非日常から未知空間へ8
「これでよしっと」
私は立ち上がると車を撤去して本来の姿になった聖なる泉に柏手を打って深々と頭を下げる。
「お邪魔しました」
神聖な場所だってリペアさんが言ってたから、きちんと礼をした。
ここでのやり方なんて判らないし、私のやり方だけど良いよね。
要は気持ちが込もっていれば伝わるはず
私は、本日を以ってお世話になった聖なる泉から旅立つ
服もTシャツに薄手のパーカーにジーンズという動きやすい恰好に着替えたし準備は万端
今日はリペアさんと話をしてから二日目
昨日は一日中旅に出る準備に明け暮れて、疲れていつの間にか寝てしまってた。
リペアさんと話した直後から、旅に出る為の準備に取り掛かったから一日半も準備に時間を使ってしまったことになる。
あれからまず、ここを出る為の出口探しを開始。
『己の魔力で此処から出てみろ』って言ってたから、魔力を流し込む水晶の様なものが何処かにあると思ったけどそれらしい物は全く見当たらなくって、壁一面に不思議な模様があるって事はこの模様のどこかに仕掛けがあるって事になる。
うんざりしそうな作業だけど、やるしかないっ!ってことで壁を舐めるように見て回ると、僅かに模様が違う部分を発見、他の所より模様が複雑になってるこれが出口だと当たりをつけた。
次に魔力に慣れ、何とか扱えるように練習した。
あの時、体を巡っている様に感じた魔力は、暫くすると全く感じられなくなっていて踏ん張ってみたり右手をガン見してみたりしたけど、これが全然手応えがなくって途方に暮れてしまった。
精神統一かっ?!と座禅もどきの格好で休憩をしてた時、思い出したんだよね。
リペアさんの「魔法は魔力とその属性に適した想像で成り立つ」って言葉を!
そしたら簡単にコツを掴めた。
巡る魔力は赤血球に例えて血管をゆっくり巡回してると想像する。
魔力を集めたい場所に力を籠めて巡ってる赤血球を塞き止めて
溜まったら体外に押し出す様に排出させる。
こんな感じかな、慣れて車の運転みたいに自然に出来ればいいなぁ
だって、事も無げに魔法を使うのってカッコいいじゃない?
リペアさんが魔法を使う時って、本当に自然な動作で表情一つ変わらないんだよ。
目標は、あんな感じでスマートに魔法を扱うことだね。
ポーっとしてるって言われる事もあったけど、空想も妄想も得意で良かったよ。
そして最後に持って行く荷物の準備。
普通、旅行なら必要最小限の荷物とか思うけれど、全て持って行く!
今までなら無理でも今の私には出来るっ。
だってリペアさんから『次元庫』というものを授かったもん。
某アニメの四次元ポケットのポケットじゃないバーション!本当に優れモノ!
次元庫はその名の通り、異次元空間倉庫
異空間にある次元溜りっていう時の流れからはみ出た場所を見つけて固定して・・・と、リペアさんから長々と説明を聞かされたけれど・・・不思議世界にワクワクしすぎてオボエテナイ・・
次元溜り自体があまり無いし、作れる人も今はリペアさんだけらしい。
次元庫の存在自体、知っているのはカドリアーナの民のホンの数人だけらしいから超レアな物を頂いてしまったみたい。
容量が半端なく大きくて時間が止まってるから賞味期限を気にしなくて良いのが素晴らしい!
冷蔵庫以上の性能だよっ
そして次元庫を開いて話したらリペアさんにだけ声が届くっていうのも機能の一つで
なぜ届くの?って聞いたら『妾が作ったのだから当然じゃろ』って得意気にしてた。
リペアさんにだけ声が届くってことは糸電話の進化版って感じかな。
この万能な次元庫って、無くす事も人に貸すことも出来ないんだけど、それは次元庫を手に入れた経緯を考えると納得できた。
最初『次元庫のカギ』と言ってリペアさんから貰ったのはアーモンドみたいな実で「飲込め」と言われて驚いたけど、この実を体内に摂取することで次元と同調して空間の開閉が可能になるんだって、そして飲込んだ私は数人しか使えない次元庫使いになった。
超レアな物を使えるって特別感があってワクワクするっ。
車の中に有った物は、一旦車から全部出して一セットずつ仕分けをした。
すっかり忘れていた、母が無理矢理車に乗せていた緊急災害セットを見つけたのは収穫だったかな。
ある意味災害時の今こそ絶対役に立つよ。
ありがとうお母さん!
後は、キャリーケースに旅行セットを一式詰めて、人前で次元庫を使わなくても不便が無い様に工夫。
次元庫には、まず最初に車を入れ、残りは一つ一つ確認しながら収納した。
これだけの物を手ぶらで持ち歩けるなんて便利すぎるよ次元庫!
さすが知る人ぞ知るレア品!
我が家なんて家が小さいから楽に収納出来る気がする。
試せるものなら試したい。
私は便利でレアな次元庫に感激しつつ、ついでに車内にあったペットボトル計4本に聖なる泉の有難い水を汲んで、次元庫へ入れて、いざ出発!
見当を付けていた壁の模様の一部に右手を翳して魔力を右手に溜めて少しずつ放出した。
すると、水色の光が模様の線を伝って広がり発光し始める。
ここで正解だったと感動したのも束の間
私は、あまりの眩しさに目を開けていられず、閉じていても眩しくて顔を背けてしまう
一瞬で光が止み恐る恐る目を開けると・・・
そこは、森の中だった。
仕事が忙しく、投稿の期間が空いてしまいました。
読んで頂きありがとうございます。
とても嬉しいです♪