第31話「自転車」
眠れた……眠れた? まったく実感が湧かないんだけど。安眠とまではいかなくて。満足感がない。
ユキもリンさんもロリババアも朝から元気だ。なんて若さなんだろう。ボクも若いはずなんだけどねえ。
「ふわああ~」
「お姉ちゃんは寝不足なんだね」
「ワタシはぐっすり眠れたというのに。だらしないのです」
「ミア様は興奮してらしたのです。夜は人を変えてしまいます」
いやいや。ボクの寝不足の原因はアンタなんだけど!?
まあいいや。とりあえず、この家を破壊しないと。このまま置いとくわけにはいかない。
「これからどうするの? 街を目指すのはいいけど、歩くのは嫌だわ」
「アンタは本当にロリババアだな。歩くのは健康の基本だろう」
「疲れるのは性に合わないの。ミアちゃん、いろいろと作れるのなら、画期的な乗り物の1つでも作ってほしいわ」
画期的な乗り物だと? レイダスの乗り物といえば馬車だ。馬の体調によって速度も距離も変わる。馬には食事と休息を与えないといけないしな。
この異世界には自動車がない。自転車もない。ボクやユキからすれば画期的でも何でもないけど、どうだろう。試しに自転車を作ってみるか。
万物創造――。
「ミア様、これは何でしょう? 見たことのないものですが」
「自転車だ。こうやって乗って――こうして漕ぐ。歩くよりも速く移動できるんだ」
「へえー。やればできるじゃない」
「でもお姉ちゃん。自転車は練習しないと」
「そこなんだよねえ。ボクとユキは慣れているけど、2人は初めて乗るわけだしな」
コツさえ掴んじゃえば簡単なんだけど、そこまでが大変なんだ。ボクとユキも慣れるまでに何日もかかった――ん!?
「ほう! 確かにこれは楽チンだわ! 見直したわ、ミアちゃん」
「ミア様の発想には驚かされてばかりです。こんなに便利な物をありがとうございます!」
う、嘘だろう……!? ボクの手本を1回見ただけで乗りこなすだなんて。リンさんもロリババアも運動神経抜群じゃん。
「練習に時間を費やさなくて済んでよかったね」
「お、おう」
なんか負けた気がする。競っていたわけじゃないのに。
「ミアちゃん、早く!」
「そんなに急かすなって」
まったく、せっかちなやつだな。
……あれ? 自転車ってこんな感覚だったっけ? すごーく違和感が。久しぶりに乗るからなのかも。
「お姉ちゃん、どうしたの?」
「な、何でもない! 何でもない! さ、さあ、行こう」
ヤバい。ボクが一番乗れてない。早く感覚を取り戻さないと置いていかれちゃう!




