶が戻ると良いですね」


もしもし?タグさん?優しそうな顔してひどいこと言ってるよ。

記憶喪失と見かけは関係ない気がするんですけど?

本当は・・・記憶喪失じゃないけど・・・


「記憶が戻る方が幸せか、そのまま別の人生を送るのが幸せか判らないけどな」


レトンさんとクダさんが、私の記憶喪失についてあーだこーだと意見を言い始める。


会話が生まれたことは良いけど、私の記憶喪失の話は掘り下げないでほしいよ。

だって、嘘だから嘘!

なんか私の為に言ってくれてるって思うと、申し訳なくなってきちゃうじゃん。


「・・・っで?どの程度の記憶喪失なの?」


あまりしゃべらないリュスさんまで記憶喪失について聞いてくる始末

しかもどの程度って記憶喪失に程度があるなんて知らないよぉ・・・


「程度って?」


「例えば、自分や血族の名前は覚えてたのか、日常生活で不便に感じた事があるかないかとか?」


「自分の名前がキホっていうのは覚えてるんだけど、本当に自分の名前か聞かれると断定はできないかな。日常生活だけなら不便はないけど、一般常識が欠如してる」


「・・・そっか・・」


リュスさんは、私の答えを聞いて考え込んだけど、嘘だからって気にしちゃ負けだ。

目の前に料理が並んだので、適当に現状に合った事を無難に答えて手を合わせて呟いた。


「美味しそう!いただきますっ」


出てきた食事はオススメなだけあって美味しかった!

トロッとしたお肉が口の中で溶けて、シュリさんの好物『ウマウマはさみ焼き』より好きかも

3人の会話を聞きながら美味しい食事を堪能した。



ダラダラと進まずすみません。

読んで頂き、感謝です(o*。_。)oペコッ


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