ダンジョン攻略3
受験シーズンが終わったので投稿を再開させていただきます!!
ゴーレムとの死闘を繰り広げ、見事勝利を勝ち取り二階層へと足を運んだ勇馬は、現在…………
「あちぃ~……なんで、こんなところに溶岩地帯があるんだよ……」
目の前に広がる煮えたぎるマグマを眺めていた。
ゴーレム戦の後、魔力と体力を著しく消耗した勇馬は
回復に一週間を費やした。
その一週間の間に有効的な攻撃手段とみたグレネードの『創造』
や再生魔法の修練も同時に行えたので、本人としては
悪くない一週間だったと言える。
一週間が過ぎ、完全回復を果たして、二回層にいざ参らんと意気込んでいたが、
「病み上がりにここはきついぜ……」
ご覧の有様である。
二階層は一階層とは全く異なり、まるで火山の中のような場所だった。灼熱の中で行動しているので体力は勿論のこと精神的にも相当きている。もちろん、魔物も炎に特化した魔物だらけで…………
「ボアアアァァァ!!」
(インフェルノ)火属性上級魔法。広範囲に渡り灼熱の業火で焼き尽くす魔法。
「グラァ!」
(ボルケーノ)火属性上級魔法。(インフェルノ)とは違い、対象とした場所にしか効果がないがその威力は(インフェルノ)の上を
悠々と越える。
「いや、だからあちいよ!!」
勇馬は二つの上級魔法を『身体強化』がレベルアップして新たに獲得した『身体強化Ⅱ』の(ハイパーフィジカルブースト)を使い避ける。おそらく、ゴーレム戦で多用したことによりレベルアップに至ったのだろう。
「『創造』ロングソード!」
そして、やはりいつもの愛剣であるロングソードで応戦する。
これで何度目だろうか……
この階層の魔物はこの様に、火属性魔法ばかりを使ってくる。
初級、中級魔法だったらそこまで脅威ではないが、そんなに甘い魔物はこの階層にはいない。出会う魔物は皆、上級魔法を扱うのだ。流石の勇馬も苦戦を余儀なくされていた。
一階層と二階層ではレベルが格段に違う。
一階層では上級魔法を使うのは忌々しきフェンリルとボスである
ギガントゴーレムのみだった事に対し、二階層は今の所、全ての魔物が上級魔法を使ってくる。
何回もいうが上級魔法はそう易々と使えるものではない。
この事実だけで魔物達の強さがとくと伺える。
いずれ、超級魔法を扱う魔物が出て来ても不思議ではない。
ましてや、それさえも超える魔物がでてきても……
(勘弁してくれよ……)
勇馬はこの先のことを考えるとどっと肩が重くなった。
一階層で修業したにも関わらずいきなりこの様な苦戦の連続を
強いられているのだから無理もないだろう。
試しに『千里眼』で今、対峙している魔物のステータスを見てみると……
(ボルカニックボア)レベル400
筋力…………200000
敏捷…………450000
耐久…………300000
魔力…………400000
スキル
『灼熱』
火属性魔法上級が使える
『耐熱』
火属性に対する絶大な補正
『高熱』
火属性魔法の威力を倍増
(アグナムート)レベル450
筋力…………400000
敏捷…………300000
耐久…………200000
魔力…………500000
スキル
『灼熱』
火属性上級魔法が使える
『耐熱』
火属性に対する絶大な補正
『高熱』
火属性魔法の威力を倍増
『精霊の寵愛(火)』
火属性魔法の消費魔力を激減
という何とも素晴らしいステータスだった。
どちらの魔物もこの溶岩地帯に見合ったスキルを兼ね備えており、本来の力以上の力を、発揮しているのだろう。
実に厄介極まりないものだ……
その上、この階層にきて勇馬は自分の弱点が明白に分かってしまった。
「ちっ!」
相手は遠距離から様々な火属性魔法を使ってくるが勇馬は遠距離攻撃を兼ね備えていないのだ。
一応、消失魔法で遠距離戦でも戦えるようにみえるが魔力が底を付くのが目に見えている…………
だからといって距離を詰めて接近戦に持ち込もうとすると、魔物達はそうはさせまいと溶岩の中に身を潜めてしまうのだ。
「お前ら正々堂々って言葉知らねえのか!?」
「ボア!」
まるで勇馬の声に返答するように声をあげる魔物に勇馬の額にはビキリと青筋が現れる。
『我はかの者を滅する 理を名の下に切り裂き その身に刻め(断絶)!!』
「グル!?」
アグナムートの隣にいたボルカニックボアが(断絶)により命を刈り取られる。
「しまった、イラついてつい使っちまった」
たかが魔物ごときに煽られたくらいで消失魔法を使ってしまったお茶目な勇馬さんは少し反省をする。
しかし、事態を把握したアグナムートは……
「グルフ」
あの程度でこんな事するとか単細胞にもほどがあるぞ? とでも言いたげな表情と声で勇馬さんを更に煽る。
ブチっ!!
おや、何かが切れましたね。
あっ、何やら『創造』を使いだしました。
あっ、どうやらあれはグレネードのようです。
あっ、『創造』が止まりません。
「グルッ!?」
アグナムート達が逃走態勢に入りました。勇馬さんも投擲態勢に入りました。物凄く目が血走っております。
「この野郎ぶっ○ろしてやる!」
「グルゥゥゥゥ!?」
勇馬は辺り一面にありったけのグレネードをばらまきだした。
「グル!?」
「爆殺」
「グ、グル!?」
「爆殺爆殺爆殺」
「グ、グルゥゥ!?」
「爆殺爆殺爆殺爆殺爆殺爆殺爆殺爆殺じゃあぁぁぁーー!!」
もうやめてあげて彼、(アグナムート)のライフはもうゼロよ!!
という王道なツッコミが似合うほどアグナムートは
爆撃を喰らった。
「オラオラオラオラオラオラァァァー!」
ラストはオラオララッシュまで決めてしまった勇馬さん……
そこにはすでにアグナムートの姿はなかった。
「はぁはぁ……」
全力の『創造』で魔力切れになりそうな勇馬は
ゆっくりと辺りを見渡す。
亀裂が走り、溶岩が吹き出している壁。
今にも崩壊しそうな床。
怯えた目でこちらを見てくる魔物達……?
「俺…………なにしてんだ……」
頭に血が上ったとはいえ、いざ葛藤してみると
自分でも、これはないわ~と思ってしまう。
「俺は疲れてるんだ。寝よう」
勇馬は二階層に作った拠点(『創造』で作成したテント)
にとぼとぼと足を運んだ。
「はぁー、疲れた」
拠点に戻った後、勇馬は万能魔法である『創造』で生み出したお茶と和菓子の代表である団子を口に入れながら今日の戦いを振り返る。
遠距離からの魔法に完全に弄ばれる姿。
溶岩に隠れられ、思うように手が出せない姿。
グレネードを投げ散らす自分の姿。……クソっ。
「どれも、苦戦ばかりじゃねぇか……」
思い出すのはいずれも不甲斐ない戦いばかりだ。
やはり、致命的弱点である遠距離戦をどうにかしなければ
この先必ず躓くと悟る勇馬。
「しゃあねぇか……」
苦渋の思考の故に勇馬は決断した。
翌日。
今日も魔物狩りをすると思われた勇馬は階段へと歩いた。
一階層への階段に。
(俺にはまだこの階層の魔物は荷が重い)
身体を仰け反らせ、大きく息を吸い込む勇馬
。
「待ってやがれ!!二階層!!」
そう、吠えた後、勇馬は一階層へと姿を消した……
一階層に上った勇馬は素早く拠点を作り、
前々から思っていたある物を『創造』で創りだそうとした……
「違う。違う。違う。違う……」
それから一週間。
試行錯誤を重ね、来る日も来る日もひたすら『創造』をしてついに勇馬はこの世界に新たな兵器を生み出した。
それは……
「くっくっく……遂に完成したぜ!!俺の努力の結晶、魔力銃!!」
己の魔力を弾丸として打ち出す銃……魔力銃。
純粋な魔力の塊を敵に向かって飛ばすのだから、
魔力量の多い勇馬にとっては最適な武器だ。
「長かった。実に長かった……」
若干、涙腺を綻ばせながら勇馬は呟く。
無理も無いだろう。時間の感覚を失うほど、『創造』に
没頭していたのだから……
ここに至る経緯を説明すると、
勇馬は最初、ごく普通の銃を創ろうとした。『創造』は便利ではあるが、具体的なイメージを持たないと作ることは出来ないのでそれほどに苦労した。
しかし、それ程時間をかけずとも作成には成功した。
だが、ここからが問題だった……試しに一階層の魔物に銃を撃ってみると、
ペシ。
という効果音が最も似合うほどノーダメージだった。
「グルルゥ!」
何事も無かったかのように魔物は勇馬に立ち向かってくる。
「てめぇ、ふざけんなよ!」
自分の努力が無に帰したのを目の当たりにした勇馬は
取り敢えず八つ当たりとして消失魔法をぶっ放しておいた。
そこからの勇馬は凄まじかった。
まず、根本的に銃の作りを変えようとした。
そして、自分の最大の持ち味を見直した結果、
「魔力使えばよくね?」
という考えに行き着き、自分の膨大な魔力を生かせるような武器を作成しようと試みた。
だが、
「…………何をイメージしたらいいんだ…………?」
豊富なラノベ知識を持つ勇馬さんでも、具体的なイメージを持つことが出来なかった。
無理矢理、形にしようと創造しても途中で魔力が分散してしまい
中々、形どることができない……
「……やってやろうじゃねぇか!」
勇馬はオタク魂を久々に燃やした。
燃やして、燃やして、燃やし尽くした。
洞窟の中で「こうか?……くっ!……おらぁ!」などとぶつぶつ、つぶやく勇馬には、魔物は近寄ってこなかった。
それどころか、「この子、痛い子だなぁ……」という眼差しを向けてくる始末だ。
この時の勇馬をもし、見ていたものがいたらきっとドン引きするだろう……いや、必ずする。ていうか魔物が既にしている……
とまあ、そんなことはお構いなしの勇馬さんは作業に集中した。
何度も何度も失敗し、何度も何度も魔力切れに陥るほど勇馬は創造を繰り返した。
そして、その時は来た。
「やっ、やっとできたぞ!自慢の逸品。これぞ魔力銃だ!!」
この世界に、凶悪な兵器を産み落とした瞬間だった。
魔力を弾丸として打ち出す銃。その威力は折り紙付きだ。
試しうちのため適当な魔物に撃ち込もうと洞窟内を探索すると……
「グルゥゥ」
前回、ペシッという音で終わったあいつと同じ種族の魔物
(シャークスペンダー)に出会った。
「じゃあ早速」
ドバン! 炸裂音が洞窟内に響いた後、魔物の体は弾け飛んだ。
「ゑ?」
今使ったのは少量の魔力。それで、この威力。
まだまだ魔力を消費することで威力や弾速を上げることも可能なので兵器の名にこれ以上相応しい物はないと勇馬は苦笑いしながら思った。
「えぇぇっと……戻りますか」
二階層に再挑戦する勇馬であった。
ダンジョン攻略、まだまだ続くよ!