夕焼けとシャボン玉
シイ君と出会ったのは小学生の頃
私が初恋を封印した日
夕暮れの公園で
私はぼんやりシャボン玉を飛ばしていた
公園には小さな砂場があり、遊具はそれだけ
小さくて人気がない、独りぼっちの私にはおあつらえ向きのスポットだ
シャボン玉を飛ばす
大きいシャボン玉は作りがいがあるけど時間もかかるし途中で壊れる
だから小さいシャボン玉をこれでもかと吹き飛ばす
シャボン玉シャボン玉シャボン玉
宵闇が迫りせっかくのシャボンの七色も輝きを失っていく
ああ、あの七色が好きなのにな
ぼんやり散りゆくシャボン玉を眺めてたらふいに声を掛けられた
「お前」
振り返ったら暗くなりかけの夕焼け
その夕焼けを背に立ってるから人影の様子がわからない
だからやっばりぼんやり眺めてたら
その人影が私くらいの背になった
なった気がした
なんてことはない、人影が私に近づいただけだった
男の子だった
だからどうだってわけはない
やっばりぼんやり眺めてたら
同い年くらいの男の子が急かすように、もう一度声を掛けた
「お前、名前」
「真理花」
真理花、真理花と繰り返す男の子
そんなに変わった名前かな
「貴方はなんていうの?」
男の子は睨んだ
嫌なんだろうか
人と話すのは慣れてないから良くわからない
「シャボン玉好きなのか」
会話になってない
男の子も会話が下手らしい
「うん」
なんとか繋げてみる
「シャボン玉って名前も好き。なんとなくシーって音も好き」
「俺もシイって名前」
「そうなの?」
「そうシイ…クロキシイ」
「黒木シイ?」
「そう」
なんとなくアホなやりとりだ
だからおかしくなって思わず笑った
そしたら男の子―――――シイ君も笑った
ああ
心の中でシャボン玉が弾けた
シイ君とシイ君を包む夕闇が七色に霞む
一目惚れだった




