チート開始
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力を与える? どういうことだ……?
いかにも胡散臭そうな話に勇馬の警戒心が一段と強まった。
「何度もいうが俺はおまえを助けるつもりはない。いったいなにが目的だ……」
勇馬はアルシラを睨みつける。
「目的はさっき言ったとおりですよ、世界を救って欲しいと。まぁ、断られちゃったんですけどね……『一度きりの幸運』というスキルは本来存在しないんですよ。このスキルは、封印された後の私が作り出したオリジナルスキルです」
最初に、見た時から薄々気になっていた勇馬は首を縦に振る。
「このスキルが発動した時だけ、私は幽体としてスキル所有者の前に出てくることができるのです。これを使って助けを求めようと試みたんですが……残念ながら、助かる希望は無さそうですが……」
アルシラは少し、がっかりしたような素振りを見せると、勇馬にゆっくりと近寄った。
「それでも、このスキルを与えられた者には必ず私の力を全て与えなければなりません。そのように作ってしまったので。なにせ、このスキルを受け継ぐ者は何者にも染まっていない職業がない……つまり無職の者に限られるのです。バレンティーナの影響を受けてない、彼女の『職業』という恩恵であり縛りを受けていない無職の者だけが……世界を……」
勇馬の顔が強張る。自分だけが成れる者……それは、世界を救う担い手となること。いきなりのスケールの大きすぎる話に勇馬の心臓は煩いぐらいの鼓動を奏でる。
「貴方の力はあまりにも非力です。それでは、すぐに死んでしまうでしょう。だから力を与えます。女神の力を」
そう言って、アルシラは勇馬の頭に手をかざしたり
「この者に祝福あれ」
そう、発した後、徐々にアルシラの体が消えていった。
「貴方は良い人生を送ってくださいね」
「ま、待て!」
そして、立ちこめていた光と共にアルシラは完全に姿を消した。
「……悪いやつではなかったな……」
勇馬は少々、罪悪感を覚えた。そして、少し休もうと、その場に座ろうとすると、勇馬のステータスプレートが足元に落ちていた。
「そういえば、俺は強くなったの……か!?」
勇馬は驚愕のあまり思わずステータスプレートを落としてしまった。そのステータスプレートには、
(時雨勇馬)レベル1
天職…………無職
筋力…………10000
敏捷…………8000
耐久…………5000
魔力…………15000
スキル
『アルシラの秘技』
再生魔法が使える。(魔力の5割を使用)
『神代の遺物』
消失魔法ロストマジック初級が使える。
『千里眼』
自分の見たいものが全て見れる。
『経験』
相手との戦闘後、相手のスキルを入手できるかもしれない。
『熟成』
レベルやステータスが大幅に上がりやすくなる。
『創造』
魔力を使って自分の思い描いた物を作成できる。
『思考加速』
脳の処理速度があがる。
「ここにきてチートきたーーーー!! えっ!? なにこれ!? ヤバイんですけど!? パネェんですけど!? 俺のターンきたわ!! マジであざす! あざしたぁ!!」
テンションが上がりすぎて言葉の語尾がおかしくなっている。あの殺気をバチバチ放っていた勇馬さんはどこに行ったんだ? ここにいるのは何時もの勇馬さんではないか。
「だってステータス、オール10だったんだもん!! スキルも一つしか無かったんだもん!! THE 一般人代表みたいなステータスだったんだもん!!」
勇馬は孤独な洞窟の中、何かに言い訳していた。しかし、ここであることに気づく。
「ん、『一度きりの幸運』が無くなっている……」
そして同時に察した。
「文字通り一度きりか……そういえば、このスキルが無かったら俺は死んでたな……なんだかんだ、アルシラは俺の命の恩人なのか……」
アルシラに対しての自分の態度を思い返すと、少し冷たすぎたと感じる勇馬はある決心をする。
「アルシラに礼を言わないといけないな」
勇馬の目標に新たなものが加わった。そして、念願の……
「さて、それじゃあいっちょ魔物でも倒してみるか!」
ステータスが上がったので初めての魔物退治もできると思い、勇馬は気分を高揚させながらこの場を離れた。
数分後。
「うはぁ、すげぇ! めっちゃはぇぇぇ!!」
勇馬はダンジョンを疾走していた。ステータスがチートレベルになったことで勇馬の身体能力は人外的のものになっていた。しかし、やり過ぎには注意だ。
「あ、ちょ、止まらな、あ、あああああぁぁー!」
余りの勢いにブレーキが効かず止まれない勇馬。そして、大地を揺るがすほどの衝撃壁からプレゼントしてもらった。
「こ、これは少し難しいな……」
痛みが少し残る中、ちょっとはしゃぎすぎたと自重する勇馬であった。
まぁ、この程度の痛みですんだのは人間をやめていたおかげだろう。不幸中の幸いだ。
それから、しばらく走っているとダンジョンの奥から「バチバチ!!」
と静電気のような音がした。
「この音はまさか……」
勇馬は聞き覚えのある音だと思い、音源へと疾走した。
そして、やはりそこには
「グルルルルゥ!」
狼の魔物ことフェンリルがいた。ついさっき、勇馬に死という恐怖を実感させた因縁深い敵だ。
「今なら倒せるか?……」
ステータスが大幅に上昇したこともあり、勇馬は逃げずに戦うことを選んだ。だが勇馬は知らない。このフェンリルが格上の相手ということを。
「よっしゃぁ!こいや!!」
「グルルルルゥ、ガァウ!!」
勇馬を見つけた途端、獲物と判断したのか、フェンリルが音を置き去りにして飛び掛かってきた。
「なっ……!」
初めてあった時とは比べものにならないほど、フェンリルの動きが見えた。これは多分、『思考加速』のおかげだろう。勇馬は体を右に捻って回避したのち、無防備となったフェンリルの腹に一発拳を入れた。
「ギャン!?」
フェンリルは悲鳴じみた声を上げながら吹き飛ばされ、壁に激突した。
ただ、殴っただけでこの威力。
「大丈夫だ!!俺はこいつと戦えるぞ!!」
今の一撃でかなり自信がついた。でも、それはぬか喜びだった。フェンリルには大してダメージが入っておらず直ぐに態勢を立て直すやいなや、大きく口を開けた。
「なんだ?」
「アオオォン!!」
フェンリルの口に蒼白い刀が形成される。
「あれは、さすがにヤバイでしょ……」
これは、(ライトニングブレード)という魔法である。雷属性の魔法で剣を扱うものによく好まれる魔法だ。
魔法は初級、中級、上級、超級、神級、と別れておりこの魔法は上級に位置している。基本的に魔法は上級までしか扱えないとされており、超級や神級魔法を扱えるのは世界中でほんの一握りだ。
なので、上級魔法は、一般的に使われている中で最高位の魔法とされている。その魔法をフェンリルは使えるため、いかに高レベルの魔物なのか予想がつくだろう。
フェンリルは形成した刀を口にくわえて巧みに斬りかかってきた。
「クソ! 魔物が刀を使うのかよ!」
勇馬はなんとか、迫り来る斬撃をかわせているが所々浅く斬られていく。
「くっ! はぁはぁ……このままじゃジリ貧だ。どうすれば……」
血を流しすぎて頭が回らなくなってきた勇馬。しかしここで、勇馬はあることを閃いた。
「そういえば、俺も魔法が使えたはずだ……たしか消失魔法っていうのがあったな……」
勇馬はフェンリルの攻撃の致命傷となる部分だけ正確にかわしていき、魔法の説明を読んだ。そのなかで一つ使えそうな魔法があった。
「頼む。成功してくれよ」
勇馬は一旦、フェンリルと距離を置き詠唱を始めた。
『我はかの者を滅する 理を名の下に切り裂き その身に刻め』
そして、勇馬は告げる。その魔法の名を……
「(断絶)」
魔法を唱えると急に体が重くなった。おそらく魔力を大幅に消費したからだろう。勇馬は思わずその場に倒れこんだ。
「成功……したのか?」
顔を上げるとそこには、まるで、フェンリルがいた空間だけずれたようになっていた。当然、その場にいたフェンリルが無事なはずがない。フェンリルの体が二つに切断されており、もう、ピクリとも動いていない。
「はは、この魔法はまさにチートだな。でも、魔力の消費がヤバイからむやみには使えないな」
(断絶)。消失魔法の一つであり、自分が指定した場所をその空間ごと
切り裂くという恐ろしい魔法だ。どうやら消失魔法はどれも魔力の消費がはんぱないらしい。威力も絶大なためほとんどの相手にはオーバーキルになってしまう。使いどころを考えなければならなそうだ。
「正直、消失魔法が無かったらやばかったな……今度からもう少し行動を自重しよう」
初戦から痛い目にあったので勇馬は少し反省した。すると、ポケットに入れておいたステータスカードが輝き出した。
「ん、なんだ!?」
突然の発光に驚き、慌ててステータスカードを取り出す。
そこには……
(時雨勇馬)レベル300
天職…………無職
筋力…………200000
敏捷…………150000
耐久…………130000
魔力…………250000
スキル
『アルシラの秘技』
再生魔法が使える。(魔力の1割を使用)
『神代の遺物』
消失魔法初球が使える。
『千里眼』
自分の見たい物が全て見れる。
『経験』
相手との戦闘後、相手のスキルを入手できるかもしれない。
『熟成』
レベルやステータスが大幅に上がりやすくなる。
『創造』
魔力を使って、自分の思い描いた物を作成できる。
『思考加速』
脳の処理速度があがる。
『感知』
生命反応を感じとり、生物の居場所を特定できる。
「ゑ?」
勇馬はレベルとステータスが一気に上がり、フェンリルが持っていたと思われる『感知』も入手。していた。
「え、なに、そんなにフェンリルって強かったの?」
ここで補足しておくと、フェンリルは一体で小さな国なら滅ぼせる程の凶悪な魔物だ。
魔物にもランクがあり、D、C、B、A、S、SSランクそして、インフィニティまで存在する。SとSSランクは天災級の魔物でほとんど存在しない。ましてや、インフィニティなどはこの世に存在しているのかさえ分からない魔物だ。
ちなみにフェンリルはなんとSランクである。それを倒してしまったのだから、勇馬のレベルが一気に上がってもおかしくはないだろう……ついさっきまで最弱の存在であった本人はというと……
「はは………最弱から一変、最強を目指すのも悪くないかな……」
勇馬はチートじみた自分のステータスを見ながらしみじみとした声で呟いた。
これからもよろしくお願いします。