プロローグ1
「こんな世界はもう嫌だ」
そう思ったのはいつからだっただろうか。
少し思い出してみよう。
ある平凡な家庭に1人の男の子が産まれた。
その子は生まれた直後こそ泣きはしたが、その後は何故か泣くことが少なかった。
両親は初め、ただ泣くことが少ないだけ、ただの個性の範疇だと思っていた。
しかし、そうではなかった。その子は生後1ヶ月のうちに意味のある言葉を話し始めた。
早熟と言うにはあまりにも早すぎる。
それを察した両親は少しの希望を込めて我が子に「会話」として話しかけた。
「真理は俺たちの言葉がわかるか?」
両親のその問いに対し真理…神無月真理は頷いた。
「おいおい…ほんとに分かってるよ」
両親の困惑の感情が表情に出ていた。
普通の親なら気味悪がってしまうだろう。
だがこの2人は違った。我が子を守るための最善を尽くすことにしたのだ。
「いいか真理、お前は言葉を理解しはじめるのが早すぎる。賢いお前なら理解しているかもしれないが、他の人が見たら異常に見えるだろう。もう少しだけ大きくなるまで話したりするのを我慢できるか?」
真理はすぐに頷いた。
ほっとする両親。そしてすぐに笑顔になって、
「お前は俺たちの可愛い子供だ。だからこそ絶対に、何があってもお前を守るからな」
そして17年が過ぎた。