札幌発
宜しくお願い致します。
風が吹く荒ぶ冬の札幌駅のプラットホームに僕はいた。
少し薄暗いホーム、金ボタンの外套は着た駅員。札幌駅のホームはどことなく旅情を感じさせる。
僕は適当に選んだ蟹の入った駅弁とペットポトルの緑茶を持って列車に乗った。
勿論、個室になど乗れる筈もなく開放B寝台だった。
今日は特に帰省ラッシュや連休などもなく新千歳も無事に動いているので人が殆どなく、四つの寝台を独占することができた。
荷物を置き、下段の寝台に横になってみる。そろそろ発車らしい、重そうな列車をディーゼルが引っ張って行く。暖房と外の寒暖差できた結露を拭き、窓の外を見る。ホームの端には撮り鉄や、見送りの方がいた。
札幌駅を出ると車掌さんが切符の確認に来た。上野まで、大変な仕事だなと思った。車掌さん曰くどうやら長万部から森駅にかけて警報が発令される程、吹雪いているらしく列車が遅れるかもしれないとのことだった。
そういえばと僕が何故、夜行列車に乗っているのかを思い出した。
一昨日、大学に入ってできた人生初めての彼女から切り出された別れ話がきっかけだった。僕は彼女が好きだった。彼女は同じ高校のクラスメイトで、僕は密かに好意を寄せていたがなかなか近づけなく、半ば諦めていた。しかし、大学の同じ総合文系でまさかのサークルも同じであった。彼女が同じ大学だっていうのは聞いていたが、サークルまで同じとは思わなかった。それから僕は気持ちの悪いサークルの先輩などから彼女を守り抜き、花火大会で告白し付き合ったのであった。それからの僕は幸せだった。しかし、幸せは長くは続かず、一昨日彼女から別れ話を切り出される始末に至ってしまったのだ。哀れだ。
昨日、今日と放心状態で何とか大学に通っていたのだが、札幌駅で帰りの家までの切符を買おうと思った時に何を考えたか、上野までの切符を買ってしまったのである。
明日締め切りの単位に関わるレポートがあったりするが、最早どうでもよかった。
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