ダンジョン攻略2
今回でゴーレム戦は終了です。
ゴーレムの周りに煙が立ち込める中、ギギィという音が洞窟内に不気味に響き渡る。
「はぁーまだ続くのかよ……」
今まさに、復活しようとしているゴーレムの余りのしぶとさに思わずため息をつく勇馬。
これほどの接戦はフェンリルの時以来なので勇馬にもやや、
疲れが見え始めた。
そして煙がはれ、視界がクリアになると同時にゴーレムの姿があらわになっていく。
「!?」
勇馬はもう、この洞窟にきて何度目かというほど顔に浮かべてきた驚愕を禁じ得なかった。
ゴーレムの姿を見て……
そう、ゴーレムは完全に修復されていた……
いや、修復とは違う。確かにゴーレムの姿を取り戻してはいるが、もはやあの巨人のような面影はなく人間程度の大きさのゴーレムに生まれ変わっていた。
「お前は変身ロボか!?こんな所にいないで世界の子供達に夢と希望を届けてやれよ!?」
先ほどの姿と似て似つかないゴーレムに対して思わず謎のツッコミを入れてしまった。
そして、ツッコミを入れながらも勇馬さんは変身を遂げたばかりのゴーレムなどお構い無しに先制攻撃を仕掛けた。
「おらぁぁぁぁ!!『至高なる力をこの身に宿せ』(フィジカルブースト)吹き飛べぇぇぇぇ!!」
効果が切れていた『身体強化』を再び使い、勇馬は、ゴォウ!と唸る渾身の右ストレートを放った。
しかし、
「ゴガァァァァ!」
「ぐぅ!」
ゴーレムにはやはり通用せず、逆に軽くなぎはらわれてしまった。
「くっ、やっぱこいつ硬ぇ……よし!また、グレネードを作るか」
勇馬は先ほど、有効と分かったグレネードをもう一度、作成
しようと試みた。
だが、
「なにっ!?」
勇馬の手のひらから魔力が霧散した。
それも当然だろう。勇馬がグレネードを作成出来たのは一種の奇跡だったのだから……
本来、『創造』は簡単な物でも創り出すのは容易ではない。極めて高度な魔力操作に加え、明白なイメージを必要とするスキルなのだ。よってグレネードなどという精密な武器を創れるほど勇馬はまだ『創造』を使いこなせてはいないので、この結果は当然なのだ。そして、悪夢は続く。
「ゴガァァァ!」
「なっ、はや…い!!」
勇馬の魔力が霧散したのを好機と見たのか、
先ほどとは比べ物にならないほどの速さでゴーレムが距離を詰めてくる。
「くっ!」
とっさの判断でシンプルな盾を『創造』により創るが、
直撃は防げるものの、衝撃は勇馬の身体にひしひしと伝わってくる。
その勢いにのり勇馬の身体は容易く、宙に浮きそのまま岩壁へとはじき飛ばされた。
「…くそ、なんだ、この速さは……」
今もなお高速で移動するゴーレムを尻目に見て、その余りの変貌に困惑する勇馬は『千里眼』を使い、ゴーレムの状態を調べた。
(ギガントゴーレム)レベル500 『モード01』発動中
筋力…………500000(-100000)
敏捷…………50000(+200000)
耐久…………500000(+-0)
魔力…………100000
スキル
『超硬質化』
耐久に+100000の補正。
『モード01』
耐久、筋力が減少する代わりに敏捷に極大の補正がつく。
『鉄壁』
魔法によるダメージを大幅に減らす。
『土神』
土の属性魔法が使え、威力が倍増する。
「なるほどな……」
『千里眼』を使うことによって、勇馬はこの異常なまでのゴーレムの速さの原因を見つけた。
どうやらゴーレムのスキル『モード01』が発動したことにより
敏捷が著しく上がったようだ。
「くそ、まだ脳筋のほうがやりやすかったのに……」
敏捷が上がったことによって、より凶悪になったゴーレムに
舌打ちをする。それを見かけたゴーレムは、感情など無いはずだが、まるで勝ち誇った笑みをしたように見えた。
「なめやがって!」
頭に血が上る勇馬だがやはりゴーレムのほうが早いか。
地割れを起こすほどの勢いで巨大な両手がふり下ろされると同時に地面が揺れ始めた。
その揺れは次第に激しさを増し地面が波打つほどにまでなった。
「くっ、なんなんだこれは!?」
勇馬は、不安定な足場を前に体勢を保つので必死だった。
しかし、その努力も虚しく勇馬はついに波に打たれて天井まで吹き飛ばされた。
(アースクエイク)土属性上級魔法。津波のような波を地面で発生
させ相手を吹き飛ばす魔法だ。
「はぁはぁ……やっぱ魔法は厄介だな」
衝突した衝撃で、額が割れ血があふれ出てきた。
だが、ゴーレムの手は止まらない。
「くっ、また波が!!」
勇馬は回避しようとしたが、さっきのダメージで身体が
思うように動かない。
「がはぁ!」
迫り来る波に為すすべもなく吹き飛ばされてしまった。
激痛に身体を支配され勇馬の意識が今にも堕ちそうになる。
これは、まずい!!
勇馬は魔力を消費して初めてこの魔法を使った。
『時よ遡れ(再生)』
勇馬の身体を淡い光が包み込む。
そして、瞬く間に身体の傷は癒え、傷みも引いていった。
「この魔法……やばいな……」
さすがは女神の秘技といったところか。魔力を大量に消費しても
圧倒的にメリットの方が大きい。これから重宝しようと勇馬は心に決めた。
「さて、これからどうするか」
依然としてゴーレムの魔法は続いている。いずれ、先ほどのように吹きとばされるだろう。そうなる前に対処しなければならない。
「『創造』ロングソード」
勇馬は一本の剣を作り出した。最初に斬りかかって折られてしまった物と同じ物を。
「どうせ、このままだとじり貧だ」
勇馬は剣を高々と掲げ、言葉を紡いだ。
「『荒れ狂う剣の猛者よ 我が身に宿りて その力を発揮せん』(神剣の魂)!」
勇馬の身体が白銀のオーラに包まれる。その姿はまるで神そのもののように神々しかった。勇馬は剣をそっと振り下ろした。その時にはもう、ゴーレムは二つに両断されていた。
「はぁはぁ……。思い知ったか!! これが俺の秘策、(神剣の魂)だ!!」
消失魔法(神剣の魂)一定時間、かつて存在したと言われる剣神の力を身に宿せるという魔法だ。勇馬が修業を重ねることで得た新たな消失魔法だ。
しかし、さすがは消失魔法といったところか。いや、剣神の方がすごいのか? たった一振りでこの威力。どちらにせよ、まぎれもないチート魔法だ。
「これはバグってるな……」
この現状を自分がやったという事実に思わず自嘲してしまう勇馬。そっと剣を鞘に納め、いまだに魔力を多大に消費している(神剣の魂)を解除しようとすると、
ガコッ!
「んっ?」
ガコン! 背後から物音がする。自然と勇馬はゴーレムに視線を向ける。
「おいおい、マジかよ……」
ゴーレムは確かに両断された。
しかし、今こうして再び接合しようとしているではないか。
脅威的な再生力とはまさにこのことだろう……
「もう、魔力は残ってないぞ……」
慣れない物の『創造』、消失魔法の使用、再生魔法の行使、
勇馬に残された魔力は微々たるものだ。
「くそ、まだ(神剣の魂)の効果が残っているのが唯一の
救いか……」
残り三十秒と言ったところだろう。それまでに決着を
つけなければ勇馬に勝ち目はないに等しい。
「はーあ、お前も中々のチートだな……さて、
最後の勝負といこうぜ!!」
ガチ!! ガチャン!!
「ゴ、ゴ、ゴガアアアア!!!」
とうとう完璧に修復されてしまった。
僅かな時間で勇馬が出来ること……それは、残りの魔力を使って
ゴーレムを再生すらできぬよう粉々に打ち砕くことだ。
「ガァァァァ!!」
ゴーレムの前に岩石が集まり圧縮されていく。魔法陣を多重に展開し、一本の槍が形成された。
土属性超級魔法、(ロックブラスト)。その槍は立ちはだかる敵を全て貫く魔の槍。おそらく、ゴーレムも余力を全て費やし勝負を決めにきたのだろう。
「……上等だ!!行くぞ!」
「ゴガァァァァ!!」
槍が解き放たれる。その速度はまさに閃光。
勇馬は剣を振りかぶった。
「これで最後だ!!」
まだ、俺には使えない……けど、今なら!!
「(千本桜)」
『剣術』の最終派生スキル『剣神』を持つことが条件の剣技。
ロングソードの刀身が千枚の鋭利な花弁となり敵を切り裂く。
本来なら使えないはずの剣技だが、(神剣の魂)との合わせ技で強引に発動させることを可能にした。
「ゴ……ゴガァァァ……」
ゴーレムが塵と化す。流石のゴーレムも極めて威力の高いこの剣技を喰らって蘇るなんてことはないだろう。
「……やっと……終わった……か」
勇馬に魔力はもう残っていない。それどころか、身の丈に合わない剣技を使ったせいか身体中が痛みに蝕まれていた。
次第に勇馬の身体から銀色のオーラが失われていく。(神剣の魂)の時間がきたのだろう。
ロングソードもこの魔法に耐えられなかったのか、目の前で塵となったゴーレムと同じ様に霧散していく。
「……もっといいやつ、作らねぇとな……」
完全にオーラが消えたと同時に勇馬はその場に膝から崩れ落ちた。
こうしてこの戦いは幕を閉じ、洞窟内に静寂が戻った。
ダンジョン編は結構書くつもりです。