3年Aクラス
投稿を長い間、休んでしまいすみません。
これからは、もっと頑張ります。
この世界に来てから1か月が過ぎた。
流石に、もう動揺している生徒はいないようだ。
それどころか…………
「おらおらおらあー!どうした!!もう終わりか!」
「ははは。それぐらいにしといてやれよ悪童。
魔物が可愛そうだろ」
「ギャハハハ。確かにな!さて、そろそろ帰るか」
「おう!」
魔物を殺すことにさほど、抵抗が無くなったようだ。
それは、樋口達だけに限らず……
「よっしゃー!また、レベル上がったぜー!」
「みよ!俺の剣さばきを!」
「私の魔法を食らいなさい!!」
全員がこの世界に馴染んできたようだ。
力も当初とは比べ物にならないほどついている。
しかし、それにしてもこのクラスは連携が非常にできている。その理由は……
「よし、皆いるな!女神様の元に帰還するぞ!」
「皆、行きましょう!」
宮城と乱崎という二人の中心人物がいるからだろう。
この二人の的確な指示があるかぎりこのクラスは安泰だ。
「おいおい、宮城~。お前のステータス見せてくんね?
そろそろ俺が超えててもおかしくねぇだろ?」
樋口は笑みを浮かべながら宮城に話しかける。
「ふん。海翔があんたみたいな奴に負けるわけないでしょ?
当然、私にもね」
「んだと乱崎!お前のも見せろよ!!」
樋口が二人のプレートをひったくる。
「へへ、さて、どんなものか……な!?」
樋口が絶句したのも無理はないだろう。
何故なら、樋口は想像したものを遥かに超えていた光景を
目の当たりにしたからだ。
(宮城海翔)レベル50
天職…………勇者
筋力…………15000
敏捷…………12000
耐久…………10000
魔力…………15000
スキル
『光撃』
光属性上級魔法が使える。
『疾走』
高速移動ができる。
『精霊に愛されし者』
全属性耐性がつく。
『選ばれし者』
聖剣カリバーンが使える。
『限界を超えし者』
一定時間力が倍になる。
『剣士』
中級剣技を扱える。
(乱崎桜)レベル50
天職…………賢者
筋力…………3000
敏捷…………7000
耐久…………6000
魔力…………20000
スキル
『賢者』
全属性中級魔法が使える。
『全知全能』
相手のステータスを瞬時に把握できる。
『詠唱破棄』
魔法を使用する際、詠唱がいらない。
『魔力回復』
魔力の回復が格段に上昇。
『魔法耐性』
魔法に対する絶大な補正。
「嘘だろ……」
その場にへたり込む樋口。
余りのステータスに樋口は力が抜けてしまった。
彼の手からステータスプレートが滑り落ちる。
その瞬間を見逃さずクラスのお調子者代表、阿部田優吾が樋口のステータスプレートを見る。
(樋口悪童)レベル40
転職…………盗賊
筋力…………5000
敏捷…………2000
耐久…………2000
魔力…………2000
スキル
『風遁』
風属性中級魔法が使える。
『強奪』
相手のアイテムを盗みやすくなる。
『ならず者』
鈍器を使う際、筋力アップ。
『鈍器使い』
初級棍技を扱える。
「落ち込むなって樋口!俺たちもお前と同じくらいだぞ。
だいたい、あの二人と比べたら虚しくなるだけだ!
俺は胸を張ってそう断言できる!!」
「悔しいが、それは同感だ」
「私も~」
「へっ、しょうがねぇよ」
皆、矢継ぎ早に言い出す。
周りの連中の態度から察せられるように、
宮城と乱崎はそれほどまでに規格外なのだろう。
だが、納得の出来ない者がどうやらいるようだ。
「うるせえ!俺はトップになりたいんだよ!!
お前らと一緒にするな!!」
殺風景な草原に怒号が鳴り響く。
「ちっ、先に帰るぞお前ら」
「ちょっと待てよ悪童」
「おいてくなって」
樋口の取り巻き達が慌てて暴君を追いかける。
「なんだよあいつ」
「いいって、ほっとこうぜ」
周りはあきれながら、女神バレンティーナの宮殿へと足を向けた。
「女神様、只今帰還しました」
「あらあら皆さんお帰りなさい。訓練お疲れ様です。
樋口さん達が先に帰ってきたので心配したんですよ?」
バレンティーナはうっすらほくそ笑んで宮城に告げる。
「申し訳ありません女神様。クラスのリーダーとして後に樋口達には言っておきます」
宮城は苦虫を噛んだような顔をする。
よっぽど責任感が強いのだろう。
「ふふ。海翔さんはいつもしっかりしていて頼もしい限りです。
これからも期待していますよ?」
「女神様にそう言ってもらえると光栄です。では、皆疲れているので部屋に戻ります」
「は~い。ゆっくり休んで下さいね」
クラスの皆は各々の部屋に戻っていく。
「あっ、海翔さん桜さん、戻る前に少し私についてきてください」
部屋にもどろうとしていた宮城と乱崎を呼び止めるバレンティーナ。
「どうしたんですか女神様?」
何故、自分達だけ引き留めたのか疑問に思う宮城と乱崎。
「宮城さんと乱崎さんはこの集団の中で群を抜いて強いです。
そんなあなた達に渡したい物があるのです」
バレンティーナはいつもと変わらぬ笑みを浮かべる。
そして、彼女は手招きをして、宮殿の奥へと消えていった。
慌てて二人はバレンティーナの後を追った。
「警備お疲れ様です、ヴァルキュリアさん」
「とんでもありませんバレンティーナ様。私めにその様なお言葉……」
「ふふ。さあ二人とも中に」
二人はバレンティーナのややしゃれた部屋に入る。
「二人共ちょ~と待ってて下さいね」
「あっ、はい」
バレンティーナは部屋の奥に姿を消す。
「桜、俺たち日本に戻れるのかな……」
海翔がポツリと呟く。
「なに弱気になってるのよ。さっさと魔王なんか倒して日本に帰るわよ。そして、また平和に暮らしましょう」
乱崎は、宮城に向けて呆れた眼差しをむける。
「桜はこの世界が嫌いか?皆は日本なんかに戻りたくないって言ってるぞ?」
豪華そうな椅子に腰掛けながら、宮城は問う。
乱崎は、またなかば呆れたような目で、
「当り前よ。私は普通に暮らしたいわ。海翔とね」
「あはは。それが聞けて安心したよ。俺も日本に帰りたい。だから、それまでは死ねないな」
「ちゃんと私を守ってね。海翔」
「もちろんだ、桜」
自然と二人の距離が縮まる。
そして、そのままゆっくりと顔が近づいていき……
「お待たせしました二人とも」
背後からの突然の声に思わず声をあげそうになるのを必死に
留めようとする二人。
「あっ!はい女神様」
「何をしてたんですか?」
慌てて体勢を立て直す二人。
「いえ、べ、別に」
驚きの余り心臓が跳ね上がり、口調がやや早くなる宮城。
「あらあら、もしかするとお邪魔だったかしら?」
「と、とんでもありません」
「え、ええ」
「ふふ。では、お二人にこれを」
二人の慌てぶりに微笑みを返すバレンティーナが何かを二人に手渡す。
「女神様、これは?」
「海翔さんに渡したものは『聖剣カリバーン』。桜さんのは『魔杖フェルニル』。この世にもう作れる鍛冶師はいない古代の武器。消失武器です。我が国イルミナの国宝なので大切に使って下さい」
「こんなすごいもの……ありがとうございます!」
「これからも、お互いに切磋琢磨して頑張るわ」
「ふふ。喜んでいただいいて幸いでした。では部屋に戻っていいですよ」
新たな武器を手にし、胸を膨らませる二人。
本当は子供のようにはしゃぎたいが、その気持ちを自制する。
「はい、おやすみなさい女神様」
「はい、明日も頑張りましょう」
二人は貰った武器を大切に胸に抱えその場を去った。
その夜……
「ふ~う。ガキを相手にするのも中々、骨が折れるわね」
「お疲れ様ですバレンティーナ様」
なにやら怪しげな会話が起きていた。
「ヴァルキュリア、そろそろ次のステップに行きましょうか」
「では、あの部隊を呼びますか」
「ええ、お願いするわ。ああ、それとあの二人はちょっと危険な気がするわ」
「海翔と桜ですか?」
「その通りよ。あの二人は近いうちに私の計画に気付くわ。必ず……」
バレンティーナはやや嬉しそうに話す。
自分の計画がばれるかも知れないというのに、嬉しそうな顔をしているバレンティーナに疑問を抱くヴァルキュリア。
「では、今のうちに……」
「それは面白くないわ。今はまだ監視だけでいいの」
部屋の中に月光が透き通る。ふぅー、というため息と共に
会話が再開された。
「私はね、あの二人が気付いた瞬間の絶望した顔が見たいの。そして、あの無能のようにあそこに飛ばしてこう言うの。「お疲れ様」って……ふふ」
そこには、もう女神の面影は無かった。
ただ、邪悪な笑みを浮かべる何かとその横に立ちづむ無表情の機械がいるだけだった。
「あぁー楽しみだわ、あの子達を私の奴隷にする日が……」
その言葉を最後に悪魔の談笑は耳の奥へと消えていった。
残ったのは限りないほど美しく、透き通った月光が地上を照らす姿だけだった……
しかし、バレンティーナ及び、ヴァルキュリアは夢にも思わないだろう……いや、その二人だけではない。彼のクラスメイト達だって思わないはずだ。無能と呼ばれた男がまだ生きているなんて、そして世界最強の男にのし上がろうとしているなんて…………
「さ~て、体力も回復したことだし探索再開と行きますか」
次回から本編に戻ります。