第一話 《現在まで》
「「「ボス!誕生日おめでとうございます!!!」」」
「おめでとう!!」「おめでとっす!」
目の前に広がる大広間には多種多様な種族が大勢集まっていた。その数は数百近い。
その様々な目線と声は一様に私の方に向けられている。
その後は暫くがやがやと続いた後。
そして私を前に行列が出来ていた。
「ボ、ボス!お誕生日おめでとうございます!これ、私からの誕生日プレゼントです!」
「ありがとう。大切にしよう」
「は、はい!」
そう、誕生日プレゼント渡しの行列だ。
「これはおいらの手編みのマフラーっす。受け取って下さいっす!」
「……あ、ああ。大事に扱おう」
そう言って皆から順々に貰った物を受け取って行く。最後の方になる頃には大量のプレゼントが後方に積まれた。非常に満足のいくものだった。
もうそろそろいいか……。
「みんな、聞いてくれ!」
私がそういうと、場がしんと静まり返る。
「今回、私のためにこの様な催しを開いてもらっこと大変嬉しく思う。そして皆に感謝を送ると共に礼を言おう」
中からは「」
私は分かっているよいう風に手を軽くあげて続ける。
「今回は私の為にだけではなく、今までのギルド全体の皆の活躍に評して、今日は皆が皆、存分に楽しんでいってくれると嬉しい」
男衆からは「うぉぉお!!」と雄叫びが聞こえ、女衆もまた、「きゃー、ボスぅう!」といった黄色い声援らしき物を貰う。
「皆、グラスを持ってくれ」
そう言うと、皆が一様にテーブルに乗ったグラスを手に取る。
「これからも我らがギルドに更なる繁栄と栄光あらん事を!乾杯!」
「「「乾杯!!!」」」
私は今日で三十五になる。
人生の節目とも折り返しとも呼べるような歳を迎えたのだ。今までが長い様で短い様な、そんな時間過ごして来た。
そう、思い返せば今までに色々なことがあった……。
〜
辺境の村出身だった私には冒険者の父がいた。父は強かった。冒険者ランクはA。
Aランクと言うのはS〜Fの中の上位から二番目だが、そのランクに値する者は超人とまで言わしめるほどの強者なのだ。
因みにSランクは人外の強さだと言われている。
そんな強い父に当時の幼い私は憧れていた。
毎日のように「大人になったらお父さんみたいに立派な冒険者になる!」と言っていた。
今、思い出しても頰が緩む。
それから月日が経ち成人の十五になった時だ。
私が冒険者を目指して家を出ようと決意したのは。
母には反対され止められた。
しかし、私はそれを押しのけ家を出た。
因みにだが、なぜ母に反対されたのか、それは私が家を出る少し前に魔物に父が殺されたと報告があったのだ。
私はその報告を聞いた時、誓った 。
父を殺した忌まわしき魔物を倒せるくらい強くなって見せると。
いや、それさえも軽くあしらえるくらいには実力をつけて見せると。
それから冒険者ギルドに登録をした。
最初は当然Fだ。
色々な冒険をした。
見たことのない魔物、それを蹴散らし
私には全てが新鮮だったのだ。
そして日々の鍛錬は欠かさない。
その日々を過ごしてから五年が経った。ちょうど二十の時だ。
私はCランクだったのだ。
同じ時には父は既にBランクであり、Aランクになろうとしていた時期なのだ。
私は選択を間違えたのかもしれない、父がAランクという才能を持っていたから当然、私にもあるものなのだと侮っていたのかもしれない。
それからはランクは変わらなかった。
私は諦めた、冒険者という道を。そう思っていた。
だが、諦めきれなかった。
いや、そもそも諦めることは出来なかったのかもしれない。
せめて……せめて、父を殺した魔物だけはどんな手を使ってでも倒して見せると。
だが、到底私の実略では及ばない魔物である事には間違い無いのだ。
だから、託す事にした。私の代わりに倒してくれる者を
それから行動に移す事になる。
まず、冒険者時代に溜めていたなけなしの金で酒場を開いた。
仲間を集める為には先ずは親睦を深めなくては、
うちの酒場には多くの冒険者が
そんなただの小さな集まりから多くの人達に出会い、ギルドは大きく成長していった。
今のギルドメンバーは本部を含む各四支部全体で四百人強。
〜
もし今この私の心情を聞いている者がいるのなら聞いて欲しい。
数多くの悩み事を抱えているが、その中でも逸脱しているものがある。
──部下が強すぎて困っているんですが。