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聖母のおしおき ~賢者の母と石~  作者: きゅうどう のえ
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■ 旅から旅へ3 トゥモマクア


一人旅初日にして、天候は最悪だった。

オックチ町を畜車で出発して暫くするとポツポツと雨が降り出し、それは次第に激しくなっていった。

遠くでゴロゴロと雷らしき音もする。


「・・・でも恵の雨だから、感謝せな・・・」


「そうだな。でも、雨だと遠周りせなならん。遅くなっても今日の終点ゴーシュには到着させるからな。少々揺れる事もあるが堪えてくれよ」


雨の音に負けじと会話するから自然に大きな声になった車の操縦者とお客のおじさんの会話が聞こえてきた。


車を引いているのは水色の体毛とつぶらな瞳が可愛い熊さん、水ベアー4匹

雨が降り出した途端、グルグル咽を鳴らして足取りが早くなったのは雨に喜んでいるかららしい。

操縦者は今日雨が降るって予測してたらしく水に強い動物で車を引く様にしていたと聞いて流石プロだと感心しちゃった。


天候は最悪だったけど、相乗りした畜車の客は良い感じの人達ばかりで安心して旅を始められた。

客が6人までの小型車で私を含めて客は5人

中でも夫婦の方は私が初めて畜車を利用してると気を使って話しかけてくれた。

奥さんは恰幅が良くてヒョウ柄の耳と細長い尻尾を惜しげもなく晒していて触りたくて仕方ない。

だって、車の揺れに合わせたかの様にユラユラ揺れてて目がいっちゃうんだもん。


「昔は痩せてて私のボインボインなスタイルに多くの男がメロメロになったものよ」


「私が甘やかしすぎて、こんなに大きく育ってしまったよ・・・」


などと、他愛もない会話で道中は車内中が和やかな空気のまま過ぎて行った。




辺りが暗くなってきた頃、車窓からの景色が少し変わってきた。

今まで、山間の道は通れるというだけで、整備されている訳じゃないのでお尻が痛くなる程ガタガタと振動していたけれど、それも無くなってきて打ち付けられ続けて痛いお尻が、少し楽になった気がする。


「ゴーシュ領に入ったから、一安心だな」


操縦者と顔見知りのおじさんが、操縦者の肩にボンッと手をのせる。


「最近は物騒なんで雨で到着が遅くなると判った時は焦ったよ」


「あちこちの国で街道荒らしが出てるらしいな。野盗よりやり口が汚いらしいじゃないか」


物騒な内容の為か少し声を潜めて話始めるけど、興味津々の私は聞こえないフリして耳はおじさん二人に集中。

時々、聞き取り辛い所もあったけど要約すると半年前から各国々で旅の者を襲撃する事件が多発してる。

金品を奪う事はもちろん全ての者を殺した挙句、一か所に集めて焼くという奇妙且つ不気味な行いなのだそうだ。

遺体の区別がつかない程に燃やす行動から『業火の盗賊』と呼ばれているらしい。

先日、ガヴィアサ国とカオファクフ帝国の国境付近で業火の盗賊を捕縛するため巡回していた国境兵も同様に殺され焼かれたそうだ。


話に熱中しだしたおじさん二人は段々と声が大きくなって車内中の人がその話に聞き入っている。

例にもれず私はガッツリ最初から聞いてましたけど


「女は殺さないで何処かに連れ去られてるってきいたぜ。まっ、その後遊ばれて殺されてるかもしれねーけどな。死体を焼くのは誘拐がバレない為の隠蔽工作って話だぜ」


私の後ろの席に座ってたガタイの良い30歳くらいの男が腕組したまま下品な笑みを浮かべる。

そのまま私に視線を動かし


「嬢ちゃんは女にカウントされないから安心しな」


と余計な一言を吐いた。


「えーっ!どうみても女でしょ?!」


たしかにね、変な大きい帽子被って体型も判らない様な服着てるけど、性別不明な程、見た目が悪いとは思えないんだけど私の感覚が変なの?


「まっ。子供でも女には変わりないからな!気を付ける事に越したことはなかろう」


わっ!子ども扱いかよ!って思ったけど、「子供用の服でピッタリだったな」と言われたのが脳裏をかすめる。

ラキスだ!ラキスめっ!いくらピッタリでも子供服だと子ども扱いされるじゃん!!

私、もう26歳なんですけどー!

お金に余裕が出たら速攻で大人の服を買おう・・・


わははっ!と車内のあちこちで笑いが出て、その後は漂い始めていた陰湿な空気を払拭するかの様に明るい話題が続いた。


あのガタイの良い30代くらいのおじさんが、私を鋭い目で観察していたなど気付く事もなく畜車はゴーシュの街に向かうのだった。

読んで頂きありがとうございます。


キリの良い所で投稿したので短いです。

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