ゴルドにて
話を完成させることができるのか不安でしかたないのですが、走り出さなければゴールはないと思い、
公開することにしました。
かなりゆっくりなペースで書いています。
田園風景の田舎道を一台の馬車が、コッペ村へと進んでいた。中にはルシスと使用人のヒフミが黙ったまま外の景色を眺めていた。ルシスは萌黄色のコートを着ていた。ヨモギで染めた萌黄色には邪気を払う力があるからだ。ゴルド国は黒魔術師が多いため、魔除けになる物を身につける必要があるのだった。
やがて村に入り、馬車は小さな家の前に止まった。ヒフミは荷物がたくさん入ったようなカバンを抱え、馬車を降りた。
「お世話になりました。わざわざ送ってくださり感謝します」
「10年も働いてくれたんだ、送るのは当然だ。ヒフミがいなくなると、黒魔術のことや、愚痴をこぼす相手がいなくなる。リトレアールでは黒は禁止だ。知っているもんあんていない。知っていても口を開かない。この国に生まれなかったことを恨むよ。じゃ、元気でな」
ルシスは手を差し出し、握手をした。
「いつでもお立ち寄りください。面白い情報があれば、ロイドさんに手紙で知らせます」
「そうしてくれ。お前から手紙がくると、カルティナがうるさいからな。楽しみに待ってるよ」
そう言うとルシスは馬車に乗り込んだ。ヒフミはお辞儀をして馬車を見送った。
リトレア国の屋敷に向かって馬車を走らせ始めてまもなくのこと、コッペ村のはずれで声がした。
「うわぁ~~~}
ズサッ。 ルシスが声のした方に目をやると男の子が木の下にいた。男の子は足をさすりながら、木を見上げていた。
ルシスは馭者に馬車を止めさせ、木の下で座り込む男の子に駆け寄った。
「大丈夫か?歩けそうか?」
「痛くてたまんないよ」
足をさすりながら男の子が答えた。
「家は近いのか?」
「うん、あそこだよ。赤い屋根が見えるだろ」
男の子が指差す方向にその家が見えた。
「馬車は通れる?」
男の子は馬車を見てから首を横にふった。
「大きすぎだ。通れるのは荷車くらいのやつまでかな」
ルシスは馬車に行き、馭者と話してからニバルのところに戻ってきた。ニバルを抱きかかえ、木々の間を歩き始めた。
「木の上でなにをしてたんだ?」
「鳥の卵を取ろうとしてたら、すべって落ちたんだ」
ルシスは周りの木を見上げた。
「鳥がたくさんいそうだな。卵、食べるのか?」
「卵と使う軟膏を作るんだよ」
ニバルが立ち並ぶ木の右手の方を指差し、
「こっちを抜けたほうが早いよ」
と道案内をした。
「何に効く軟膏なんだ?」
ニバルが少しニヤリとして答えた。
「表向きは美白だけど、実は惚れ薬の効果のあるやつ。町に持っていけばよく売れるよ」
「いつも作っているのか。家は薬屋なのか」
「シャーマンだから薬も作ってるんだ」
リトレアールに向かう馬車の中で、ルシスの膝の上には、貝殻に入った軟膏と古びた書物があった。
楽しめる作品になることを望んでいます。