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聖母のおしおき ~賢者の母と石~  作者: きゅうどう のえ
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■非日常から未知空間へ6



カドリアーナ共和国は、建国時の協力者、その家族、並びに関係者で希望した者達が生活している。


人族、獣人族、精霊、エルフ、ドワーフと種族も様々だが、お互いを尊重し受け容れる事で、各々の棲み分けをし生活していた。


ロキルとティファンも空中大陸の中心に動力塔を建ると、大陸の管理や監視をしつつ普通の生活を送っていた。


120年程前、カドリアーナ共和国を離れキシュラ大陸の各国を視察していたロキルが赤子を連れて帰ってきた。


ロキル曰く、生後間もない赤子がキャザドミ国トゥモマクア王国カドリアーナ共和国の境界に位置する山林に、魔獣の類に襲われる事もなく全裸で落ちていたらしい。


留守を任されていたティファンが赤子を抱えたロキルを見るなり、隠し子と勘違いし憤慨したのは後の笑い話だ。


その後、ロキルは赤子を自分の養子及び後継者として迎え、イディンと名付けた。


イディンは養父のロキル養祖母にあたるティファンに愛され黒髪と黒い瞳、透ける様な白い肌の少年に成長していく。


基本的に原色の濃い色合いを持つ人族は魔力が強いとされ、どこの国でも研究材料として、はたまた貴族の忠実な下僕として手に入れたい存在である。

その点、黒髪と黒い瞳のイディンがカドリアーナ共和国に拾われて来たのは強運だったとしか云いようがない。


ただ、魔力が強い故の宿命からは如何に強運とて逃れることが出来なかった。

生まれながらに強い魔力を持つ者は短命。


成長途中で魔力の暴発を起こし身体が耐えられず死に至る。

普通、体内の魔力が飽和状態になると自己放出し、魔素に回帰するのだが、成長期になると飽和点が曖昧になり際限なく魔力を溜め込み暴発に繋がるのだ。


ロキルとティファンもそれを危惧し対策は考えていたが、二人の考察していた時期よりも早く、しかも目の届かない場所でイディンの暴発は起きた。



『ティー、ラキスといつもの森にいってきまーす』


齢十一歳のイディンは、いつもと変わらず元気に外出を告げた。

ラキスことミュラキスはドラゴンの血を引く少年でイディンと一番仲が良い。

近くにあるクジュの森でいつも遊んでいた。


『ディン。気を付けていってらっしゃい。ロキが帰ってくる日だから早めに帰ってきてね』


『ロキが?!じゃぁ、早く帰ってくるっ』


相変わらずの元気なイディンの姿にティファンは笑顔で見送った。

だが、イディンとティファンの会話は、それが最後になる。



早く帰宅したロキルが偶にはイディンを迎えに行こうと出掛けたが、程無くして慌ただしく動力塔に帰ってきた。

大切気にイディンを抱えた様子を見て状況を把握したティファンは涙を溜め、ぐったり目を閉じているイディンの頬を撫でた。


『最悪な状況になったのね・・・』


『ああ・・・聖なる泉へ行ってくる』


ロキルが聖なる泉へと姿を消した後、ティファンは入れ替わる様に訪れたミュラキスと父親バダクシャから事の次第を聞く事となる。


イディンと出掛けたミュラキスは森に入った所で成長期特有の魔力の暴発が起きてしまった。

とは言っても、人族では無いミュラキスの暴発は激しい震えと痙攣、そして一気に魔力の放出をすると虚脱感から眠りに落ちるだけだ。


しかし、側にいたイディンに異変が起きる。

一気に放出された魔力にあてられ、体内の魔力器官が魔力の枯渇を感じ周囲の魔素を吸収し始めた。

際限なく吸収される魔素は魔力へと変換され体内に蓄積されていく。

そして、まだ幼いイディンの身体はそれに耐えきれず倒れた。


『僕・・・し、しばらく出掛けたらダメだって・・言われてたのに・・・ごめんなさい・・・』


ミュラキスは号泣すると崩れる様に倒れ眠りの底に沈んだ。



一方、聖なる泉では、部屋の中央にある泉にイディンが寝かされていた。


『どれほどの時間がかかるか判らんぞ、十年百年・・・それ以上かもしれぬな』


長い髪を床に散し這わせた姿の少年がロキルを見る。


『俺もティファも覚悟している。リペア、イディンを頼む』


『最善を尽くそう・・・安心して妾に任せておくがいい』


リペアと呼ばれた少年は自信の身体を浮かせるとイディンの頭上へ移動した。



その後六十九年間イディンは聖なる泉で眠り続ける事となる。


イディンが目覚める二十二年前に、大賢者ロキルと聖母ティファンがカドリアーナ共和国から姿を消し消息不明。


その後彼が目覚めるまでの間、共和国の維持と大陸の管理はミュラキスが、後悔の念を胸に懸命に代理をしたのだった。


長い説明話ばかりになってしまってます。

今回も読んで頂き有難うございました。

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