第14話「試した結果」
ユキは大丈夫かなあ? 心配だ。
「ミア様は本当に美味しそうに食べますね。見ているだけで美味しさが伝わってきます」
「しょうくゎ?」
やりすぎてなきゃいいけど。たまに魔法の加減を間違えるところがあるからな。
「はい。私たちも作りがいがあって嬉しいのです」
「ふぉればふぉふぁっぱ」
ボクが何を言っているのか分かっちゃうあたり、やっぱり凄いや。それにしても、本当に美味しいな。骨付き肉。
リンさんは上品にナイフとフォークを使って切っている。食べ方から違う。ボクは、こういう肉はかぶりつく派だ。
「今は休暇中の身。今のうちに訊いておいてもいいのかもしれません」
訊きたいこと?
「ミア様。貴女とユキ様の魔法ならば、亡くなったご両親をどうにかできるのではありませんか?」
「ごふっ……はい!?」
いきなり何を言い出したかと思えば。喉に詰まるところだったぜ。
「ミア様の魔法は、万物を創造できるのでしょう? それならば人間を創造することも可能なはずでは?」
「……残念。それなら試した」
「既に試されていたのですね。それで結果は?」
「訳の分からない存在が現れた。ボクもユキも分からない。不敵な笑みを浮かべたかと思ったら、あっという間に消滅。一瞬というか刹那というか」
「決して不可能というわけでは――」
「――不可能なんだろうな、多分。人間を――命を創造するってのは禁忌なのかもな」
「どうしてその結論に至ったのでしょうか」
「ボクの右腕が吹き飛んだんだ。痛かったってもんじゃなかったな」
「吹き飛んだ!?」
「ユキの治癒魔法で済ましたけど。ありゃあ2度と御免だ」
「それでは、ユキ様の魔法は試されたのでしょうか?」
「試した試した。時間を操れるみたいだから、亡骸の時間を巻き戻せないかってな」
「……結果は……?」
「両親の肉体が動いた、だ。以上も以下もない。魂なんて宿ってなかったさ。死んだ瞬間、この世の時間とか理から外れたんだろうねえ」
「そ……そんな……私は……ごめんなさい!」
「いいって。ボクは質問に答えただけ。結果を話しただけ。ボクとユキの魔法は特別だなんだ言われているけど、全然そうは思わない。ちょっと他人よりも得したってだけのこと」
物事には必ず限界があるってことだな。チートな魔法であれ何であれ。そう上手くはいかないもんだ。
「いいえ。ミア様とユキ様は凄い方々です。この5年間、お側で見てきた私が断言いたします」
「リンさんにそう言ってもらえるとはねえ。なんだか自信が湧いてきた」
そして食欲も湧いてきた。これならあと2個はいける。
「お姉ちゃーん! リンさーん!」
ユキが戻ってきた。ちゃんと生かして連れてきたな。偉い偉い。
「おかえり」
「疲れたよお姉ちゃ~ん」
疲れたのは分かるが、どうしてボクに抱きつくんだ。みんなが見ているってのに。しょうがない妹だ。




