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第2話「親子」

 きょうもてんきがいい。さいこうのひるねびより。


「ミア、またゴロゴロと。いいですか? 女の子が無防備に芝生でゴロゴロするものではありません。パンツが見えてしまいます」


「ボク、きにしないもん」


「ボク、ですか。貴女は女の子なんですから、自分のことは私と呼びなさい」


「やだ。ボクはボクだもん」


 おんなのこがゴロゴロしちゃいけないなんてありえない。ボクがボクをどうよぼうがボクのかってだもん。


「はあ。まあそのうち改めることになるでしょう。成長とはそういうものです。さて、そろそろ行きましょう」


「どこに?」


「しらばっくれないでください。今日はドレスの試着をするのを忘れたのですか」


「ボク、ドレスいやだ」


「いやじゃありません。きっとお似合いになります」


「ズボンがいい」


「女の子はオシャレをするべきです。私なんか~と決めつけず、自信を持つべきなのです」


「ボクはボクのオシャレをする」


「個性は尊重するべきだと思います。ですが、貴女の個性はいただけません」


「どうしてさ」


「7歳にもなってパンツ一丁で駆け回れては困るからです」


「なんでいけないの? みんなやってるよ」


「貴女が言うみんなとは男の子でしょう。男の子はパンツ一丁でも構いません。ですが貴女は女の子。そうはいきません」


 なんでさなんでさ。かあさんのきめつけだ。


「ユキはたのしそうにしている。ボクには考えられない」


「妹の方がオシャレさんなんですね。そういえばミア。ユキはどうしましたか?」


「さっきまでいっしょにいたのに……あれ?」


 ボクといっしょにゴロゴロしてたはずなんだけど。


「おかあさーん!!」


「ユキの声です! あっちの方から聞こえてきました」


 かあさんがボクのてをつかんではしる。

 かあさんのまほうはあったかくてすきだ。ずっとずっとはやくはしれるまほう。ボクのおきにいり。


「来るんじゃねえ!」


 ユキをみつけたのはよかったけど、しらないひとがいっしょにいた。ユキをかかえている。きっとわるいひとだ。

 かあさんのかおがこわい。ボクとユキをしかるときよりもこわい。


「その子を離しなさい! 今なら見逃してあげます」


「将来有望なのを見つけたんだ。そう簡単に手放すかよ」


「離しなさい! 私の大事な娘を!」


「娘? っていうことはアンタは母親か。とてもそうは見えないな。そうだ、アンタも一緒に来ればいい。それなら解決する」


「ふざけないでくださる。私には愛する夫がいるのです。今日は愛娘たちにドレスをプレゼントできると楽しみにしているのです。そんな私のハッピーな気持ちを台無しにするようなことをしないでくださる」


「知らねえよ。一緒に来ねえなら去るだけよ。じゃな!」


 きえちゃった。しらないひとがユキといっしょにきえちゃった。どうしよう!?


「バカな人。ミア、ああいう人がいるからパンツ一丁ではいけませんと言っているのです。分かりましたか?」


「わかった! わかったからユキを! ユキをたすけないと!?」


「大丈夫です。この国で悪さをすればどうなるか、あのバカは身をもって知るべきなのです」


※ ※ ※


「へっへー! ここまで来れば――」


「――森に隠れて逃げたつもりか? バカの考えることだな」


「おとうさん!」


 しろいよろいをきたおとうさん。おとうさんは、このくにのヒーローだっていってる。おかあさんもいってる。


「俺の娘にベタベタ触ってんじゃねえ! 妻譲りのかわいい顔が汚れるだろうが!」


 おとうさんがシュパッとけんをぬいた。きれいなけんだよー。おとうさん、かっこいいよ。


「騎士か!? なんてタイミングの悪い」


「離せ。この国――レイダスに害をもたらすものは血を見るぞ」


「俺は国に害なんて!?」


「黙れ。レイダスの近衛騎士である俺の娘に恐怖を与えたことは、レイダスに害をもたらすのと同義だ」


「近衛騎士とてただの騎士。俺の魔法で」


「させない!」


「イテッ!?」


 しらないひとのてをかむなんていやだけど、おとうさんをたすけるため! わたし、がんばった。


「流石はお父さんの子だ! 偉いぞ!」


 おとうさんはつよい。つよくてかっこいい。

 しらないひとは、わたしをおいてにげてちゃったよ。


「にげられちゃったよ」


「大丈夫。お父さんの仲間に知らせてある。お父さんが優先したのは、ユキの命なんだ」


「ありがとう、おとうさん! だいすき!」


「そうかそうか! お父さんは幸せ者だ!」


 なんでもいい。おとうさんがよろこんでくれるなら。

 きょうはドレスをきる。たのしみだよ。

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